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「じんけん通信」(第29号)

「じんけん通信」は、県職員の人権意識の高揚と人権の視点に立った行政の一層の推進を図るために、人権施策推進課から定期的に発信してきたものですが、平成22年度からは、このホームページ上に公開していくこととしました。ブラウザの「お気に入り」に入れていただければ感激です。

じんけん通信

平成22年(2010年)9月(第29号)

  • 人権をもっと身近に学び、理解を深めていくために、国や県、市町などでは、さまざまな取り組みが行われています。啓発ポスターや人権作文、研修会、講演会などが行われており、皆さんも一度は目にされたり、参加したりといった経験がおありかと思います。
  • 毎回、さまざまな人権の分野で取り組んでおられる方々を訪問し、現場の声を届けていきたいと思います。どうか、よろしくお願いします。

特集 障害と人権

レインズシンボルマーク

9月は障害者雇用支援月間です。そこで今回は馬の調教助手をされていたときに落馬により脊椎を損傷され、現在は障害者乗馬・ホースセラピーの普及を進める
9月は障害者雇用支援月間です。そこで今回は馬の調教助手をされていたときに落馬により脊椎を損傷され、現在は障害者乗馬・ホースセラピーの普及を進めるReins(レインズ)の代表を務めておられる福留健一さんにお話を伺いました。

Q怪我をされてから今に至るまでのことや、感じられたことを聞かせてください。

A平成20年の9月に怪我をしてから5ヵ月くらいで退院しました。主治医から車イスの練習をしましょうと言われるのですが、自分ではまだ足が動くと信じて、「そんなことはない、歩く訓練をさせてくれ」とずっと言っていました。でも誰に聞いても「車イス」「車イス」というので、精神的に不安定になったときもありました。

Q突然の事故で障害を受け止められなかったんでしょうね。そんな状態からどう立ち直られたのですか?

A辛かったときに支えてくれたのが、家族や両親、同級生、先輩後輩、職場の上司でした。一時京都の病院にリハビリにも行っていましたが、距離的に離れているにもかかわらず、みんな励ましに来て、元気になるのを待っていると言ってくれました。その後守山の成人病センターに移してもらってからも、みんなが交代で遊びに来てくれました。
成人病センターではいろんな障害がある人20人くらいと一緒に過ごします。そうしたところでいろんな話をしていると、障害があっても何でもできるのだという気になってきました。また同じ脊椎損傷の人が車イスバスケをやっていたりするのを見て、自分は何をうじうじしていたのかと考え、その人たちのがんばりを見てなおさらやるしかないと思いました。いろんな支えと出会いがあって、ぐじぐじしていても足が動くわけではないという気持ちになれました。

Q障害者乗馬についてどのようにお知りになったのですか?

A車イス生活になると、馬に携わる仕事は100%できなくなり、普通にどこかで事務職で働くのかなと考えていました。 しかし、競走馬でなんとか社会貢献をしたいと考えておられたある調教師の方が、私が怪我したことを知って、「障害者乗馬をやらないか」と声をかけてくれました。調教師という立場上表立ってできない自分に代わって私に代表になって欲しいと言われたことで、全く知らない分野でしたが団体を立ち上げたのです。

Q仕事を始められてどうでしたか?

Aまさか馬に携わる仕事ができるとか馬にもう一回乗れるとは思っていなかったので、嬉しかったです。しかし「やったー」と思ったのも束の間、正直こんなに大変とは思いませんでした。でも栗東トレセンの調教師の方々や福永祐一騎手を始めとするJRAジョッキーや障害者乗馬団体や乗馬クラブや育成牧場関係の方々などたくさんの応援と協力を頂いています。また私が働けるように厩舎を改装したりしていただいたり、ガレージも車イスを置いて出入りできるようにしていただくなど、いい意味ですごく恵まれていると感じています。他に何の資格もなかったので、そういう声がなかったら就職難に陥っていたと思います。だからこういう機会とチャンスを与えてくださったことには応えていかないといけないと思っています。

