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じんけん通信

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5月号の内容

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平成27年(2015年)5月(第85号)

毎年5月5日~11日は児童福祉週間です。「児童福祉週間」は子どもや家庭、子どもの健やかな成長について国民全体で考えることを目的に厚生労働省が定めています。
先日、未成年の孫が出産した新生児を祖母が殺害するという痛ましい事件がありました。これまでも虐待は大きな社会問題となり様々な取り組みが行われてきましたが、全国の虐待相談件数は年々増加しており亡くなってしまう事例も発生するなどなお深刻な状況です。県内においても平成25年度の虐待相談件数は過去最多の5,109件でした。
そうした中で、厚生労働省の委員会がまとめた報告書(H25年7月発表)によると、H23年度中に発生した「心中以外の虐待死」事例のうち、0歳児が43.1%を占め、中でも0日での死亡事例が多いことがわかりました。また、報告書では背景に「計画にない(思いがけない)妊娠」「若年妊娠」などの課題があるとまとめています。
そこで今回は望まない妊娠をされた女性、生まれてくる子の健やかな成長を支援する産婦人科の連絡協議会「一般社団法人あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」(以下「あんさん協」といいます。)に加盟され、妊婦さんに対する相談やサポートなどの事業をされている「神野レディスクリニック」を訪問し、院長の神野さんと看護師の宮川さん、事務局の吉田さんにお話を伺いしました。

