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「じんけん通信」(第30号)

「じんけん通信」は、県職員の人権意識の高揚と人権の視点に立った行政の一層の推進を図るために、人権施策推進課から定期的に発信してきたものですが、平成22年度からは、このホームページ上に公開していくこととしました。ブラウザの「お気に入り」に入れていただければ感激です。

じんけん通信

平成22年(2010年)10月(第30号)

  • 人権をもっと身近に学び、理解を深めていくために、国や県、市町などでは、さまざまな取り組みが行われています。啓発ポスターや人権作文、研修会、講演会などが行われており、皆さんも一度は目にされたり、参加したりといった経験がおありかと思います。
  • 毎回、さまざまな人権の分野で取り組んでおられる方々を訪問し、現場の声を届けていきたいと思います。どうか、よろしくお願いします。
佐口弁護士1

特集 多重債務者と人権

「年収の1月3日以上のお借り入れができなくなりました」

そんなテレビCMも見慣れてきた今日この頃。実際に多重債務で苦しんでおられる方にはどのような問題が起きているのでしょうか。滋賀弁護士会副会長で多重債務問題に詳しい佐口裕之弁護士にインタビューしてきました。

Q:6月18日に貸金業法が改正され、総量規制や上限金利の引き下げなど多重債務者の救済に向けて法律が動いているようですが、この改正を機に多重債務に苦しんでおられる方の相談内容等について変化はありましたか。

A:結論から申し上げますと、法改正前後で変化はありません。
貸し渋りや総量規制に引っかかって借りられなくなって、とたんに自転車操業が行き詰まって、多重債務相談が増えるという危惧があったのですが、結論的にはそういう状況ではありません。 要因としては、消費者金融業者側が法律が成立した3年前から既に準備をして、どんどん貸し出しを絞ってきていたということだと思います。

Q:多重債務に苦しみ自己破産するという件数はどうなっているのでしょうか。

A:ひと頃と比べると少なくなってきています。自己破産件数は2003年度がピークで24万件ありましたが、その後徐々に減ってきて、2009年度は約14万件になっています。

Q:多重債務で破産まで至ることは若干少なくなってきているということですが、その中で最近の悪質な事例などがありましたら教えていただけますでしょうか。消費者相談では借金の一本化などのいろいろな詐欺の問題がありますが。

A:消費者金融業の問題ではなく、単に振り込め詐欺であるとか保証金詐欺という問題で、それは依然としてありますね。
最近、パチンコ必勝法詐欺、競馬の必勝法詐欺とか、出会い系サイトのサクラによる被害、「出会い系と言いながら出会えない系」と冗談を言ったりするんですが、そういうのは以前からあったんでしょうけれども、最近は多重債務の問題が沈静化しつつあるので、逆にそういう詐欺の消費者被害の方が目立ってきたという感覚です。

Q:傾向としては詐欺に引っかかる、遊興費に使うというパターンが多いのでしょうか、それとも派遣労働を解雇されたなど景気が悪くなったためにやむなくサラ金に手を出してという傾向が多いのでしょうか。また、貸金業者から借りられなくなって、ヤミ金に手を出したりといったことはないでしょうか。

A:私は弁護士になって10年しか経っていませんが、この10年間で特に浪費系の多重債務者が増えたとか、生活苦系の多重債務者が増えたとか、そういう感覚は全くないです。いつの時代でも同じような比率でいらっしゃるのかなという感覚です。ヤミ金業者の件については、改正法案の審議時に貸金業者側が問題としていましたが、最近は携帯電話や銀行口座に関する法的規制が厳しくなっていることや、それなりに警察も摘発に努力を重ねていること、ヤミ金の危険性が社会に認知されるようになったことなど、いろいろな要因があると思いますが、現在のところ今回の法改正によりヤミ金被害が目立って増加しているという印象はありません。

Q:最近マスコミでもワーキングプア、追い出し屋、貧困ビジネスが取り上げられていますが、先生がお知りになる範囲で、滋賀県内でそういった事例はありますでしょうか。

A:滋賀県内でそういう生活保護者を囲って、どこかに住まわせてという被害事例は私の限りでは聞いてないです。
ただ、追い出し屋については、ちょっと滞納しただけで、家賃の保証会社がものすごく乱暴な電話や訪問をしてくるなど、そういうのは滋賀県でもあります。