Q障害者乗馬とはどのようなことをやるのですか。詳しくは解説をご覧ください

A自分は競走馬しか携わってなく、速く走る強い馬をつくることだけを考えてやっていたので、まさか馬が人を癒したり、障害のために体のバランスの維持回復に繋がるということは知らなかったので、聞いたときはびっくりしました。医者やリハビリの先生にはスポーツをしなさいといわれる反面、障害者には危険なので止めるように言われる方もおられて、なかなか広まらないのですが、中には乗馬の身体的精神的に与える療法がすごく効果があることに理解を示してくれる先生もおられます。それに対して海外では、障害者一人に対して馬が一頭、理学療法士、医師、乗馬インストラクターなど5人くらいが付き、3、4ヵ月のプログラムを組んで、身体的であれ精神的であれ馬に接しさせていくのです。そういうものがイギリス、フランスでは保険適用がされています。

乗馬風景

Qリハビリとして認められているのですね。

A車イスで足が動かないと関節がすぐに固まるので、それをみんなバスケをしたりテニスをしたり、スポーツをして血の流れをよくして、固まるのを防いでいます。馬に乗ると、足が下に下がり、ある程度立っている状態に近くなるので、それは維持回復にはすごくいいということが自分でも実感としてわかっています。馬に乗るときはバランスだけで支えます。ただ鞍さえ乗せれば、足は振れないようにマジックテープかなんかでくっつけます。実際動かすのはムチを使うか、自分の体のバランス移動だけです。乗って鍛えていけば腹筋とか背筋なども少しは回復できるみたいなのです。

Q他に現在されている活動はどういうもので、どんなところに苦労されていますか。

A枚方にセラピー牧場というのがありますが、そこは引きこもりとか不登校とか自閉症の子を対象に乗馬をやっています。真ん前に大学の病院があって、その院長の先生もリハビリ室の先生も理解を示してくれて、入院している人が馬を見に牧場に行くこともできるのです。
そこに限らず、車で10分、15分も行けば、意外と病院の周りに結構乗馬クラブはあるのですが、乗馬クラブの障害者乗馬に対する理解はまだまだというのが現状です。乗馬クラブの採算面の問題もあると思います。

Q実際にはどのような費用がかかるのですか?

A障害者乗馬をやるとき、僕は経験者だから、馬の危なさ、性格とかがわかっているので、鞍さえ固定できれば一人で乗れます。ただそういうことを何も知らない人は、絶対に前で馬を引っ張る人と落ちないように横にサイドウォーカーが2人付けないといけません。健常者なら1人の指導員が付いて教えればいいのですが、障害者の方には2~3人が付かなければなりません。つまりそれだけの人件費がかかり多額の活動資金が必要となります。そこで、国や地方に障害者乗馬のプラグラムのデータを持っていって話をし、助成金という形で補助をして頂ければ、馬の癒しの力を使った障害者乗馬やホースセラピーの活動を広げられ雇用促進にも繋がっていくと考えています。
北海道で毎年1回障害者乗馬大会をやっているところがありますが、障害者の方々が10~20人参加されていて、両親や友人、ボランティアや牧場スタッフの方々を入れると300~400人と多くの人達が参加する大きな大会となっています。 昨年から開催されているのですが、今年から町より助成金が出て町が協力してくれる大会となっています。 素晴らしいことですし、とても参考となる大会です。 このような大会を関西でも開催しなければと考えています。

Q場所の問題もありますよね。

A障害者乗馬の馬をいっぱい育成したからといって、4頭も5頭も引き受けてくれる乗馬クラブがないのです。乗馬クラブもやっぱり経営があるので1、2頭しか預けられないし、1、2頭ということは、そこに10人の障害者の子が来たとしても、じっくり乗せてあげられないのです。1つの乗馬クラブにそれ用の馬が10頭も20頭もいてくれたらそこに人を集めやすいけれども、維持ができないから、いろいろな乗馬クラブに少しずつ預かってもらって、この日は5名ならできるとか、月に1回障害者乗馬スクールをやってくれるところを増やしていくほうが今はいいのかと思っています。
ただなかなか難しいのは、人手はかかるし完全に安全なわけではないので、もし落ちたら誰が責任をとるのかということになります。だから障害者乗馬保険を作ったり、障害者乗馬インストラクターやホースセラピストを養成する学校や免許制度の確立などを行うことも重要だと考えています。そうすれば安心してできると思います。

Q企業や団体の協力についてはどういう状態ですか?

