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「じんけん通信」(第54号)

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じんけん通信

平成24年(2012年)10月(第54号)

  • 10月1日は「国際高齢者デー」です。
  • 世界保健機関(WHO)は4月に、認知症の患者が2050年までに今の3倍の1億1540万人に達するとする報告書を発表しました。国内の認知症患者数は2011年時点で約240万人と推定され、今後も増加するといわれています。
  • そのため厚生労働省では、5月に「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」を設置し、7月に報告書をまとめました。
  • そこで今回は、もの忘れサポートセンター・しがの事業を受託され、認知症患者の支援に積極的に取り組まれている藤本先生にお話を伺いました。

特集 認知症と人権

Q:認知症とはどんな病気ですか。

藤本先生

A:認知症とは、何らかの原因で脳の神経細胞が壊され、それによって記憶力などの知的能力が低下していく病気です。高齢者だけでなく、原因によっては若い世代にも起こりうる病気です。認知症の原因には多くの病気が関係していますが、代表的なものとしてアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症(脳梗塞等)、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、の四つがあり、特徴もそれぞれ違います。

Q:単なるもの忘れとどう違うのでしょうか。

A:人の名前が思い出せない、めがねを捜すことが多くなったなどの「もの忘れ」は、年をとるとともに誰にでも起こってきます。日常生活にそんなに支障がなく、半年や一年くらいの間に目立つ悪化もなければ心配はありません。

一方、認知症のもの忘れでは、最初はかかってきた電話の内容や相手を忘れるくらいから始まりますが、そのうち電話があったこと自体を忘れてしまいます。指摘されても思い出せず、半年や一年くらいでもの忘れが悪化していくようだと心配です。

Q:どんな症状がでますか。

A:認知症の症状は大きく分けて「認知機能障害」と「BPSD(認知症の行動と心理の症状)」が二つに分けられます。
認知機能障害は、脳の障害によって、認知症になるとすべての人に出てくるもので、「記憶障害」や「実行機能障害」(思いつく・順序立てて行動できなくなる)、見当障害(場所・日付が分からなくなる)など、「中核症状」とも呼ばれており、徐々に進行していく症状です。

一方、「BPSD」は、「周辺症状」とも呼ばれ、徘徊や妄想などです。対応次第で改善したり、なくしたりすることもでき、必ずしもすべての人に見られるものではありません。
BPSDの背景には、必ず何らかの認知機能障害による生活のしづらさや、それに伴う心理的な反応があります。保険証が見つからず、病院に出かけることができずにいる人のことをイメージしてみてださい。捜しても捜しても保険証は出てこず、次第に不安やあせる気持ちが渦巻いて、八方ふさがりになります。その状況が続くと、自分の状況やまわりの対応に怒りの感情がわき上がり、「誰かが隠した」と言い出すかもしれません。

Q:近年、若年性認知症への関心も高まっていますが。

A:若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症をいいます。高齢者の認知症と病理学的に違いがあるわけではないといわれていますが、年齢が若いことから社会的、家庭的問題を多く抱えています。

診断が遅れることにより、治療や支援体制に支障が出てしまうと、せっかくの「本人に残されている能力」を生かすことができなくなります。早期発見が重要です。

Q:治療できるのでしょうか。

A:昔は「認知症に治療はない」といわれていましたが、今はアルツハイマー型には進行を遅らせる4種類の治療薬がありますし、適切なケアを行うことで、できるだけ進行を遅らせ、穏やかな生活を維持することができます。

Q:もの忘れサポートセンターしがの取組を教えてください。

A:本人・家族・専門職(介護職、医師等)・行政職を対象にした相談業務が大きな割合を占めています。電話と面談の2種類を合わせて年間400件前後の相談があります。電話は24時間受付としていますが、これは家族の方に安心していただくことが目的です。もちろん相談から治療や支援が始まるケースがほとんどです。 状況によっては緊急に受診につなげることもあります。