Q:多重債務で困っておられる方の特徴はありますでしょうか。

A:はっきりと傾向と言えるかは分かりませんが、私が感じる限りでは住宅ローンを抱えていて、リストラにあったり給料が伸びずに、住宅ローンのステップ返済で、5年、10年後に返済額がグンと上がり、とたんに住宅ローンの支払いのために消費者金融から借りるというケースは、確かに多くなっていると感じます。滋賀県という大都市のベットタウンで、持ち家傾向も強くてという地域的な特徴でもあると思います。
多重債務者イコール浪費家だとか遊興費に使っているだとか、それはほんの一部分の見方でしかないですね。

Q:多重債務の問題ですと、弁護士さん、司法書士さんとか、法テラス、消費者相談窓口がありますが、特に弁護士さんでないと困難な事例なり、こういうときには是非、弁護士の方に相談に来てくださいというような事例はありますか。

A:破産法上の問題がある事例と言いますか、例えば、俗に言う財産隠しをしたり、直前に債権者間で不平等な返済をしたりすると、後の破産手続きで問題視されて手続きが非常にややこしくなります。 弁護士の所に行きなさいと事前に振り分けるのは難しいですが、弁護士が最初から関わっていればこんなにややこしくならなかったのにという破産手続き事例は結構あります。

Q:過払いの問題では今、特定の法律事務所や司法書士事務所が、「あなたの借金戻ってきます」といったテレビCMを流したりしていますが、何か問題点はあるのでしょうか。

A:過払いの問題に携わっている弁護士の立場から言わせていただきますと、同じ過払い案件であっても、細かい論点が一杯ありまして、じっくりと主張立証すべきところを安易な和解を勧められて大幅に損をすることもあります。また、過払いの案件は受任するが債務の残る案件を受任してくれないとか、ヤミ金相手の案件を受けてくれないとか、事務所のやり方がお金もうけ主義的過ぎて、その後のその人の生活の再建を考えていないという問題点が指摘されています。日本弁護士連合会の中でもこのような事務所の事務処理のやり方は今問題になっています。

Q:平成10年から自殺件数が3万件を超えておりますが、自殺問題、鬱の問題など貧困問題はいろいろな影を落としていると思いますが、弁護士として心がけていること、そして、行政として支援が可能なことは。

A:自殺の原因の1番は健康上の問題、2番目か3番目に経済的な理由があって、確かに自殺や精神上の健康の問題と借金問題とは無関係ではないと思います。
景気がよくなることが一番だとは思いますが、個人でコントロールできるものではないので、そうなると、私も心掛けていることですが、単に借金の問題、法律問題だけを片付けているだけでは、その人の全体的ケアにはならない。だから気軽に、借金の問題だけでなくても電話してきていただけるよう、この問題と関係なくてもいいから電話してきてねという形で、話し相手になる、気軽に声を上げられる受け皿が必要じゃないでしょうか。
私もその一つになろうと思っているんですが、市民生活と密接に関わっている行政としても、そういう側面から、悩みを抱えている人を上手く察知して、上手く手をさしのべていく、そういう支援が必要だと思います。
具体的には何かの用事で、例えば、借金で苦しんでいたら税金とか健康保険料を払っていないとか、そういう問題で行政と接点ができますが、そこできっちりと滞納の背景を察知して、こんな相談できますよと、弁護士会、司法書士会などの無料相談に繋げていくということが必要だと思います。
窓口の職員さんには手間で負担でしょうけれど、弁護士会の相談に一緒に来ていただく、相談者にとってはすごく心強くて、話しやすいと思います。最初に相談した人がたらい回しではなく、最後まで、その経過を一緒に見ていてくれている。これは重要なことだと思います。 野洲市では、滞納の督促の中に法律相談の案内文書を一枚入れて送っているそうです。市民が相談に来るのを待つのではなく、積極的に大丈夫ですかと声をかけていく。そういう取り組みがもっともっと今後必要になってくると思います。 
あと、行政には消費者教育を推進していただきたいです。 これまで、県の消費生活センターとタイアップして、県内の各高校に行っていたんですが、最近数が減ってきています。その原因としては各学校のカリキュラムが厳しくて入れられないということがあるのですが、消費者教育は数学や英語に匹敵すると思っていますので、そういったことに取り組んで欲しいと思います。実際にあった事件を題材にお話しさせてもらえるので、生徒たちも関心を持って聴いてくれるようです。

