文字サイズ

「じんけん通信」(第37号)

「わからない」だから「かわらない」そんなあなたの人権意識

「かわりたい」だから「わかりたい」へチェンジしませんか?

あなたの「わかりたい」を応援したい。人権施策推進課では、そんな思いで毎月「じんけん通信」を発行しています。ブラウザの「お気に入り」に入れていただければ感激です。

じんけん通信

平成23年(2011年)5月(第37号)

  • 5月は児童福祉月間です。
  • この春にはタイガーマスク運動により、子ども達に多くの善意が寄せられました。
  • また今回の地震では、親を亡くした震災孤児の数が100人以上と、阪神淡路大震災を遥かに超え、その受け入れ先の確保が課題となっています。
  • そこで今回は滋賀県児童養護施設連絡会の事務局をされている「小鳩の家」の山本園長にお話を伺いました。

特集 子どもと人権

写真1

Q:児童養護施設とはどのような施設でしょうか。

簡単に言えば、お子さんの安全で安心な養育が家庭でできなくなった場合に、社会的養護として、家庭と共同しながら養育していく、という居住型の児童福祉施設ということになります。また、ただ養育するだけでなく子ども達の生きていく力を育てる「自立支援」という役割も担っています。
さらに最近では、地域の子育てをされている方に対する支援という役割もクローズアップされています。

Q:子育て支援では具体的にはどういったことをされていますか。

ここではサロンや子育て教室などを通じて、孤立しがちな若い方にリラックスできる場を提供しています。それから子ども子育て応援サポート事業ということで各市町からの委託を受けてショートステイもお受けしています。気軽に一泊とか二泊とか、ちょっと子育てに疲れたときに、親御さんに休んでいただくことが目的です。

Q:現在はどういったお子さんを受け入れていらっしゃいますか。

現状としては、虐待を受けたお子さんが七割近くで、障害のあるお子さんも増えてきています。他の機関とも連携し、ご家族と一緒の子育てということを大切にしています。

Q:県内の状況について教えてください。

県内にこういった児童養護施設は4カ所しかなく、全国的にも少ないです。ただ滋賀県には里親さんが非常に多くいらっしゃって、昔から施設と里親さんとで社会的養護を必要とする子ども達を支えてきたという特徴があります。またファミリーホームも他府県に比べると増えてきていますが、ただそれでも受け皿が不足しているというのが大きな問題です。
滋賀県の施設では小規模グループケアを重視し、家庭らしさを大切にしてきたということがありますので、受け入れすぎるとそれが保てなくなってしまうということもあります。
また最近では、地域の人とのつながりの中で子どもの生きていく力を育むということで、地域の一軒家を活用して6名までの子どもを育てるグループホーム(地域小規模児童養護施設)の設置も進められています。

Q:子ども達は普段どういった生活をしているのでしょうか。

全く普通の家庭と同じです。
当たり前のことが当たり前に展開するというのがこういった施設のモットーですので、朝は職員が起こしてご飯を食べて…という感じです。部屋は高齢児については完全個室で二人部屋以上にはしません。幼稚園の送り迎えでも、一列に並んだりはせずに3人ずつくらいで登園し、より家庭に近い雰囲気にしています。

Q:食事はどうされているのですか。

小鳩の家では、ホームごとに台所があり、そこでご飯を作ります。献立自体は栄養士の指示によりますが、一日30品目ということだったり、テレビを見ずにみんなで食べるということだったり、そういう基本的なところはきちんとしているのではないでしょうか。また土日はそれぞれのホーム毎に、子ども達と相談して実際に買い物に行き自分たちで作ることにしています。そうやっていくらでどのくらいの物ができるのかといったことを体験して生活する力を身につけていかなければ自立にはつながらないのです。

Q:他にどんな特徴がありますか。

どんな家族でもルールがあるように、みんなが気持ちよく生活するためのルールを決めたり、要望を言ったりする場を「子ども会議」という形で設けています。地域のお祭りや運動会など交流も盛んなので、地域の方といい関係を築けています。

Q:子どもたちのケアで心がけていることはありますか。

虐待を受けた子ども達の心のケアということで、施設の中で心理療法士によるセラピーが行われるようになったり、絵画教室など子どもの心のケアにつながるようなことを個別に取り組んでいます。
また子どもの自尊感情をどう育み、どう寄り添うかということについては、援助技術として論理的にやっていきましょうということになっています。子どもに寄り添いながら、子ども自身の力で生き抜く力や楽に生きる方法を学び取っていってもらうということを大切にしています。そのためには、叱るのではなく伝えて一緒に考えるという姿勢が必要です。子どもは親御さんとのつきあい方を学んでいきます。そのためにコモンセンスペアレンティング(暴言・暴力によらない教育)トレーニングやCAPのプログラムに沿った教育を行いながら、親との絆を継続しています。