また介護施設を訪問しての助言や研修もしています。

Q:その他にもたくさん取り組まれていますね。

A:当院としては、発症初期の軽度認知症の人とご家族を対象とした「心理教育」、進行の度合いに合わせた3つのグループの認知症専用デイサービスである「もの忘れカフェ」、本人・家族交流会の「サルビアの会」などを行っています。

Q:患者さんをケアする際に大切にされていることは。

A:一番大切なことは、患者さん一人ひとりの症状と気持ちに寄り添うことです。

デイサービスの活動では、参加者自身で活動の内容(何をするか、どこに行くか)を決めてもらいます。もちろんはじめは自分たちで決めることができるわけですが、病気が進行してくれば決める(考えつく)ことが難しくなってきます。そうなったときに、本人に決めてもらおうとすると、他に考えつかないので、いつも「散歩に行く」になってしまいます。そこに患者さんの意思があるかというと疑問があるわけです。

そうではなくて、例えば去年(自分たちで決められていた頃)していたことのリストを見せます。そうするとそれがきっかけ(記憶の補助具:メモリーエイド)となって思い出し、「今年も行きたい」「あれを作ろう」などと決めることができます。リストで思い出せなくても、写真やビデオなど視覚に訴える工夫をしていきます。選ぶ元は市販のアクティビティ集ではないので、少しでも本人の意思に近い決定となるのではないでしょうか

このように「自分で意思決定をする」ということが大変重要で、どんなことでも判断に迷うものについては必ず本人に尋ねるようにしています。そのためにはゆっくりと丁寧に話を聞かなくてはなりません。

「名前を書く」という行為一つとっても、最初は漢字で書けていたものが書けなくなったときに、「じゃあ職員が書きます」というのは簡単なのですが、本人の希望に合わせて、ひらがなでもいい、それも難しければ見本を書き写すのでもいい、それも無理ならハンコでも、もちろん空欄でも構わないのです。とにかく本人の希望を汲み取ってそれが実現できる方法を考えていくことが大切になります。

最近では、患者の生活歴を知ることが重要だといわれていて、それはそれで正しいのですが、過去は過去でしかありません。昔から、あることが好きだったとしても、その人が今それを好きか、それをしたいかは聞いてみなければ分からないのです。たとえ病気になって進行していくとしても、その人には「現在」があり「未来」があります。それと向き合うことを忘れてはいけないと思います。

Q:最近は介護者の人権も注目されていますね。

A:まず患者のケアと家族のケアを考えたときに、50:50ではなくて100:100と考えて関わることが大切です。

そして相手の気持ちを否定せず、一度全て受け入れることが重要になります。昔であれば「怒らないであげてください。それが本人のためです。」と言っていたかと思いますが、それでは家族の大変さやしんどさはさらに深まってしまいます。そういう指示的アプローチはしっかりとした信頼関係ができるまで後回しにして、たとえ何か間違っていたり、こうした方がいいということがあっても、「あなたは間違っていない。よく頑張っている」とその人を肯定するメッセージを送りつづける支持療法的な関わりが、「支援」することにつながります。

以前お出会いした患者さんの家族は、当初心を閉ざしておられて、こちらの関わりを全て拒絶されていました。しばらくしてむこうから申し入れがあり、唯一安否確認だけしてほしいとのことだったので、看護師が毎日FAXでやりとりを始めました。その内容はまさに支持療法的な関わりであり、一言も指導する言葉はありませんでした。そのような状態が3か月続いて初めてその方は心を開いてくださり、そこから介護サービスがスタートしました。

家族は日々患者に向き合っておられるわけで、腹が立つことも、病気であることを信じたくないという思いも当然の感情です。ですから、先ほど言った「本人からゆっくり話を聞く」というようなことは、家族が担うのではなく、第三者である支援者がやるべきことだと思います。

Q:課題だと感じられていることはありますか。

A:今は認知症の診断・(投薬)治療できる医師は増えましたが、本当の意味でのケアや家族支援をできる人はまだまだ少ないと感じます。サポートセンターで受ける相談や講演を通じて理解が深まっていけばと思います。

