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多言語・翻訳アワー in 滋賀 #1「全国のガイドライン比較、言語対応の優先順位づくり」議事録

多言語・翻訳アワー in 滋賀 #1

滋賀県内に住む、また訪れる外国人が不自由なく生活・滞在するにあたって、彼らを支える翻訳者・通訳者が、これまでどのような困難・失敗に直面してきたのか、経験談に基づく共感によって、言語対応のあり方を模索しあう「多言語・翻訳アワー in 滋賀」。
第1回は、既存のガイドラインはどこまで実用的なのか、また現場の様々な模索や失敗について、互いの経験談を語り合いました。

  • 日時:平成29年5月20日(土曜)16時00分~18時30分
  • 場所:米原エンジンビル2階(米原市下多良1丁目2)
  • 参加者:13名(県内外国人相談員・国際交流員、文化財キュレーター・保存修理技師、外国人向けプロモーション支援事業者、県内ユニバーサルデザインアドバイザー、情報セキュリティスペシャリスト、市町行政職員)

意見交換の内容

1. 全国や身の回りにあるガイドラインは、どこまで実用的ですか?

全国には多言語対応や翻訳に関する、様々なガイドライン(指針)やマニュアル(手引き)があります。中にはヒント集という形で作っている地域もあります。そこで全国にどのようなガイドラインがあるのか、参加者の方々に読んでいただき、これらのガイドラインを実務で使ったことがあるか、そもそも知っていたのか、参加者の皆さんに尋ねました。

国が様々な多言語対応ガイドラインを作っていたこと、参加者の殆どが知りませんでした。

  • 私は国がこのようなガイドラインを定めていること自体正直知らなかったです。独自に用語を翻訳したものなどを使っていました。
  • 最近ある翻訳を受託したことがありますが、もしその業務に関連するガイドラインがあることを知っていたら、仕事の効率性が変わっていたかなと思いました。
  • 仕事で指定されたガイドラインを使ったことがありますが、個々の考え方を具体的に示してチェックリストでまとめられたものだったので、私が今までの実務で間違ってないか確認する用途で活用することができました。

ガイドラインやマニュアルがあれば便利だなと思ったこと

  • 観光客の方が、行く先々で地名などの表記が違っていたことから混乱されることがありました。
  • ブラジルの国際交流員の間でも、翻訳の際に辞書にない単語もいっぱい出てきますので、ガイドラインがあればよいと思います。特に行政用語の対訳表についてはあるといいなと話しています。

依頼する側がガイドラインやマニュアルを知らないと・・・

  • ガイドラインでは「やさしい日本語」の活用が謳われていながら、元の文章が「やさしい日本語」で作られることは少ないと感じます。翻訳を依頼する担当課へのガイドラインの周知働きかけも必要じゃないかな。
  • お寺や神社などとお付き合いさせていただくことが多いのですが、現状でこのような英語表記を必要だと思っておられる所はすごく少ないと感じています。「外国人が来られる機会が少ないから」と仰るんですけれども、多言語対応の意義が共有されていないように思います。

「言葉は生きもの」「ガイドラインが異なると…」ガイドラインを使った人たちの経験談

  • 一度参考にさせてもらったことはあるんですが、常に使っているわけではありません。毎日お客さん対応や翻訳に追われているので、色んなガイドラインを見て翻訳する余裕がありません。ネットで調べて、一番よく使われている訳語を探しています。
  • 仕事で観光庁のガイドラインを使ってほしいと依頼されたことがありますが、そのガイドラインがすごく重たいPDFファイルでした。わざわざプリントアウトして見ようという気持ちにならないのです。前に働いていた会社はオンラインで用語の対訳語が引き出せるデータベースがあったのですが、それに比べると非常に使いづらいです。
  • 日本に住んでいない、カナダ在住の方などに翻訳を頼むこともあるんですが、結局その人たち自身が思うルールで文章が作られることもあります。
  • 日常生活あるいは行政の場面では毎日状況が変化しているので、翻訳の現場では言葉もその都度ケースに応じて変えていることが多いです。言葉は生きものだと感じています。
  • ガイドラインごとに翻訳・多言語化の目的や対象は異なるものだと思うのですが、全く日本語がわからない人のためのガイドラインで作られたと思われる日本語が、日本語のわかるバイリンガルにとっては「これはおかしい」と感じる場面があります。
  • あるメディアからの依頼で英文での記事を書いたことがありますが、滋賀県では普段「Lake Biwa」という言葉が使われているのに、そのメディアの翻訳ガイドラインでは「Lake Biwako」となるらしく、Lake Biwa で慣れ親しんでいる身にとって疑問に感じました。