特集 子どもと人権

神野先生

Q 「あんさん協」に入られたきっかけをお聞かせください。

A 当院では人権的な観点も含めて、医療を通して何か社会貢献ができないかということで、ポルトガル語の通訳を置いたり、宗教的に輸血ができない患者さんを受け入れたりといったことを以前から行ってきました。
そして乳幼児の虐待についても県内で大きな事件となるなど心を痛めていました。そうした時に、開業医の集まる意見交換の場で、埼玉県にある「さめじまボンディングクリニック」の鮫島先生が虐待防止に向けた産婦人科医の取組の必要性、全国的なネットワークづくりについて話をされ、「私たちがしなければ」という思いを持ったことから当院も参加を決めました。
統計的にみても分娩施設に行かないまま出産してしまうケースというのは非常にリスクが高いので、それを水際で食い止める意味でも周産期からの医療機関、特に産婦人科医の担う役割は重要であると考えました。
Q 「あんさん協」の取組は全国的にも注目されましたが、どういったところが特徴ですか。
A 望まない妊娠をして誰にも相談できないまま一人で悩んで出産し、結果的に虐待につながってしまうことを防ぐことを第一の目的としています。育てられない環境があったときに悲しい選択をすることなく、安心して赤ちゃんが産めるようサポートしたいと考えています。みんなで育てていくための色んな道があることを提供したいのです。
また、産む実母についても、命の尊さを理解し、前向きに愛情を持って産む方向へ持っていくことによって、同じことの繰り返しを防ぎ、その後の将来を守っていくことにもつながります。そのためにも早くからの医療関係者のサポートが大切と考えています。
私たちの取組は、特別養子縁組ありきということではなく、養親(子どもを育てたい親)のための取組でもありません。あくまでも生まれてくる子どもの命と実母の将来を守ることを目的として掲げているところが大きな特徴です。
現在、全国22の医療機関が加盟しており、そのうち当院や本部を含む4つの医院で特別養子縁組を行っています。
Q 特別養子縁組の意義はどういったところにあるのでしょうか。
A 様々な不安を感じておられて「育てられない」とおっしゃる方をそのまま家に帰したとしても、やはりそこには高いリスクがあり、虐待事案が発生してしまう可能性があります。
そうなると、結果的に児童養護施設への入所となり、里親など家庭的養護に移行できるまでに相当な時間を要してしまうのが現状です。
しかし、愛着形成をする上で新生児にとっての一日一日はとても大切です。重要です。少しでも早く普通の温かい家庭で育ってほしいとの思いから新生児のうちから家庭に託すことを推進することも目的の一つとしています。
Q 具体的な取組の内容を教えてください。
A 当院の電話相談に直接かけてこられるケースもあれば「あんさん協」本部からの紹介で相談に来られる方もいます。そうして相談に来られた方の外来を受け、人によって時期は違いますが妊娠36週を超えたあたりから当院の用意した部屋に保護します。そこから妊娠教育をしながら毎日職員が関わり精神的なケアをしていきます。
出産をした後もすぐに引きはなしたり同意書を取ったりしません。抱っこも授乳も沐浴も希望があればしてもらいます。たくさん関わってもらって、本当に育てられないのか、育てる道はないのかを考えてもらい、どうしてもという場合に養親さんに託すことにしています。気持ちが定まらなければ一旦帰宅して考えてもらうことも可能です。
また、自分で養育することを決められた場合はもちろん本人の意思を尊重しますが、その場合でも何もしないまま帰すわけではありません。一旦本人だけで帰ってもらい、赤ちゃんを迎えるための準備をしてもらいます。そして地域の保健所等に早期に関わってもらえる手はずを整えて、どの程度準備ができているか、赤ちゃんを受け入れて大丈夫かの確認をしてもらった上で一緒に帰宅することになります。何かあった時には早めにヘルプが出せるように児童相談所との連携も密にしておく必要があります。
Q そういった出産後の養育にリスクがあり、特に支援が必要とされる妊婦を「特定妊婦」と定義されていますが、具体的にどういったケースが多いのでしょうか。
A やはり望まない妊娠で、最初の頃中絶を考えていた、悩んでいた方が多いです。悩んでいた理由としては、正式な婚姻が結べないままでパートナーがいないことや家族に経済的問題や障害がありサポートが望めないこと、本人自身が未成年であることなどが挙げられます。
また、鬱やパニック障害などの精神疾患で比較的リスクが高い可能性の方も年々増加していると感じています。昨年度に関していえば、DVなど暴力的な事案が多く、あざを作って検診に来る、「喧嘩をしてお腹を蹴られた」「背中を押されて階段から落ちた」といって受診されるといった事例がありました。
そうした色々な事情を踏まえ、「育てられない」との本人の言葉には、相応のリスクが感じられます。どのような場合でも女性だけに責任があるわけではないので、誰にも話せないまま出産に至り、結果的に傷付く女性をなくしたいという思いからスタートしています。
Q 関わりの中で感じられることはありますか。
A 保護して毎日顔を合わせるようになると、今までどんな生活をしていたかなど深く関わりあえるようになります。そうして色々な話をしたり散歩をしたりする中で、泣いたり笑ったりして徐々に打ち解けていきます。そうすると、今までの経験から不信を持っている方が多い中で「人を信じるのも案外いいかもしれない」という風に変わっていってくれます。そういう関わりこそが彼女たちの将来にいい影響を与えているのではないかと感じています。
赤ちゃんのことも「元気な子を産もう」と前向きになってくれることによって、食事に気を付けたり運動もして規則正しい生活をしてくれたりするようになり、精神的にも落ち着いていきます。産むときもそれまでに十分な信頼関係があるので安心です。
そして芽生えた命を責任を持って産んだことに誇りを持って、その後の新たな人生を自信をもって歩んで行けるようになっていきます。そこが自宅での無理な出産や病院の飛込み出産とは大きな違いだと思います。
Q 養親さんにはどういったことが求められるのでしょうか。
A まず「あんさん協」の条件自体が養育里親の資格を取っていただくことを前提としていますので、養育環境等についてはそこでクリアされています。
その上で面接をさせていただくわけですが、そこで最も重要視しているのが、福祉の気持ちをどれだけ持っていただいているかということです。子どもがほしい、子どものいる生活で自分たちが幸せになりたいという養親の都合や思いではなくて、子どものために温かな家庭を提供してあげたい、この子が将来自分の家庭を持つことも考えて、自分たちの時間やお金を提供して一人の人間を育てたいというレベルまで高めることができるかが重要と考えています。ですから「男がいい」「女がいい」とか、「跡継ぎになってほしい」といった考えを持っている段階では「あんさん協」の養親さんにはなれません。発育段階で障害のあることがわかったとしても子どもをありのまま受入れ、愛情と責任を持って育てていただける方にお願いしています。それから養親の妻と夫の間に温度差がないこともチェックしています。これらはあくまでも「子どものために」という基本的な方針によるものです。
今まで11件の面接をさせていただきました。結果は院内の第三者委員会に審議していただき、本部に送ります。本部で再度面接と審議を経て登録となります。マッチングについては本部で一括して行っています。
また、子どもが産んだ親を恨むことなく、産んでくれたことを感謝して育つことができるよう、概ね2歳から3歳くらいを目安に、できるだけ早い時期に子どもが安定した状態での告知をおすすめしています。実母に対して悪いイメージを持っていない(そういった段階を乗り越えた)方になっていただいているので、そういった意味でも単純に養育里親に登録した方とは違ってくるかなと思います。
Q 今後の課題や抱負をお聞かせください。
A 「あんさん協」では生活費以外の金銭は一切受け取らず、ボランティアで対応していますので、正直病院としての負担はかなりあります。今後相談件数がさらに増えることも想定すると、やはり同様の取組を行う産院が増えていくことが望ましいと考えています。
どの産院でも飛び込み出産の経験はあると思うのですが、それでは子どもの多くは施設へ行くことになってしまいますし、親も十分なフォローがないまま同じことの繰り返しになったり不幸な事件に発展したりといったことになりかねません。ですから、そうなる前に前もって対応できる体制を整えておけば新生児のうちから一般的な家庭で育つ子どもを増やすことができますし、虐待も減らすことができるのではないでしょうか。
また、ここに相談に来る方の話を聞いていると、妊娠や出産、育児に関する情報や相談先がうまく伝わっていないと感じます。今は健康保険に加入さえしていれば出産育児一時金等の充実により、出産自体にはほとんどお金がかからない状況ですが、そのことさえ知らない方もいらっしゃいます。
望んで生まれて、十分な環境が整っていたとしても、育児は大変で悩みは誰にでもあるものです。そのことを理解してもらって、何かあれば一人で解決しようとせずにヘルプが出せるように親が変わらないといけないし、ヘルプが出しやすい環境づくりをしないといけないと思います。

