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「じんけん通信」(第46号)

「わからない」だから「かわらない」そんなあなたの人権意識

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あなたの「わかりたい」を応援したい。人権施策推進課では、そんな思いで毎月「じんけん通信」を発行しています。ブラウザの「お気に入り」に入れていただければ感激です。

じんけん通信

平成24年(2012年)2月(第46号)

  • インターネットは今や年齢・性別・職業を問わず、誰もが使う道具となりました。
  • 利用者の拡大に伴い、様々なトラブルや事件も多く発生しています。その中で「人権侵害」が大きな問題となっています。
  • そこで今回は昨年12月に開催したインターネット人権啓発研修会の講演の内容をご紹介します。
  • 講師は情報文化総合研究所所長佐藤佳弘(さとうよしひろ)さんです。

(クイズの解答は特集の最後にあります)

特集 インターネットと人権

ネット社会の現状

佐藤先生
  1. 50年前に描かれていた未来社会と現代
    突然ですが、みなさん50年前はどこで何をされていましたか。その頃はちょうど東京タワーが建築中で、少年雑誌や少女雑誌には、このまま技術が進歩すれば病気も犯罪もないバラ色の未来がやってくる、と度々紹介されていました。
    そしてたどり着いた現代、確かに技術の進歩によって社会は発達しました。しかし、それと同時に多くの問題や危険も抱えています。ITの技術でいえば、様々な利便性の代わりに、カメラ付きケータイによる肖像権侵害や不正請求などの詐欺、コピーが容易になったことによる著作権侵害、迷惑メール、コンピュータウィルスなど多くの弊害をもたらしました。今回はその中の一つであり大きな部分を占める「人権侵害」についてお話しするわけですが、問題はそれだけではないということもぜひ認識しておいていただければと思います。
  2.  事件数をハインリッヒの法則から考える
    ネット上でのトラブルや事件(ハイテク犯罪)に関する警察への相談が年間約8万件あります。その約4割が詐欺・悪徳商法に関するもので一番多く、次いで多いのが名誉毀損・誹謗中傷です。これが約1万件あります。また法務省で取り扱ったネット上での「人権侵犯事件」は約800件となっています。
    こう聞くと「そんなものか」と思うかもしれませんが、これは氷山の一角にすぎないのです。この氷山の一角という言葉をうまく説明する言葉としてハインリッヒの法則(1:29:300)があります。これは工場事故の件数から導かれた法則なのですが、つまり「重大な事故」が1件起こったならば、「軽傷で済んだ事故」が29件はあるだろう、そしてその背景には「事故には至らなかったがはっとしたもの」が300件はあるだろう、ということです。これを先ほどの話に当てはめてみると、わざわざ警察に相談した8万件の後ろには、友人・家族に相談して済ましているものや、黙って我慢したものが膨大にあるということがお解りいただけるのではないでしょうか。