Q:家庭復帰をめざす支援はどのようなものがあるでしょうか。

他の施設とは違うかもしれませんが、小鳩の家では面会制限・通信制限がかかっていないケースについては、次の日から会いに来てもらってもいいですよということにしているので、毎日来られる方もいます。その中で保育士や心理療法士など様々な専門職が協力して支援をプログラムとして実施しています。
例えば離乳食等でつまずかれた方であれば栄養士がアドバイスをします。その時にも完璧を求めるのではなく、「こうすれば楽になるよ」というような提案になるよう心がけます。また子どもにとって親御さんは大切な存在ですので、子どもの前で親の批判はしないというのも当たり前のことです。

Q:それぞれ色々な事情があり、関係の回復は大変ですね。

なかなか面会に来られない方については、月に一回写真や生活の様子などをお手紙にして送っています。親御さんには、電話でお話しいただくとか、30分だけでも子どもに会っていただくなど、小さなことの積み重ねで親子の絆を作っています。

Q:施設のこれからについてどのようにお考えですか。

子ども達が安心して育つことができる場所ということで言えば、こういった施設や里親さんでお預かりするのはあくまでも緊急の保護ということで、基本的にはここに来るまでに地域の支援があれば子育てできるんじゃないかなという親御さんはたくさんいらっしゃいます。ですので、大きなことで言えば、地域で子育てできるシステムの充実が必要だと思います。
こういった施設については、今の施策の効果が出るまでの間にも、お預かりするお子さんは増える一方ですので、ひとまず人的・経済的支援をしていただきたいですね。また現在増えている発達障害のあるお子さんについては、施設を出た後の受け皿や児童精神科が不足しているので充実させていただければと思います。
将来的には、子ども達の居住は地域で、本体の施設は様々な困難を抱える子ども達の治療の場という方向になっていくかなと考えています。今は施設である程度トレーニングをして地域で生活する力を身につけたら積極的に地域へという流れになっています。

写真2

Q:こういった施設を支援したい場合はどのようにしたらいいでしょうか。

まずはこういった施設の子ども達を理解していただくことが一番のプレゼントだと思いますし、そして施設を出た後の支援の輪がどれだけ広がるかというところが大切だと思います。「タイガーマスク運動」ではそういう心の部分で大変意義があったのではないでしょうか。
物資などを支援いただく場合には、事前に不足しているものをお尋ねいただけると大変助かります。

Q:県民の皆さんにメッセージを。

私たちは子どもと親御さんが安全、安心、信頼関係を持って子育てをするために支援していく機関です。何か困ったり行き詰まったりしたときには、早めに支援させていただければより早く新たなスタートを切っていただけるかなと思います。施設に預けたからといって親子の縁が切れるわけではありませんし、むしろ親子の信頼関係を深めるための支援をさせていただきますので、何かあったときには気軽に相談できるところなんだと認識してもらえればと思います。
虐待の通報については、啓発が進んでいるところですが、近隣の方の通報で支援に繋がったり命が救われることがあります。ためらわずにご相談いただければと思います。

☆☆☆人権カレンダー5月☆☆☆

  • 1日~7日憲法週間

1950年(昭和25年)に実施された憲法施行3周年式典に合わせて、憲法の意義について国民に再確認してもらうことを目的として最高裁が中心となって「憲法記念週間」として始められました。昭和28年からは法務省、検察庁、弁護士会の協力で実施されるようになり、昭和31年に現在の名称に改称されています。この期間に合わせて各地で関連行事が開催されます。詳しくは行事案内をご覧ください。

  • 3日憲法記念日
  • 3日世界報道自由デー

1993年国連総会において宣言された記念日です。これは、自由かつ多元的で独立した報道がどの民主社会においても不可欠であるという「世界の報道の自由促進に関するUNESCO総会議決」(1991年)に由来するものです。

  • 5~11日児童福祉週間
  • 8日、9日第二次大戦中に命を失った全ての人に追悼を捧げる日

2004年に国連総会はこの日を追悼と和解の日と指定すると宣言し、加盟国や国連諸機関、NGOなどに、ふさわしい形で記念し、戦争でなくなった全ての人を追悼するよう要請しました。戦争を過去のものにしないために今一度振り返り平和について考えましょう。

  • 15日国際家族デー
  • 21日対話と発展のための世界文化多様性デー

国連総会は2002年12月20日、繁栄や持続可能な開発、平和的共存を実現する手段としての文化の潜在的能力を高める必要から、5月21日を「対話と発展のための世界文化多様性デー」と宣言しました。「国連文化遺産年」(2002年)の幕を閉じるにあたり、総会では文化の多様性を保護することと、文明間の対話の枠組みを拡大することとに密接な関連性があることを認めています。

  • 25~31日非自治地域人民との連帯週間

1999年、国連総会は毎年5月25日から始まる一週間を「非自治地域の人々との連帯週間」とするよう非植民地化特別委員会に要請しました。この週間はもともと1972年に、「自由と独立と平等な権利のために戦う南部アフリカ、ギニア(ビサウ)およびカーボベルデの植民地人民との連帯週間」として、アフリカ解放記念日である5月25日から開始されることが宣言されていました。