人権カレンダー 5月

  • 児童福祉月間
  • 次代を担う子どもが愛情深く大切に育てられるとともに、人との関わりや多様な体験の中で人間性と能力を豊かにはぐくみ、自立した社会の担い手として育っていくことは県民すべての願いであります。またそのような環境をつくることは県民の使命でもあります。
  • このような観点から、滋賀県では毎年5月5日の「こどもの日」を中心とした児童福祉月間において、県、市町、家庭、学校、福祉関係機関、児童福祉施設、企業および地域社会等社会全体が一体となって、各種啓発事業および行事を展開することにより、児童福祉の理念の一層の周知と子どもを取り巻く諸問題に対する社会的関心の喚起を図るものとしています。
  • 1日~7日憲法週間
  • 昭和25年(1950年)に実施された憲法施行3周年式典に合わせて、憲法の意義について国民に再確認してもらうことを目的として最高裁が中心となって「憲法記念週間」として始められました。昭和28年(1953年)からは法務省、検察庁、弁護士会の協力で実施されるようになり、昭和31年(1956年)に現在の名称に改称されています。この期間に合わせて各地で関連行事が開催されます。
  • 3日憲法記念日
  • 3日世界報道自由デー
  • 平成5年(1993年)の国連総会において宣言された記念日です。これは、自由かつ多元的で独立した報道がどの民主社会においても不可欠であるという平成3年(1991年)の「世界の報道の自由促進に関するUNESCO総会議決」に由来するものです。
  • 5~11日 児童福祉週間
  • 「児童福祉週間」は、子どもや家庭、子どもの健やかな成長について国民全体で考えることを目的として定めた、毎年5月5日の「こどもの日」から1週間のことで、児童福祉の理念を普及・啓発するため、さまざまな事業が行われます。
  • 8日、9日 第二次大戦中に命を失った全ての人に追悼を捧げる日
  • 平成16年(2004年)に国連総会はこの日を追悼と和解の日と指定すると宣言し、加盟国や国連諸機関、NGOなどに、ふさわしい形で記念し、戦争でなくなった全ての人を追悼するよう要請しました。戦争を過去のものにしないために今一度振り返り平和について考えましょう。
  • 5月10日~16日看護週間
  • 毎年5月12日の「看護の日」を含む1週間は「看護週間」と定められています。週間中は、「看護の心をみんなの心に」をテーマに、各媒体での広報や、中学生・高校生などを中心とした、病院や老人ホームなどでの一日体験ボランティア活動や「一日まちの保健室」「ふれあい看護体験」など、看護に対する理解と関心を高めるためのさまざまな行事が行われます。
  • 5月12日看護の日
  • これからの高齢化社会を支えて行くためには、国民一人一人が、ケアの心、看護の心を理解することが大切です。近代看護の基礎を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなんで、毎年5月12日は「看護の日」と定められています。この日を含む看護週間を中心に、各媒体での看護に関する広報や一日看護体験ボランティア活動などが各地で行われます。
  • 15日国際家族デー

