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第1回森林づくりの費用負担を考える懇話会会議概要

■開催日時
平成16年5月13日(木曜日)17時30分〜19時30分 

■開催場所
滋賀県大津合同庁舎7A会議室 

■出席委員
植田委員、荻野委員、黒田委員、田中委員、新川委員、増田委員、三谷委員 
以上7名(五十音順、敬称略) 

■議題
1開会 
2琵琶湖環境部長あいさつ 
3懇話会設置の趣旨説明、委員・事務局紹介 
4会長の互選、副会長の指名について 
○会長の互選
懇話会設置要綱第4条の規定に基づき、委員の互選により、大阪府立大学経済学部教授の田中委員に決定○副会長の指名 
懇話会設置要綱第4条第4項の規定に基づき、会長の指名により、滋賀県立大学環境科学部教授の荻野委員に決定5これまでの検討経過と今後の進め方について 
6新たな費用負担について 
○「これまでの検討経過と今後の進め方について」、「新たな費用負担について」を一括して、
資料に基づいて事務局より説明

(会長)滋賀県の森林の現状で何が問題かという、問題のありかの認識が基本になると思う。例えば、県の行政としては、今まで補助金を投入するという形で進めてきたが、それでは少しぐあいが悪いといったことも言われている。今の滋賀県の森林整備のあり方についてどういう点が十分でないのか。今後どういうところを整備する必要があるのか。
(事務局)滋賀県の森林の状態ですが、森林整備の状況というのは70%の数字が出ていまして、3割ができていないということでお示しをさせていただいた。
これまでは林業という形で経営が成り立っていて、補助金で森林整備が十分できたという状況がありました。ところが、現在は木材価格の低迷で森林所有者の経営意欲が減退してしまい、放置されている森林が増えてきた状況があります。手を入れても、その投資が戻ってこないので、その点が放置の大きな原因であります。
そういう林業経営が成り立たないような森林が、今後、整備されない状況になるんではないかという危惧を持っています。その辺の整理を、どういうふうにしていくかというのも大事なことではないかという意見もあります。
また、林業という形で実際にやられているところはたくさんありますので、そういう人たちが意欲を持つような施策を展開しないといけないのではないか、両輪としてやっていくことが大事というように思っているところです。
(委員)保全のレベルをどういうふうに設定されるのか、県として目指される森林像みたいなもの、例えば県の中期計画をまとめられていますが、この中でもあいまいではっきりしていないと思うのですが、行政の担当者としては、どういう森林像を描けばいいというふうに思っておられるのか。
それから、それを前提として保全のための費用負担ということですが、試算というものがあるのかどうか。それと、県民との協働という話が出てますが、現在のボランティアの活動はどういう状況にあるのか。
それから、費用負担をいただくと、その費用について支出が当然あるわけですが、現在は森林保全で2つの造林公社が非常に大きな役割を果たしていると思います。ただし、木材価格の低迷もあり非常に大きな負債を抱えていると思うのですが、県民の方々に新たな負担を求めるとなりますと、造林公社の役割をどういうふうに見直すのか。それから、大きな負債につきましては、どういうふうに処分していこうとするのかというあたりもご説明申し上げないと、県民の理解というのは非常に得にくいと思います。
それから、森林環境税であるとか、水源かん養税であるとかというような、いろんな形で先行しているところもあるわけですが、他府県の状況、もっと言えば世界各国の状況というものを資料としていただければありがたい。さらに、水源ということでいきますと、現在下流域に水資源分担金なんかも求めているわけですが、その辺の資料をお示しいただきたいというふうに思います。
もう1点、県民理解のための基本的な考え方をどういうふうに展開するかというのは、この中では余り盛り込まれていないと思うのですが、その辺について具体的なお考えがあればお示しいただきたい。
(事務局)まず、森林のあり方はどんなものかということ、それと保全レベルはどの程度のレベルかということですが、この3月に森林づくり条例をつくらせていただきまして、多面的機能を最大限に発揮できるような森林づくりを提案させていただいています。