  • 29日国連平和維持要員の国際デー

2002年国連総会で国連の平和維持活動に奉仕したすべての人の高いプロ意識、献身および勇気を称え、平和のためにその命を失った人々を追慕するため宣言された記念日です。

  • 30日消費者の日

「消費者基本法」改正前の「消費者保護基本法」が昭和43年のこの日に施行されたことから、その施行10周年を機に、昭和53年経済企画庁(現内閣府)によって制定され、昭和63年からは同法20周年を機に毎年5月が「消費者月間」となっています。現在は消費者庁を中心に被害防止のための啓発活動が行われます。

■じんけん豆知識「CAPとは」

今回のインタビューでもお話にありましたが、現在虐待を受けた子どもや支援する大人に対して、CAP(キャップ)プログラムという手法が広く用いられています。今回はその内容について紹介したいと思います。

CAPプログラムとは、Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止プログラム)の略で、1978年にアメリカで始められ、1985年に日本で紹介されました。現在では日本など16カ国に広がっています。

CAPプログラムには3つの大きな柱があります。

◎エンパワメント

CAPプログラムは、子どもと大人それぞれのプログラムがあります。これらのプログラムに共通する理念は「エンパワメント」(内なる力を引き出す)です。

CAPプログラムは、子どもは大人が守るべき弱い存在だ、とみるのではなく、不安で困難な状況にも、 子ども自身の問題を解決する力を信じ、その力を引き出すエンパワメントの考えが基になっています。

◎人権意識

子どものプログラムでは、最初に大切な3つの権利「Safe(安心)、Strong(自信)、Free(自由)」について学びます。

子どもたちに「自分たちは大切な権利を持っている」という人権意識を積極的に教えていくことによって、子どもたちは自分自身が価値のある大切な存在であることを知り、自信と勇気を取り戻します。

人権を守る基本的対処の仕方が「No(イヤという)」「Go(その場を離れる)」「Tell(誰かに話す)」です。これを具体的にロールプレイ(寸劇)を使って学んでいきます。大切な自分を暴力から守るために人権意識が必要です。

◎コミュニティ

CAPは、子どもたちの安全のためにはコミュニティ(地域)の大人たちが子どもたちをサポートすることが不可欠だと考え、そのための積極的な働きかけをします。

学校に地域の大人がやって来て子どものプログラムを提供することによって、子どもたちは子どもの安全のために真剣に取り組んでいる大人たちがいること、子どもの話に耳を傾ける大人がいることを理解します。また、大人へのプログラムを親や教職員、地域の大人たちへ提供することで、エンパワメント、人権意識などの考えや、暴力に対する知識、情報、技術などを大人同士が共有し、互いに助け合う地域を作って、地域全体で子どもたちをサポートしていけるようにします。

このようにCAPプログラムは、虐待を受けた子どもだけでなく、暴力のない社会を作っていくための有効な方法だといえます。

研修等問い合わせ先
CAPあい TEL・FAX0749-43-5737
滋賀YMCA・CAP子ども人権教育センター TEL0748-33-2420、FAX0748-33-8230
CAP滋賀 TEL・FAX0748-23-0777
CAPレラ 携帯090-9110-6089、TEL・FAX0748-63-6539
CAPひまわり座 FAX:077-552-7712

■イベント・行事案内

県内外で開催される研修会、啓発イベント等を案内します。

県外

  • 堺市立舳松人権歴史館企画展「塩穴村の歴史から部落差別を考える~前近代~」

期間:5月2日(月曜日)~10月29日(土曜日)

  • ピースおおさか ウィークエンドシネマ「父と暮らせば」

日時:5月7日(土曜日)/5月14日(土曜日)/5月21日(土曜日)/5月28日(土曜日)14時00分~

  • 水平社博物館特別展「全国水平社創立への軌跡」

 期間:5月1日(金曜日)~8月31日(水曜日)
http://www1.mahoroba.ne.jp/~suihei/sui04.html

  • 2011年度部落史出張講座~地元で学ぶ地元の歴史 in 田中~「河原者 マルティプルの面目―名を残した川崎者―」

日時:5月27日(金曜日)18時30分~20時30分
場所:左京西部いきいき市民活動センター第1会議室
http://shiryo.suishinkyoukai.jp/

  • 高麗美術館研究講座「生誕120年浅川巧を知るー人物像と生涯ー」

日時:5月28日(土曜日)13時~14時半
場所:佛教大学四条センター
受講料:1000円

編集後記

東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

一ヶ月以上が経ち少しは状況も落ち着いてきました。しかし長引く避難生活でストレスがたまり体調を崩される方も出ているようです。また家や職場をなくされて今後の見通しが立たないという方も多くいます。

一日でも早く被災者みなさんに希望のもてる日が訪れるよう、一人ひとりの思いを持ち寄って支援を続けていきましょう。

バックナンバー

編集・発行/滋賀県総合政策部人権施策推進課

人権施策推進課のページにもどる

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:cf00@pref.shiga.lg.jp