毎年5月15日を「国際家族デー」とすることが平成5年(1993年)の国連総会で決定しました。総会は平成元年 (1989年)の決議によって、家族問題に対する認識を高め、包括的政策を持って家族に関する問題に取り組む各国を支援するべく、平成6年(1994年)を「国際家族年」と宣言しました。

  • 21日 対話と発展のための世界文化多様性デー
  • 国連総会は平成14年(2002)年12月20日、繁栄や持続可能な開発、平和的共存を実現する手段としての文化の潜在的能力を高める必要から、5月21日を「対話と発展のための世界文化多様性デー」と宣言しました。平成14年(2002)「国連文化遺産年」の幕を閉じるにあたり、総会では文化の多様性を保護することと、文明間の対話の枠組みを拡大することとに密接な関連性があることを認めています。
  • 25~31日 非自治地域人民との連帯週間
  • 平成11年(1999年)、国連総会は毎年5月25日から始まる一週間を「非自治地域の人々との連帯週間」とするよう非植民地化特別委員会に要請しました。この週間はもともと昭和47年(1972年)に、「自由と独立と平等な権利のために戦う南部アフリカ、ギニア(ビサウ)およびカーボベルデの植民地人民との連帯週間」として、アフリカ解放記念日である5月25日から開始されることが宣言されていました。
  • 29日国連平和維持要員の国際デー
  • 平成14年(2002年)国連総会で国連の平和維持活動に奉仕したすべての人の高いプロ意識、献身および勇気を称え、平和のためにその命を失った人々を追慕するため宣言された記念日です。

ジンケンダーのちょっと一言

平成26年(2014年)における「人権侵犯事件」の状況について~人権侵害に対する法務省の人権擁護機関の取組~ より

ジンケンダー

○新規に救済手続が開始された件数は21,718件(対前年比3.2%減少)

○処理件数は21,718件(対前年比2.0%減少)件数からみた特徴としては、次のようになっています。
1. インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件1,429件(対前年比49.3%増加)

2. 差別待遇に関する人権侵犯事件869件(対前年比37.9%増加)

3. 社会福祉施設に関する人権侵犯事件の増加246件(対前年比18.3%増加)また、人権侵犯事件のなかでも、暴行・虐待事案は4,134件(対前年比7.1%減少)で、全事件類型別の中で最も多く、全事件数の19.0%を占めています。
みんなで、虐待のない社会を築いていくのだー。
法務省ホームページ(外部サイトへリンク)

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滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:cf00@pref.shiga.lg.jp
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