その中身と申しますと、人工林と天然林という区分にかかわってまいります。人工林につきましては、私たち人間の手で人間のための木材生産等々をやってきた場所でございますので、十分な手入れをしていきたいというふうに考えております。木材生産をやるところについては、十分な木材生産がやれるような集中投資をしていったらどうかと、それと間伐材の利用を図るといったところに持っていきたい。
どうしても経済性、採算性が成り立たない場所についてどうするかという話もあります。そういうところにつきましては、公的な管理も含めまして何らかの方法で今後整備を進めていって、なるべくコストのかからない整備の方向に持っていけたらと考えています。
天然林につきましては、里山と奥山に分かれます。里山につきましては、県民が参加でき、また県民の協働によって整備できるシステムづくりができないかと考えているところです。
奥山林につきましては、多様性と申しますか、なるべく生態系を維持しながら、森林病虫害等々に強い、または災害に強い森林を目指すというような形で、最低限の手入れをしながら保全に努めていきたいと、そういう形の森林像を考えているところです。
それから、試算ですが、これは、個々にご検討をいただきながら、次の機会にそういうものを出していきたいと考えてますので、ご容赦願いたいと思います。
それから、ボランティアの関係ですが、今、「淡海森林クラブ」という組織がありまして、約500名程度の組織になっております。各振興局単位で支部を持っていただきまして、年2回ずつぐらいの活動をやっていただいているという状況です。ボランティア的なところは、そこが核となりまして、今後、広げていきたいと考えているところです。
それから、造林公社のお話をされましたが、これにつきましては大きな債務を持っているということで、こちらも造林公社の経営ということで十分検討していかなければいけないということで、今年から、債務を償還するなり、造林公社の経営につきまして検討を始めているところですので、その検討結果と並行しながら、ご報告できるときには資料として出していきたいと考えております。
それから、他府県の状況につきましては、既に先行していろんな税をとっているところ、また税という条例をつくっておられるところは、高知県、岡山県、それから鳥取県の3県です。条例につきましては、北海道が森林づくり条例をつくっていますし、また長野県が今つくりかけています。これにつきましても、資料として次回に提出させていただきたいと思います。
世界各国の状況につきましては、次の機会ということでお願いしたいと思います。
下流県の分担金の状況につきましても、今のところ細かい資料を持っていませんので、次回に用意させていただきます。
また、県民参加の森づくりに対する県民の理解という形では、条例策定につきましてのPR等々をお願いする、それから今回の基本計画をつくるときにも県民の意見を聴く、そういう形で進めていきたいと考えております。
(委員)どういう森林をつくるのかということについては、従来型の木材生産を目的とするというよりは環境を重視する。特に琵琶湖を見据えたということは、琵琶湖を持っている滋賀県としては非常に適切な考え方だろうと私は思います。
条例のあらましの前のところに、「多面的機能」ということで1から6までを書いていただいている。木材の生産ということについて言うと、そのうちの1つです。6分の1ということではありませんが、多くの項目に対する注意が適切にされているということは大変大事なことだという気がします。
ただ、少し残念に思いますのは、実際に施策として考えるというときに、「森林・林業の現状と課題」ということを資料3でお出しいただいてますが、いきなり「森林資源」なんですね。森林というものが持っている環境、つまり水源を大事にするということだとすると、水源はどうあるべきかという、環境としての森林の状況が統計数値としては実はよくとらえられていない。いきなり森林資源で「森林面積」、その面積は所有区分で民有林、国有林、人工林、天然林ということになってしまって、これは少し残念だと思います。
にもかかわらず、里山、奥山、造林地ということがしっかりと見据えられているというのは大事なことだと思うのです。滋賀県は、先ほどご説明の中では、林業としてちゃんとやってきたというふうにおっしゃったのですけども、本当にそうだったのかという気がどうしてもあるのです。
滋賀県で本当に林業が林業として成り立ってきたのだろうか。これは少し議論があるところではあるのですが、むしろ滋賀県は林業に依拠しなくても、十分やっていけるだけ経済的な基盤は割としっかりした県であったと思うのです。
ですから、林業によって山からいきなり生活のための経済的な効果を生み出すものを求めるということはなく、どちらかというと、その財産を持っているのだという格好で山に投資をしてきた。だから、こんなにきれいな山ができているんだというふうに考えられるのではないかと思うのです。