2. 状況が多様化するなか、現場はどのように対応していますか?

多言語・翻訳ガイドラインの多くは、誰や何を対象としているのかということが書かれてあり、長浜市や横浜市などでは、対象となる言語のほか「やさしい日本語」の活用が定められています。
一方滋賀県の外国人人口について、在住者と観光客とでは人口構成が大きく異なります。それも最近は特定の国に限らず多国籍化しており、それぞれの状況に応じてどのような翻訳・多言語対応を行っているのか、現場の声を聞いてみました。

国籍の多様化で、相談員も対応しきれなくなっている

  • 最近はブラジルだけでなく、ネパールやベトナムの方なども多く住み始めています。あまり日本語の理解できない方が多く、転出証明書の取り寄せや住民票の申請だけでも、封筒の絵を描いたり、身振り手振りの状態です。少しだけ日本語のわかる人が付き添いで来てくれることもありますが、それでも何か一つ説明するのにすごく苦労しています。
  • 最近も健康推進課から「子ども連れの外国人家族が来たのだが、予防接種に詳しい通訳さんはいないか」という相談がありました。海外で受けられた予防接種の手帳を持って来られて、日本だったらどの予防接種が必要なのかという相談だったのですが、教育委員会に行ったり市民活躍課に来たりで大変でした。

翻訳の多言語要請は増えても、県内で対応できる人材が確保できていない

  • 今年度になって国から、中国語や韓国語など英語以外の言語も翻訳対応するよう要請が来ています。でも実際その翻訳や通訳に基本的な知識がないと翻訳対応も難しいのですが、そういったスタッフの人材確保について、県内では重要性があまり認識されていません。
  • 以前外国人向けのネットアンケートを通じて、米原にあるお寺の紅葉の写真が話題になったことがあるんですが、春に外国人観光客が訪れて「紅葉がない」と言われたらどうしようかと周囲で話題になったことがありました。万が一紅葉を知らずに訪れた外国人に対して「なぜないのか」を外国語で説明できる人がいないのは、すごく大きなことだと思うんです。必要性を感じる人はいても、なかなかそこまで手が回らなかったり予算がなかったり。そういったところで難しいのが現状かなと感じます。

なぜポルトガル語だけ?なぜ英中韓だけ?

  • 庁内で翻訳の依頼が来るとき、税金を払いなさいとかゴミを捨てなさいといった文書の翻訳依頼は、アメリカの国際交流員には全く来ないのに、ブラジルの国際交流員には来ています。
  • 禁止のようなニュアンスになると、やたらとポルトガル語での翻訳依頼が多くなります。
  • 町中でも「この街は犯罪を許さない」という看板があって、下にはポルトガル語とスペイン語だけが書かれているんですが、英語とか中国語がないのはどうして?と疑問に思うことはあります。
  • 日本語と国際共通語としての英語の2言語を簡単な言葉で併記した方がわかりやすい場面が多いのに、「観光客向けならなんでも英語・中国語・韓国語」といった翻訳対応を求めてくる人が多いです。逆に日本人が海外に行ったとき、もし中国語・韓国語しかなかったら寂しいなと思わないんでしょうか。
  • 私が英語翻訳の仕事で心がけているのは「やさしい英語」。アメリカ人だけに訴えるなら、誰かネイティブのアメリカ人に格好良く書いてもらうのもいいと思うんですけど、イギリス人にとってはただのアメリカ英語にしか読めないんです。むしろ単純な中学英語ぐらいのレベルの英語で、タイやベトナムなど、ある程度どこの国の世界の人が見てもわかるような英語への翻訳を心がけています。英語と一口にいっても「やさしい英語」的なものとネイティブ表現というのは分けて考える必要はあるんじゃないかな。
  • ポルトガル語でもスペイン語でも、難しい言葉で文書を作ってもわからないと思うんですよね。意味は変えず、やさしい言葉に変える努力はしています。