Q:認知症の方が地域で暮らすにはどういったことが大切ですか。

藤本先生

A:やはり大切なのは、周囲の人が認知症についてきちんと理解し、本人やその家族の大変さを想像できる心を持つことです。

ある若年性認知症の家族は、告知の後、近所の人に伝えるかどうかとても悩んでおられました。結局、今後迷惑をかける可能性も考えてきちんと伝えようと決意し、「どんな反応が返ってくるだろう…」と、ドキドキしながら打ち明けたところ、「みんなで助けるから」と温かく受け入れてもらえたそうです。このような場合に「問題が起こらないように気をつけておいて」というような場合もありますが、どちらが住みよいかは明らかだと思います。

確かに認知症の人が地域で暮らしていこうと思うと色々な問題が発生し、周囲に迷惑をかけることもあるでしょう。しかしその人はそれまで何らかの形で地域に貢献し、地域の仲間として暮らしてきたわけです。それなのに、病気になったからといって「何かあったら困る」と排除していいのか。認知症はこれからますます増えていく病気といわれており、「明日は我が身」かもしれません。「みんなで支えよう」と当たり前に思える地域をつくっていくことが必要ではないでしょうか。

Q:今後の抱負をお聞かせください。

A:今後も、認知症の的確な診断、治療、ケア、家族支援、地域連携を 丁寧に行いながら、認知症の人自身が病気と折り合い、『できるだけ自分でやって、仲間がいて、社会とつながっている』という、 「人」として尊厳を保って生きられるように支え続けたいと思います。

☆☆☆人権カレンダー 10月☆☆☆

10月は里親月間、臓器移植普及推進月間です

  • 1日 法の日
    「法の日」は昭和3年(1928年)10月1日に陪審法が施行されたことにより、翌昭和4年(1929年)から「司法記念日」と定められたことに由来します。また、昭和22年(1947年)の10月1日は、最高裁判所発足後初めて最高裁判所で法廷が開かれた日です。 1959年に裁判所、検察庁、弁護士会の三者協議により提唱され、翌年の閣議了解で定められました。 この日から一週間を「法の日」週間とし、法の役割とその重要性を国民に理解してもらうことを目的として、全国各地で講演会、無料法律相談等各種行事が実施されます。
  • 1日 国際高齢者デー
    国連総会は1990年12月14日の決議によって、10月1日を「国際高齢者デー」に制定しました。これは、1982年の高齢者問題世界会議で採択され、同年に国連総会によって承認を得た「高齢化に関するウィーン国際行動計画」など、国連が主導してきたものを受けてのものです。
  • 10日 世界メンタルヘルスデー
    1992年にNGO世界精神衛生連盟(WFMH)が、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、人々に体験発表の場を設けるために10日を世界メンタルヘルスデーと定めました。WHO(世界保健機構)も協賛し、国際デーとなりました。
  • 14日~21日 男女共同参画社会をめざす「パートナーしがの強調週間」

近年、少子高齢化、情報化の進展など社会経済情勢は大きな変化の中にあり、男女が、互いにその人権を尊重しつつ喜びも責任もわかちあい、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、より重要な課題となっています。

現在、県では、滋賀県男女共同参画推進条例の基本理念にのっとり、県民や事業者の皆さんと一体となって男女共同参画の取組を進めています。

その一環として、「パートナーしがの強調週間」を設定し、県、市町、民間団体等が連携しながら広報・啓発活動や研修・講座を開催するなど、県民総ぐるみで男女共同参画社会への理解と関心を高めるための取組を進めます。

■じんけん豆知識 障害者虐待防止法

昨年6月に成立した「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(通称:障害者虐待防止法)が、今月から施行されました。この法律では、国や地方公共団体、障害者福祉施設、使用者などに障害者虐待の防止等のための責務を課すとともに、障害者虐待を発見した場合の通報義務を定めています。具体的に説明します。

  • 障害者虐待とは

まず対象としては、養護者(家族、同居人等)による虐待、障害者福祉施設従事者等による虐待、使用者(雇用主等)による虐待の3つを想定しています。そして具体的な事例について次の5つに分類しています。