佐口弁護士2

Q:昨年、自殺対策の取材で精神医療センターでお話を伺った時に、直接窓口を設けていても、なかなか精神科には来られないので、内科や歯科医でどうも顔色がおかしいなといった時に、そこで鬱病の検診を勧めてもらうといった、医師同士の連携をしていかなければとおっしゃっていましたが、多重債務者に対してもそういった連携をしていかなければならないんですね。

A:そのとおりです。関係機関の連携が重要だと思います。

Q:滋賀弁護士会として多重債務の問題には今後どのように対応されて行かれるのでしょうか。

A:滋賀弁護士会では、数年前から借金問題の相談は無料にしておりまして(個別に各事務所に相談される際は各事務所にお問い合わせ下さい)、より広報に力を入れるという課題はあるんですが、相談数は減ってきています。 相談という面で抜本的な策はないとすれば、多重債務者を生まない消費者教育、各機関との連携を図って行きたいと考えています。

Q:市町の役場での無料法律相談の予約がすぐに埋まってしまうなど、弁護士相談の人気は高いのですが、実際に頼もうとする方にとっては弁護士事務所の敷居は高いイメージがありますが。

A:弁護士会では無料相談を実施しており、そこで担当する弁護士は原則として依頼したいという希望があれは受任しなければならないという体制にしています。 また、司法書士会でも同じように無料相談窓口があると聞いています。
弁護士に相談して一番心配されるのが費用だと思いますが、法テラスの民事法律扶助制度がありまして、相談者が法律扶助を希望すれば、受ける弁護士は法律扶助を使わなければいけなくなっています。
この制度の一番のメリットは弁護士費用を少額の分割払いにすることが出来るということで、月5千円ずつの分割払いが多いです。破産手続きですと総額15~18万円で、これを月5千円ずつの分割で弁護士を使って手続きできることになります。
それから生活保護受給者ですと、その5千円の償還もしなくてよいという運用になっています。
市民が自治体の窓口に相談に来た時、こういう制度をレクチャーしていただけると上手く専門家に繋がると思います。

Q:この記事をご覧の皆さんへのメッセージをお願いします。

A:借金の問題は必ず解決します。お金の問題で自殺してしまうことほど悲しい話はないと思います。まずは相談してください。そこからでないと始まりませんから。 我々もたゆまない努力をしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

☆☆☆人権カレンダー10月☆☆☆

◎10月は里親月間、高年齢者雇用支援月間、臓器移植普及推進月間です

  • 1日法の日

「法の日」は1928年10月1日に陪審法が施行されたことにより、翌1929年から「司法記念日」と定められたことに由来します。また、1947年の10月1日は、最高裁判所発足後初めて最高裁判所で法廷が開かれた日です。
1959年に裁判所、検察庁、弁護士会の三者協議により提唱され、翌年の閣議了解で定められました。
この日から一週間を「法の日」週間とし、法の役割とその重要性を国民に理解してもらうことを目的として、全国各地で講演会、無料法律相談等各種行事が実施されます。

  • 1日国際高齢者デー

国連総会は1990年12月14日の決議によって、10月1日を「国際高齢者デー」に制定しました。これは、1982年の高齢者問題世界会議で採択され、同年に国連総会によって承認を得た「高齢化に関するウィーン国際行動計画」など、国連が主導してきたものを受けてのものです。

  • 4日世界ハビタット・デー

人間居住委員会の勧告に応じ、国連総会は1985年、10月の第一月曜日を「世界ハビタット・デー」に指定しました。世界ハビタット・デーがスタートした1986年は、この問題に関する初の国際会議「ハビタット:国連人間居住会議」(1976年、カナダ・バンクーバー)の10周年にあたる年でした。

  • 10日世界メンタルヘルスデー

1992年にNGO世界精神衛生連盟(WFMH)が、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、人々に体験発表の場を設けるために10日を世界メンタルヘルスデーと定めました。WHO(世界保健機構)も協賛し、国際デーとなりました。