A スポンサー協力を得るには、ある程度きちんとした活動で、こういう需要があるというしっかりとしたデータが必要だし、そうでないとスポンサーにも付けないと思うのです。いいことだとみんな言ってくれるし、応援すると言うけれども、やはり事業として成り立つようにしないと継続的な協力ももらえません。
そして活動をやっていく上で問題になるのは、馬と人と場所です。全部が全部ボランティアではないので、給料を払わないといけないし、どこの会社でも人件費が一番かかると思います。一度インストラクターになってもこんな給料だったら他の仕事をしていた方がいいと思われると人も離れていくし、働いてくれるとなるとその人たちの生活の保障があって、住むところや交通のこととかを考えてあげないといけないわけです。

Q今後の活動予定や抱負などお聞かせ下さい。

A来年の10月9,10日に三木ホースランドパークというところで大きい障害者乗馬大会を開くことになりました。障害者乗馬を行ったり、一般の人を呼んで、馬の良さとか障害者乗馬やホースセラピーということをみんなに知ってもらおうというイベントをやろうということで、JRAD(日本障害者乗馬協会)と協力して大会を計画しています。
乗馬のオリンピック選手やパラリンピック選手に参加していただいたり、JRAのジョッキーにも参加してもらい、チャリティーイベントとか、元阪神タイガースの赤星選手に参加して頂きトークショーなどを企画し、一人でも多くの方々に障害者乗馬や馬の癒しの力を知ってもらうための大きな大会を開催したいと進めています。今からパンフレットやポスターなどを競馬ブックなどのメディアやグリーンチャンネル(競馬中継専用のケーブルテレビ)などにお願いしてPRしていこうかと思っています。

福留さん写真

障害者乗馬の拠点を関西に

こういう活動をしてメディアにふれると、障害を持っているお子さんのご両親からメールやお手紙をいただくのです。しかし「どこに行ったらやっているのですか」とか、「どこに行ったら障害者乗馬ができるのですか」と聞かれても、「どこどこにあってそこに行って下さい」とはすぐにお答えが出来ないのが現状で、情報収集に努めています。全国にも行なっているところはありますが、関西圏には少なく、情報収集に努め、皆さんの声にお応えできるよう活動していきます。しかし、メールとか手紙をいただく方は関西の人が結構多いので、関西にそういう拠点を1つ作りたいという目標も持っています。自分たちが自由に使え、本格的な障害者乗馬やセラピー乗馬に取り組める拠点をもっていたらと思うのですが、多額の資金が必要となるので、理解し資金協力をして頂けるように、まずはしっかりとした活動を広げたいと思っています。

なんとか活動を安定させるのに2,3年かかるのは覚悟しています。そうして、一人でも多くの障害者が馬に触れるチャンスを作れればと思っています。 こうした活動ももう少し簡単にいけるかと思っていました。しかし、ちょっとしたことで壁に当たることが度々で、これが本当に成功するのかどうか正直不安な要素がいっぱいですが、乗り越えたいと思っています。

☆☆☆人権カレンダー9月☆☆☆

◎9月は同和問題啓発強調月間、障害者雇用支援月間です

  • 8日国際識字デー

1965年のこの日、イランのバーレビ国王が軍事費の一部を識字教育に回す提案をしたことを記念しています。1990年に国連が国際デーとして定めました。

  • 10日世界自殺予防デー

10日~16日自殺予防週間

平成19年6月に閣議決定された「自殺総合対策大綱」において設定され、当該期間中における集中的な啓発事業等の実施を通じて、国民に自殺や精神疾患についての正しい知識を普及啓発し、これらに対する偏見をなくしていくとともに、命の大切さや自殺の危険を示すサイン、また危険に気づいたときの対応方法等について国民の理解の促進を図ることを目的としています。

  • 15日老人の日

15日~21日老人週間

1954年に「としよりの日」として制定されました。以前は国民の祝日である「敬老の日」でしたが、2001年の祝日法改正により2003年から敬老の日が第三月曜日となるのに先駆け、2002年から15日を「老人の日」、15~21日を「老人週間」としました。