それで考えてみると、従来型の林業をやっているということは、従来型の林業ができなくなったとしても、ある程度のところまで行くのではないかと思っていたのですが、実はそうではなくなってしまった。林業が不振になればなるほど山全体にかかる手がなくなってしまったので、琵琶湖を取り巻く森林の現状というのは、捨ててはおけないところまで来ていると考えないといけないと思うのです。
それは、林業振興をやれば直るというようなものではないような気がするのですが、そこのところも、資料3に出てくるのは、林業をどうすればいいのかというところに力点が置かれ過ぎているというふうな気がしてならないのです。
林業をどうするのかということよりは、環境としての森林をどうするのかということにもっと力点を持っていかないといけないだろう。つまり、ここのところを次々と見ていきましても、「2素材生産」「3森林所有者、林業就労者」をどうするのかということで全体の資料が終わるのですが、実は人の問題というのも山持ちさん−−森林所有者と林業に従事している方の問題−−これを林業問題として言ったら、滋賀県の木材生産の場合は17億だと。林業の文脈で語るとほとんど取るに足らんものになってしまうということになるだろうと思うのです。実は森林の問題というのは、そういう林業の問題としてではなくて、水をめぐって、水を介して上流と下流の問題だと、これはかなりはっきりしていると思うのです。
上流は、確かに森林所有者と林業就労者という形で問題が出ていますが、下流は、それと違った形で問題を呈出している。しかも、下流の住民からその山をちゃんとしろという声があるのです。だから、山持ちさんがこれでは林業ができないから何とかしてくれという声もあるのは確かですが、同時に下流の方が山を何とかしなければならないと。それは、まず最初に水を何とかしなければならないという形で出てくるのですが、もっと強い形でこれからの環境問題を考えていくときに、上流、下流の問題というのは出てくるというふうに思うのです。
ですから、そういうところでどういう人をつくるのか、どういう人によってそれがなされるのか。「県民全体の協働」という言葉を言われたのですが、県民協働は確かにそのとおりですけども、その県民がどういう県民であるのかということをしっかり見ていきますと、やはり上流、下流の問題というふうに意識していかないといけないと思うのです。
それで、どういう森林にしたらいいのか、どういう森林にしなければならないのかということの中で言いますと、もう1つ、やっぱり上流にある森林を下流がどう見るのかという視点をぜひとも入れる必要があるだろう。そういう意味で、山はそれぞれの地域における自然的な特徴がある、社会的な特徴があるというふうにおっしゃったのですけども、地域的な特徴というのを、例えばその地の土壌であるとか、気候であるとかといったようなことだけでなくて、そこに人々が何を求めるのか。従来型の言い方をすると、山の組織をどうするのかということで終わりだったのですけども、下流の人々の意見が地域の山の経営に反映するような仕組み、ぜひともそういうものを考えていく必要があるのではないかなと思うのです。
そういうことを意識して考えておかないと、この費用負担というのが県民平等にという税負担を求めるということになりますと、少し視野の広い議論をしておかないといけない。林業振興の林業の担い手のところの仕組みは変えずにやるのかということになりますと、その説得力は弱いものになってしまうのではないか。せっかく琵琶湖があるということを、しっかり見据えた議論をしなければならないと思うのです。
(事務局)林業という部分につきましては、概念的には従来の炭焼きから人工林という部分を意識してやったというイメージで林業というのを書いています。
この辺は、必ずしも山で食っていけるかという意味でなくて、木を植えてそこから何らかの収入を得たいという行為で、滋賀県はそれを当てにして生計を立てるというような県ではありませんが、余剰投資という部分で進んできています。
その余剰投資すら、いろんな環境から投資意欲そのものが減退してきたという状況にあり、そういう意味で林業という言葉を使っていますので、正確な使い方でないと認識しています。
(委員)余り山に縁のない一般消費者としては、滋賀県の今の危機的状況というのはよく伝わってこない。
プロの方から見られると、どこが危機的なのかわかると思うのですが、それを具体的に教えていただいて、このままほっておくと、どうなるのかということも見せていただきたい。