  • 10日~17日男女共同参画社会をめざす「パートナーしがの強調週間」

※関連行事一覧はこちらから

■じんけん豆知識「高年齢者の雇用とシルバー人材センター」

10月は高年齢者雇用支援月間です。少子高齢化が進む中、元気な高齢者がその知識と経験を生かして働くことは地域社会にとってますます重要になっていくといえます。現在事業主は原則求人に際して年齢制限を設けてはならないとされていますが、中高年齢者の雇用情勢はまだまだ厳しいのが現実です。(滋賀県の21年度の55歳以上に対する有効求人倍率は全体が0.36に対して0.32でした)

そのような高齢者の就業を支援する組織として「シルバー人材センター」があります。みなさんは「シルバー人材センター」がいつ頃どのような経緯で作られたのかご存じでしょうか?

シルバー人材センターのさきがけとなったのは、1975年東京都で設立された「高齢者事業団」です。同事業団は「自主・自立、共働・共助」の理念を基本として、高年齢者がその能力と経験を生かしつつ、働くことで社会に貢献し、生きがいを得る機会を確保することを目的としていました。また同事業団の設立をきっかけに全国各地に広まっていきました。

その後第4次雇用対策基本計画(昭和54年~60年)で示された基本方針に沿って、国は高年齢者に対して就業機会を提供する団体を育成する自治体に対し、国庫補助を行うことを決めました。これを機に「高齢者事業団」などの名称は「シルバー人材センター」に統一され、事業がさらに拡大されました。そして1986年に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」によって高年齢者の就業機会を確保するために必要な措置を講ずるよう努めることが国および自治体の責務として位置づけられ、シルバー人材センターは法的に認められることとなったのです。

現在では各都道府県ごとに「シルバー人材センター連合会」がおかれ、短期的な就業を提供する他、ボランティア活動やシニアワークプログラム事業など様々な活動が行われています。

なお滋賀県では全市町にシルバー人材センターがあり、現在12000人以上の方が登録されています。健康で働く意欲と能力がある原則60歳以上の方でセンターの趣旨に賛同する方であればどなたでも会員登録ができ、仕事の提供以外にも講習会やワークショップ、サークル活動など色々なことが行われています。

登録・仕事の依頼はこちらから→(社)滋賀県シルバー人材センター連合会

■イベント・行事案内

県内外で開催される研修会、啓発イベント等を案内します。

県内

  • 「男女共同参画社会の実現に向けて」(資料等掲示)

期間:10月1日(金曜日)~10月31日(日曜日)
場所:県庁新館5階廊下「人権コーナー掲示板」

  • パートナーしがの強調週間パネル展

期間:10月12日(火曜日)~10月15日(金曜日)
場所:県庁渡り廊下ギャラリー

  • 農村漁村女と男(ひとひと)のフォーラム

日時:10月14日(水曜日)13時30分~15時30分
場所:県庁東館7F大会議室

各市町のイベントはこちらから

県外

  • 大阪人権博物館学芸員セミナー「西光万吉 -天皇制的社会への憧れ-」

日時:10月9日(土曜日)14時00分~
場所:研修室

  • 奈良県水平社博物館 教育支援企画展 「こんなん知ってた!?―はじめての部落問題―」

期間:9月22日(水曜日)~11月21日(日曜日)
場所:特別展示室

  • 舳松人権歴史館特別展シリーズ解放運動その1「泉野利喜蔵と水平社運動-人の世に熱あれ、人間に光あれ-」開催中

10月29日(金曜日)まで

  • 京都市「四字熟語人権マンガ」募集中!

人権について四字熟語(造語可)とマンガで表現した作品を募集
11月15日(月曜日)まで

編集後記

郵便制度の不正取引事件で逮捕された厚労省の局長の無罪が確定しました。私は1年3ヶ月という長い間無実を訴え続けた彼女の精神力は本当にすばらしいと思います。足利事件の菅谷さんと同様、冤罪によって失われる時間や精神的苦痛は計り知れず、その人の人権を著しく侵害するものであることは間違いありません。今後誰一人このような苦痛を味わうことがないように願うばかりです。

バックナンバー

編集・発行/滋賀県県民文化生活部人権施策推進課

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お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:cf00@pref.shiga.lg.jp
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