  • 21日国際平和デー

1981年、国連総会は9月の通常総会開会日を「正式に国際平和デーとし、すべての国家と民族内で、またそれら相互の間で、平和という理念を称え、強化していく日とする」ことを宣言しました。そして1998年にも、通常総会の開会日を引き続き国際平和デーとして記念すべきことを再確認しました。

2001年9月7日には、国際平和デーを2002年から毎年9月21日とし、すべての人々の関心を喚起し、この日に平和を祝い、祈念することを決定しました総会は以後、この国際デーを全世界の停戦と非暴力の日とし、一日、戦争行為を中断するようすべての国家と人民に呼びかけていくものとすると宣言しています。また、加盟国や国連機関、地域機関、NGOに対して、この日を祝し、世界規模での停戦を確立するために国連と協力するよう呼びかけてもいます。

■じんけん豆知識障害者乗馬

今回のインタビューでは障害者乗馬をご紹介いただきましたが、「全然知らなかった」という方がほとんどではないでしょうか。そこで、ここでは少しだけ詳しい説明をしたいと思います。

障害者乗馬が本格的に始まったのは今世紀初頭のイギリスで、そこから欧州を中心に普及し、今では広くその意義が理解されるようになり、日本を含めた世界各国で行われています。

障害者乗馬には大きく分けて四つの側面があります。一つはレクリエーション(娯楽)としての側面、二つめはスポーツ(パラリンピックや世界選手権など)として、そして三つ目がセラピーとしての側面(治療やリハビリ)、最後が教育(不登校児のケアなど)としての側面です。

乗馬による身体的・精神的効果は大きく、治療の一つとして活用されています。

◎主な効果◎

身体的なもの…馬の動きに合わせ前後左右、上下に揺られ、無意識にバランスを取ろうとすることで、程よい全身運動となります。

  • 心身のリラックス
  • 筋力アップ
  • 平衡感覚の向上や姿勢の改善

精神的なもの…適度な揺れにより脳神経が刺激されたり、馬とのふれあいを通して、精神的によい効果があると科学的にも言われています。

  • 不安や多動を軽減させ、攻撃傾向を減少させる
  • 信頼感が生まれ、自己肯定感が増す
  • 積極的な社会性が発達

■イベント・行事案内

県内外で開催される研修会、啓発イベント等を案内します。

県内

「じんけんフェスタしが2010」開催迫る!!!

じんけんフェスタロゴです

先月号でもお知らせしましたが、「じんけんフェスタしが2010」を、9月11日の土曜日に野洲市総合体育館で開催します。

詳しくは、下記リンクをクリックしてください。

じんけんフェスタしが2010

県外

  • 大阪人権博物館

(1)学芸員セミナー「平塚らいてうー母性保護論争を読む」
日時:9月11日(土曜日)14時00分~16時00分
場所:研修室

(2)第65回特別展「大坂のキタとミナミ―社会・文化・身分―」
期間:9月7日~11月7日
料金:500円等(下記参照)
http://www.liberty.or.jp/exhibition/index.html

  • ヒューマンステージ・イン・キョウト2010(要申し込み9月30日まで)

日時:10月24日(日曜日)15時~17時
場所:京都会館第二ホール
内容:河口恭吾トーク&ライブ他(詳しくは下記参照)

  • 高麗美術館 特別企画展「写真絵はがき」の中の朝鮮民俗 100年前への時空の旅[1900-1945]

期間:8月21日~10月17日
料金:800円等(下記参照)

編集後記

改正臓器移植法が施行されて一ヶ月が経ち、書面による意思表示なしでの移植がこれまでに四例(八月末現在)行われました。個人的にはすぐにこれだけの適応例が出たことに純粋に驚いています。もちろん今回の改正に関しては賛否両論、様々な意見がありますし、子どもの移植や日本の移植医療全体についてなど、まだまだ議論されるべき点はたくさんあるでしょう。しかし一番大切なことは、自分に万が一のことがあったとき家族が判断に困らないよう、そして自分の意志がきちんと尊重されるように、日頃から関心を持って話し合っておくことです。みなさんもこの機会に一度話されてみてはいかがでしょうか。

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編集・発行/滋賀県県民文化生活部人権施策推進課

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