ネット上の人権侵害

ネット上の人権侵害ネット上での人権侵害は、大きく分けると9つに分類することができます。この中のいくつかについて詳しくお話ししたいと思います。

  1. 名誉毀損と侮辱
    名誉毀損とは、「その人の社会的評価を低下させる」言動のことで、誹謗中傷や噂、悪口などです。ネット上の事例でみてみると、女性の実名や連絡先を性的な文言と一緒にメールで複数に配信した例(1990年、初めてネット上で認められた名誉毀損)や、別れた恋人の悪口を掲示板に書き込んだ例、知人の着替えを動画で撮影しサイトに投稿してしまった例などがあります。友人に愚痴を言うのとは違い、インターネットは誰の目にも触れ、瞬く間に広がっていきますから、注意が必要です。
    一方、侮辱とは「その人の名誉感情を傷つける」言動で、簡単に言えば馬鹿にしたり、けなしたりすることを指します。名誉毀損と侮辱とは明確に区別されていて、具体的事実を摘示すると「名誉毀損」、具体的な事実を示さずただ馬鹿にしているものは「侮辱」となり、量刑に大きな差があります。ただ気をつけたいのが、名誉毀損と侮辱の両方に「公然と」という条件が含まれていることです。つまりメールなどによる一対一のやりとりの場合はこれらの刑事罰は成立しません。
  2.  脅迫
    芸能人のブログなどで「殺します」「暗殺します」といった書込みがされ、書込んだ人が逮捕されることがあります。現実世界なら冗談は冗談で済まされますが、ネット上で公然と行えばそれだけで犯罪となるのです。ただ脅迫罪の対象は法的には本人と親族に限られるので「お前の恋人を殺す」という書込みでは成立しません。
  3. ネットいじめ
    今や全国の学校で学校裏サイトが作られています。文部科学省の平成20年(2008年)の調査では、見つかったものだけで約38,000件の裏サイトがありました。これは全国にある中学・高校を合わせた数の2倍にあたります。ここで悪口を言い合ったりしていじめに発展するわけです。
    なぜ学校裏サイトは荒れてしまうのかというと、それはその構造に問題があります。学校裏サイトは無料の掲示板を使って児童・生徒が管理人となって立ち上げるものです。管理人は不適切な書込みを消したりすることができますが、子どもたちはそれぞれ学校や習い事などしなければいけないことがたくさんありますから、管理がきちんとできるはずはありません。ですから、最初は単純な交流・意見交換の場であっても、一度そこに悪口が書き込まれてしまうとあっという間に荒れてしまうのです。
    それから子どもたちの間でもう一つ問題になっているのが「なりすまし」です。これは現在の中高生・大学生であればほとんどの子どもが知っています。いとも簡単に自分とは違う人間になりすまして、メールを送ったり掲示板に書き込んだりすることができます。これを使えば、例えば親友に見せかけて悪口のメールを送ったり、クラス全員から悪意のある書込みがされたかのように見せかけたりすることができるのです。その精神的ダメージは大変大きく、結果学校に行けなくなってしまう子もいます。なりすましメールに関しては、いずれの携帯電話会社も拒否設定ができるようになっています(購入時未設定)ので、自分できちんと設定しておく必要があります。
  4. 部落差別
    昭和50年(1975年)に部落地名総鑑の存在が発覚し、その後も異なる種類のものの存在が次々と発覚し、大きな社会問題となっています。それが現代になり、今度はネット上で部落の地名リストを作ろうという風に変化しています。呼びかけに対して、様々な人たちが噂などを元にして色々と書き込んだり、部落出身の芸能人をリストにしたりしています。
    それからグーグルアースによる事例もあります。グーグルアースには古地図を表示できる機能がありますが、日本の古い地図で差別的な地名が載っているものをそのまま表示させてしまったというものです。この地図は現在の地図と重ね合わせることができるため大変問題になり、日本の抗議によって今は削除されています。 

治安維持の取組

  1. 自治体の取組
    岡山市では「有害書き込み禁止条例」が制定されています。これは、市の運営する8つの掲示板について、悪質な書込み(誹謗中傷・差別的・プライバシー侵害等)があった場合には、削除しますというもので、罰金の規定も設けています。この条例に基づいて年間100件ぐらい削除されています。
    奈良県では「インターネットステーション」というものを作りました。そこで県内全市町村から人を出し合って人海戦術で掲示板をチェックし、誹謗中傷や差別的な書込みを見つけたら、削除依頼をしたり法的措置を執るための手伝いをしたりしています。
    最後に弘前市の事例ですが、こちらも「弘大ネットパトロール隊」ということでネット上の監視をしていることは変わりません。ただ特徴的なのは弘前市教育委員会と弘前大学が提携し、学生の力を借りて行っているという点にあります。学生は社会のためになることでしたら、喜んでボランティアで動いてくれます。ですからぜひこうした若い人材を活用していただきたいなと思います。
  2. 民間の取組
    大手コミュニティサイトである「モバゲー」と「ミクシー」を例にみてみますと、どちらも掲示板での書込みは24時間・365日監視されています。機械によるシステムチェックと併用する形で、誹謗中傷の他にも電話番号などの「出会い」や「援助交際」に関する書込みにも目を光らせて、隠語などに注意しながら、削除に当たっています。またあまりにも悪質な場合や繰り返し行った場合には、退会させるという措置もとっています。
    しかしこれらのサイトは、大手企業としての社会的責任を感じて自主的に策を講じているのであって、法律上、サイト運営者に監視をする義務は一切ありません。ですから、中小企業など余力がないところであれば、何の制御もないままになってしまっているのが現状です。