それと、林業県ですと施業マップというのがあるのです。それだと、同じ滋賀県の地図に、どこの施業が足らんのか、ここのところがある程度いけているというのが一目瞭然にわかりまして、例えば造林公社の持っているこのあたりが一番危機的状況だよというのが消費者にもわかるような地図があるのです。それを出していただきたいと思います。
(事務局)危機的状態がどういう状況なのかというお話がありましたので写真を。(出席者に写真コピー配付)人工林は放置しているとどうしても下草が生えないような状況になりますので、そういう状態を回避して、光を入れましてつくっていきたい。
「望ましい森林の姿」の写真は、単層林といわれています人工林、スギの林です。下草がしっかり生え、下層植生ができています。こういうところは、土砂の流出防止、それからスポンジ構造が十分にできている状況です。
それから、「放置された森林の状況」の写真は、伐採跡地に植林されたものですが、そこに光が入らなくなって下層植生がなくなっているという状態になっています。これが起きますと、水源かん養でありますスポンジと申します土壌が流出するようになり、このようになってくるという状況が見受けられますので、こういう状態は回避したいと思っています。
それから、「望ましい森林の姿(里山)」の写真は、昔は下草刈りとかで人がここに入ってきて、いろんな森林の幸を受けていたという状況です。それが放置されますと竹が侵入したり、過密化されたりして、やはり人を寄せつけない状況になる。だから、場所によっては、こういう森林や里山のつくり方というのは、下流の住民の方々がどういう森林を望むのかというのを視野に置きながら、どういう森林をつくっていくのかが一つ大きな問題になろうかと思います。
現在、こういう状況があり、何とかしなくてはいけないという危機感を持っているところです。
それから、施業マップというのは、森林簿というものをつくっており、どういう森林が、どういうところに配置されているかというような現状データはあります。また、それをお示しします。
(委員)林業のことにかなり重点がというお話はそのとおりだと思うのですが、民有林が90%を占めている状況の中で、費用負担を求めてそれを実際に使っていくにしても、森林所有者の理解と協力がなければ当然整備はできないわけです。
要は、民間の森林所有者の方の理解と協力を得ないと、森林整備はできませんから、そういう意味での林業の現状説明だったのかなという受けとめ方をしております。
(事務局)現実に、その森林を整備するときに森林所有者がありますので、当然その人たちが意欲を持ってやっていただかないといけないというのと、その理解がないとできないということでの現状もあります。また、実際にその林業がどうなっているか、また山がどうなっているかという部分でも。
だから、人間の手でつくった山を今後どうしていくかというのが一番問題のところだと認識していますので、私たちが人工林としてつくりました山を今後どういうふうな形で管理するなり、保全していくのか。その部分を琵琶湖の水源かん養とか、保全のためにどういうふうに提供できるのかということを考えていきたいと考えていますから、その両面があるということもご認識いただきたい。
(委員)結局、多面的機能ということ自体が森林の合意づくりという言葉と、森林整備にかかわっていると思うのですが、そうすると、そこに今言うように市民の費用負担というのがかかわってくるのです。
だから、そもそも最初にどれくらいやらなければいけないものがあるのか、というめどがつかないと、ただ単に費用負担と言われても難しいところがあります。市民が実際に森がどれだけやられているのかもよくわからないところで、その費用を負担するというところに結構厳しいものがあるのかなということです。
それから、費用負担したときに、循環型としてまた市民に還元されてくる、例えば間伐した間伐材が木炭となって僅かなお金でその木炭が使えるとか、循環型のところを示していかないと費用負担というのは非常に難しいということです。それから、下流域との幅、これも琵琶湖の水源ということから、もうちょっと広い観点からも考えてほしいと思います。
(会長)今日のお話を聞いて一つわかりにくかったのは、県民全体で費用負担をするというときに、県民全体が森林から計り知れない恩恵を享受していると、恐らく一般論としてそうだろうと思います。
そのときに、計り知れない恩恵というのをある程度計らないといけないような気がするのです。特に今日の資料でお出しいただいている評価額云々というのは理解はできますが、何十兆とか何千億といわれても、県民一人一人の感覚に合うような説明の仕方というのをどう工夫すればいいのかなと思います。