多言語化によって分かりにくくなる場面も

  • 駅名標のサインなど遠目から見るような掲示物の場合、たくさん情報が書かれていて、何を見ればよいのかわからなくなってしまうことがあります。近くで見る場合であっても、急いでる場合だと探すことに時間がかかってしまうので、できるだけ情報が少ない方がよいです。
  • 学校からのお知らせも、翻訳文を追加することでたくさん情報を載せてしまうと、その文書をもらう生徒も疲れてしまうという話を聞きます。字ばかり見ていると読まないんでしょうね。却って次の日に持参しなきゃいけないものを持って来なかったり。結局大事なところだけを訳して送った方が伝わりやすいのかなと思ったりします。

日本語との併記が必要な場合

  • 主に学校では、毎年使うような文書はなるべく日本語版を併記して次の年に残していくんですけども、特定の方にしか送らない場合は、外国語だけにすることが多いです。
  • 私は、固定資産税のパンフレットなど、長い間同じものを使う場合は外国語だけにしています。…日本語を併記するかしないかは、ガイドラインではなく個々の現場で決めていますね。
  • 外国語だけで書いても伝わらない場合は、一緒に日本語を載せるようにしています。
  • 行政の現場では、滋賀県内ではブラジル人が多いことから、職員の中でも「外国語といえばポルトガル語」という認識が強いため、フィリピン人に誤ってポルトガル語の文書が届くことがあります。そういう時は、せめてタイトルだけでも日本語を併記しておくことで、誰か友達に聞いたり、文書を市役所に持ってきてくれれば翻訳対応もできるのですが。

翻訳を行うことの責任感、信頼関係

  • インターンで台湾の学生さんが実習に来られたとき、日本語がある程度喋れるという条件は付しているものの基本は英語で接する場面が多いのですが、大学で単位を取られたりすると聞くと、私たちが中途半端な英語で接すること、また中国語が分からないことにすごい責任を感じるんですね。
  • 業務でも、果たしてそれが正しく翻訳されているのか、確認する術がないことが多いです。簡単なものといっても意味を変えて翻訳ってするじゃないですか。その表現が果たして合ってるのかというのを、発注した側がチェックできないというのがすごく怖い。
  • 私の知り合いが、とあるお客さんから「ずっと使っていた翻訳会社さんの英訳文が、英語が分からないのでチェックせずに検収していたところ、外国人から見ればすごく崩れた英語だったことがわかり、クレームが入った。助けてほしい」という相談を受けたことがあるそうです。ある程度英語ができる人なら「ネイティブの人が入ってない」とか「チェックができてない」というのは分かると思うんですが、英語が並んでいればそれでOKという人は県内では多いんじゃないでしょうか。会社イメージに影響することだってあるのに…。それが他の言語になると、わかる人が少なくなるから、もうお手上げですよね。翻訳は、ただ言葉を変えるだけの
  • ポルトガル語もスペイン語でもそうなんですけれども、日本語とも両方翻訳ができるというのはなかなかいないですよね。滋賀県では育っていない。ある程度日本語が話せても、ポルトガル語はそうでもない外国籍の方もいるんです。
  • 日本人は、どんな翻訳を見せても(その内容がわからないからか)「おお、すごい!」と言われる。
  • ボランティアで病院の付き添いに行かれる方の話を聞くと、命を預かってしまうということの重責に耐えきれず続かないという声もよくお伺いします。
お問い合わせ
滋賀県総合企画部国際課
電話番号:077-528-3063
FAX番号:077-521-5030
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