安心安全のネット社会へ

  1. 法的整備
    平成14年(2002年)に「プロバイダ責任制限法」という法律ができ、プロバイダは二つのことができるようになりました。一つ目は、誹謗中傷など相当の理由があれば、発信者に無断で書込みを削除することができるようになりました。もう一つは謝罪や損害賠償請求などを求める場合については、発信者の情報を被害者に開示できるようになりました。どちらも一見当たり前のように感じるかもしれませんが、この法律ができるまでは、表現の自由や通信の秘密、守秘義務などの問題で簡単にはできなかったのです。この法律によって裏付けができたことで損害賠償請求の道が拓け、被害者の申し出により調査を行い対処するという仕組みができました。
    こうして発信者開示請求をしますと、発信者の氏名・住所・メールアドレス等が教えてもらえるわけです。そしてこの情報を元に民事・刑事の裁判ということになります。インターネットに関する判例はたくさんありますが、ここで一つ知っておいていただきたいのは、刑事裁判でいくら罰金を払わせても被害者には支払われないということです。また民事裁判で慰謝料が払われたとしても、裁判費用と比べればマイナスになることもあります。そのことを念頭に置いた上で、法的手段について考える必要があります。
  2. 発信者の特定
    平成23年(2011年)3月の京大入試事件でもわかるように、「ネットは匿名」というのは今や幻想です。通信記録を調べることによって全てのパソコンやケータイに割り振られているIPアドレスを特定し、本人を見つけることが可能になっています。
  3. 残された課題
    まず法的整備が追いついていないということがあります。ネット書込みに対する監視が義務化されていない、プライバシー侵害に対する法律がない、児童ポルノに対する規制が甘いなどたくさんの問題点があります。
    次に「早く見つけて早く消す」ための仕組みづくりをしていく必要があるだろうと思います。そのためには先ほどお話しした学生やボランティア、NPO、民間企業など様々なところと連携していかなければなりません。
    そして根本的にこういった書込みをさせないためのモラル教育、リテラシー教育が重要であり、私たち教育機関や行政の責務ではないでしょうか。
    現在、韓国ではネット上での書込みに対して本人確認が義務化されています。これは相次ぐネット犯罪を防止するために導入されたものですが、政府による言論統制を懸念する声もあります。日本もこのままネット上での人権侵害が続けば、それを口実にして韓国のようなシステムが導入される可能性があります。現在の誰もが自由に使えるネットワークを守れるかどうかは、これからの私たちの行動にかかっているといっても過言ではないのです。
  • クイズの答え:1.○2.×3.○4.×5.○6.○7.○8.○9.×10.○

■じんけん豆知識 正しく守って正しく使おう

自分の知らないところで自分の住所や家族構成などの情報が漏れ、電話がかかってきたりダイレクトメールが送られてきたりした経験はありませんか。また企業が保有する個人情報が流出したというニュースも耳にしますね。
個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであり、その適正な取扱が図られなければなりません。しかし一方で、時には適正な利用までもためらってしまうケースも見受けられます。