(事務局)今回の条例については、森林の多面的機能を持続的発揮するということと、県民全体で支える森づくりをするということで、琵琶湖の保全のため、それと県民の生活のためにするということで宣言させていただいた。また、森づくりも基本的には林業振興から多面的機能、例えば環境を重視したところにシフトしますよということで、はっきりとこの条例でうたいました。そこを私たちは根拠にして、今回の費用負担のことを言ったつもりでの話ですので、ご理解をお願いします。
その中で、やはり多面的機能の持続的発揮というものは、人間がつくってきた人工林として不適地もありますし、そういうところを自然林化することも必要であると思います。
それから、都市住民に還元するという意味では、里山をどう皆さん方に開放したらいいかということも、今後どんどん考えていきたいと思っております。
もう1点は、もりづくりの日とかもりづくり月間というところを中心にPRしながら、費用負担をいただくとすれば、そういう見えるところに使って皆さんに還元する、喜んでいただけるような森づくりを将来に位置づけたいと考えています。
それから、多面的機能の評価ですが、県民一人当たり49万円という数字を出しました。例えば、水質的なことを考えますと、酸性雨が降っています。それが森林土壌を通りますと、中性の水に置きかわるわけですが、そういうものを1立米に換算すると68円かかるということになります。
そうしますと、水道でそれを代替えしますと2億立米弱を滋賀県で使っている。それに68円を掛けますと約135億円、県民一人当たり1万円の効果があります。また、人間には呼吸がございます。呼吸はCO2に換算しますと1年間で350キロぐらいのCO2を出す。これを代替法でやりますと、1立米当たり1万2,700円ほどかかるのですが、県民一人当たりにしますと年間4,500円の回収費がかかります。これは森林が吸収している約5割弱のCO2になります。
そういうものも出せるわけですから、一つの方法かなと思います。
(委員)幾つかあるのですが、1つは、望ましい森林像というのでしょうか。資料で出ているのは、多面的機能の持続的発揮ということが一応の目標となっているように理解をしますが、森林は具体的にどんなふうになるかというのがないのに費用負担を要求するということはできない。
ですから、森林の具体的な像というものについて、私はもう少しサスティナブルな森林経営みたいな、林業として成り立つという意味じゃなくて、多面的機能の維持が持続的にできていくような森林を維持管理できることがわかる必要があるんじゃないかと思うのです。
それでいくと、税というふうにお考えですが、本当はこの税でやれることはすごく小さいことではないのかと。どの程度のことを一体されようと、つまり滋賀の森林を全部この税で立て直すということはあり得ないと思う。
ですから、正直に滋賀の森林の状態と、望ましい像との間のギャップからしたときに、この税はどういう意味を持ち得るのか。実態としてどれほどのことをその税が成すことになるのかということが県民にわからないまま公益的機能で結局金をとったとなるのは非常にまずいと思います。
納得して出すという状況をどうやってつくるかという観点からすると、やっぱり森林については前からすごいお金が入っている。それでもなかなかうまくいかないという状況があるので、全体像との関係でこの税に一体何を本当に期待されるのか、何を本当に役割として考えられるのかということが森林全体の中での明確な位置づけ方がないといけないという気がします。
これは簡単なことではなくて、日本全体でも私はそういうふうに理解しています。日本全体が森林のサスティナブルな経営をしようと思うと、非常に困難な状況がやっぱり実態としてあるわけです。しかしこういう取り組みをこういう形でやろうということについての一種の合意を得ないといけないので、その合意のための説明がきちっとできる状態、森林の状態としてもそうですし、お金の問題としても、やはり両方でないといけないというのが1つの点です。
もう1つの点は、公益的機能というふうに一般的に言って、金額で出すと何のこっちゃという感じになってしまう。公益的機能が我々のそれこそ生命にどんなにかかわっているのかというようなことが、もうちょっとわかる方がよいのではないかと思う。
また、地域間で同じように扱っていいのかどうか。上流と下流という話を聞くと、一律的な扱い方でいいのかどうか。つまり、森林の公益的機能ということを滋賀県民一般ということで言い切って、それで十分いいのかどうか。それなりに森林をめぐって地域間の利害の対立があるのかないのか。あるいは、その受益の程度にも物すごく違いがあるということになってくると、ちょっと気になるなと思うので、滋賀の県民みんなが森林の公益的機能ということで納得ということがないと、やっぱり負担ということにならないと思います。