  1. 身体的虐待…身体に外傷が生じ、もしくは生じるおそれのある暴力を加え、または正当な理由なく身体を拘束すること。
    例: 殴る、つねる 、無理やり食べ物や飲み物を口に入れる、ベッドに縛り付ける、部屋に閉じ込める
  2. ネグレクト(放棄・放任)… 著しい減食又は長時間の放置、養護を著しく怠ること。
    例:食事や排泄、入浴、洗濯など身辺の世話や介助をしない、同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置する
  3. 心理的虐待… 著しい暴言、著しく拒絶的な対応、または不当な差別的な言動その他の著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
    例: 侮辱する言葉を浴びせる 、怒鳴る 、ののしる、仲間に入れない 、子ども扱いする
  4. 性的虐待… 性的な行為やその強要(表面上は同意しているように見えても、本心からの同意かどうかを見極める必要がある)
    例:裸のままにする
  5. 経済的虐待… 財産を不当に処分すること、不当に財産上の利益を得ること
    例:・本人の同意なしに財産や預貯金を処分・運用する、本人の同意なしに年金等を管理して渡さない

※これらは虐待者・被虐待者に自覚があるかどうかに関わらず、適用されるものです。

  • もしかしたら・・・と思ったら

障害者虐待が疑われることを発見した場合には、速やかに市・町(使用者による虐待の場合は県でも可)に通報しなければなりません。通報を受けて、事実確認や必要な措置等の検討、対応が行われます。通報が結果的に間違っていても構いません。通報することが、本人の生活環境の改善や(養護者による虐待の場合には)養護者への支援につながるのです。

■イベント・行事案内

県内外で開催される研修会、啓発イベント等を案内します。

県内

  • 公開講演会「あきらめなければ きっかけはつかめる!」

講師 藪本 雅子 さん ◇フリーアナウンサー
日時:10月20日(土曜日) 13時30分~15時00分(受付 13時00分~)
場所:滋賀県立男女共同参画センター“G−NETしが” 大ホール
参加費:500円
要申込み(10月10日まで)

  • 滋賀県平和祈念館

平成24年度地域交流展示「八日市飛行場 -戦前・そして戦後-」
期間:11月4日(日曜日)まで

県外

  • 大阪人権博物館

第67回特別展「全国水平社創立90周年記念『水平社の時代』」 」
期間:11月25日(日曜日)まで
http://www.liberty.or.jp/

  • ピースおおさか

収蔵品展2
期間:12月25日(火曜日)まで
http://www.peace-osaka.or.jp/news/e20120801.html
ウィークエンドシネマ「亀も空を飛ぶ」
日時: 10/6(土曜日) ・10月20日(土曜日) ・10月27日(土曜日)14時~

  • ヒューマンステージ・イン・キョウト2012 -親子の絆~子育てを通じて学んだ家族の大切さ-今井絵理子トーク&ライブ

日時:10月20日(土曜日)14時~16時(13時開場)
場所:同志社大学寒梅館内ハーディーホール

  • ウィングス京都山極寿一の頼れるイクジイになる!孫育て講演会

日時:10月27日(土曜日)13時30分~15時00分
 

  • 京都ヒューマンフェスタ2012

日時:10月28日(日曜日)11時~16時
場所:京都テルサ
内容:ステージイベント(安田美沙子)ほか
問い合わせ:京都府人権啓発推進室 電話075(414)4271

  • らいとぴあ21セミナー「”学校”って何やろう?~ぼくの・わたしの学校モンダイ~」

日時:10月25日(木曜日)19時00分~21時00分
場所:らいとぴあ21・視聴覚室

編集後記

先月下旬、領土問題に端を発した中国での大規模な反日デモが連日報道されていました。県内企業が被害に遭うなど、ショックを受けられた方も多いのではないでしょうか。また日本でも、中国人を対象にした嫌がらせが少なからず発生しています。

問題の解決は容易ではありませんが、暴力の応酬では何も進展しないことは明らかです。互いに言葉を尽くして、平和的に解決することを願ってやみません。

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編集・発行/滋賀県総合政策部人権施策推進課

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