  • 個人情報保護法のポイント
  1. 法律の目的
    • この法律は「個人の権利利益保護」のみを目的とするものではなく、「個人情報の有用性」と「個人の権利利益保護」のバランスを図るものです。
  2. 適用範囲
    • この法律の規定の対象は「5,000人分以上の個人情報をデータベース化してその事業活動に利用している者」=「個人情報取扱事業者」です。そのため個人(年賀状用の住所録など)や要件に満たない事業者は対象外です。
  3. 個人情報取扱事業者の義務
    • 上記の個人情報取扱事業者は、利用目的を特定・通知することが義務づけられており、目的外利用は禁止されています。また情報の漏洩等がないように、安全管理措置をとること、さらに第三者への情報提供には、原則として本人の了解を得る(※例外があります)など、様々な義務規定があります。
  4. 個人情報とは
    • この法律上個人情報とは「特定の個人を識別できるもの」とされています。そのため氏名とメールアドレスの一覧など、容易に照合できる場合はそのメールアドレスも個人情報となります。
  • 過剰反応の例
  1. 町内会名簿が作成できないため、記念品の対象者がわからない、町にどれだけの災害時要援助者がいるかわからない
    • 自治会が、自治会名簿を作成・配布する目的を明示し、同意の上で本人から個人情報を提出してもらうことで可能です。 法律上の「個人情報取扱事業者」には、ほとんどの自治会が該当しないため、その場合、個人情報保護法上の義務は負いませんが、プライバシー権の侵害につながる場合もありますので、法の趣旨を踏まえた適切な取扱いが求められます。
  2. クラス名簿・卒業生名簿・緊急連絡網が作れない・配れない
    • 入学時や新学期の開始時に、「生徒の氏名、住所など学校が取得した個人情報については、クラス名簿や緊急連絡網として関係者へ配付する」ことを明示し、同意の上で所定の用紙に個人情報を記入・提出してもらうことなどにより、作成・配付が可能です。
  3. 災害時に、医療機関が受け入れた被害者に関する照会に応えられない
    • 本人が意識不明である場合等のほか、医療機関としての通常の体制と比較して、非常に多数の傷病者が一時に搬送され、家族等からの問い合わせに迅速に対応するためには、本人の同意を得るための作業を行うことが著しく不合理と考えられる場合は、本人の安否を家族等の関係者に迅速に伝えることによる本人や家族等の安心や生命、身体又は財産の保護等に資するものとして情報提供ができます。
  4. 民生委員・児童委員の活動のための情報提供が受けられない
    • このような場合は、それぞれに守秘義務が課せられていることも踏まえ、第三者への情報提供に関する規定の例外として可能と考えられます。

このように、個人情報には有用性と保護の必要性という二つの側面があります。またネット上での「さらし」行為(個人情報を勝手に掲載すること)が問題となっているように、法律の対象とならない場合でも、法律の理念に則して適正な利用に努め、より快適な社会をつくっていかなければなりません。

もっと詳しく知りたい方は、以下のURLをご覧ください。

http://www.caa.go.jp/planning/redirect/index.html

■イベント・行事案内

県内外で開催される研修会、啓発イベント等を案内します。

県内

  • ママのためのお仕事セミナー

日時:2月9日(木曜日)9時30分~12時00分
場所:滋賀県立男女共同参画センター
要申し込み

  • 障害者就職面接会

〈彦根〉
日時:2月3日(金曜日)13時30分~15時30分
場所:ビバシティ彦根ビバシティホール
〈草津〉
日時:2月15日(水曜日)13時00分~15時30分
場所:クサツエストピアホテル 2階 瑞祥の間

県外

  • 舳松人権歴史館「企画展 シリーズ歴史その2 塩穴村の歴史から部落差別を考える~近現代~ 」

期間:2012年9月28日(金曜日)まで

  • 大阪人権博物館企画展「見た目問題」ってどんな問題?~顔の差別とむきあう人びと~

期間:1月31日(火曜日)~3月25日(日曜日)

  • 和い輪い人権ワークショップ「親しき中にも“差別”あり?〜家庭の中の人権問題」

日時:2月17日(金曜日)13時30分〜16時30分 
会場:ウィングス京都 
連絡先:京都市人権文化推進課075(366)0322 
要申込:2月10日まで

編集後記

今回はインターネットについて特集しましたが、現在国会には「不正アクセス禁止法」の改正案が提出されています。この改正は他人のIDを取得したり、偽サイトを作ることを違法とすることで、フィッシング詐欺等を予防することが目的です。

こうした法整備や私たち一人ひとりのモラルによって、安心・安全で誰もが気持ちよく使えるネット環境をつくっていきましょう。

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編集・発行/滋賀県総合政策部人権施策推進課

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滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:cf00@pref.shiga.lg.jp
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