3つ目は、この費用は本来だれが負担すべきかという一番の原則問題があると思います。なぜ県民が負担しないといけないのか。なぜ所有者ではないのか。負担できるか、できないかは別の問題です。
なぜかというと、例えばこれまで滋賀県民は森林の公益的機能を自然的な形で享受していた。それがある段階から享受できなくなった。もし公益的機能が壊れてきているということだったら、それはなぜ壊れてきたのかという問題があります。そうすると、一般の県民が壊したわけじゃない。
それから、もう1つ別の観点からは、森林に公益的機能を維持するためにいろんな施策をする。そうすると、森林の価値が上がるのか上がらないのかも知りたいわけですが、その価値はどこにいくのかという問題もあると思うのです。
ここはすごく大事な点で、私はこの議論にはどちらかというと賛成の方で、県民みんなが出すという、みんなで森をという議論は大いにあり得る議論だと思います。しかしみんなが納得できるためにも、基本の原則のところをやはり明確にしておかないといけない。特に森林を持っている人が何の制約もない、いつでも売れるというふうになっている状況のもとで、逆に言うと、その所有者としての責任を放置しているから公益的機能が落ちてきたんじゃないかという議論の立て方もあり得るわけです。その方が正論かもしれないという面があります。
ですので、そこの原則のところをきちっとした論理立てをしておくことが、もし新しい費用負担を考えているという場合には明確になると思います。やはり明確にするというのが、この場合非常に大事な点ではないかと。
もちろんその場合に、個人所有者の比率が非常に高いと、そういうことも踏まえて考える必要があるのだろうと思います。
(事務局)今まで山の管理がどのようにされてきたのかというところの理解としては、これはやっぱり林業生産の過程で管理がされてきたということだと思います。森林所有者が山に入り間伐をし、枝打ちをしたということで非常にきちんとした形で山が管理されてきたということだと思います。
今、その林業者が、林業の対象としての山の管理をするという状況がなくなってきて、特に滋賀県の場合は、非常に零細な林家が多いものですから、ほとんど山に入らなくなってきている。自分の山がどこにあるのかすらわからないという林家がたくさんあって、そういう状況が非常に顕著になってきております。そういう状況の中で、これからどう山を管理するのか。言いかえれば、林業としての山の管理以外の山の管理をどういう手法で見出していくのかというところに今突きつけられている課題が1つあると思います。
そういう課題に対して、我々が議論しようとしてきたのは、そこは林業として何とか林家の皆さんに頑張ってもらおうということで、随分と補助金を出して頑張ってきた。だけど、結果としていい成果は余りなかった。そういう現状を踏まえて、全く違う手法を見出すべきじゃないかと。そのときに、森林の持っている多面的機能をどう発揮するかというところで議論する余地があるんじゃないかと。
そうなりますと、そこは林家という個人の所有者にお願いするんじゃなくて、公がどう関与していくかという、そこの視点で多分議論する必要があるのだろうというふうに考えております。
そうなりますと、そこは林業の対象としての山の管理じゃないものですから、材を生産するような林業施業じゃない施業が出てまいりますし、同時に多面的機能を発揮しようとすれば、それは従来のような山の管理とは違う管理手法が多分要るのだろうという理解をしています。
もう少しわかりやすく言いますと、材を生産するときには、どれぐらいの面積にどれぐらいの材があれば一番いい材になるかというところがあるのだと思います。それはそれで山の管理としては一つの手法としてあったのですが、多面的機能という観点で見たときに、水源かん養をより高めようとすれば、従来のような材の生産としての機能よりも、もっとまばらにして、そこは下草をいっぱい生やしてと、そういう山の管理をした方が水源かん養としては非常に機能が高いと、そういうことが多分考えられるだろうと思います。
そうなってくると、実は森林所有者にある意味で不利益を与えるという形になるのだろうと思います。そこは自分が手を離していますからそうなるのですが、いずれにしても、森林所有者に材の生産を行った場合とは違う負担をかけることになります。その負担をかける分については、これは水の供給を受ける多くの人たちが一定の負担をすると、そういう論理はあるんじゃないかというふうに考えており、そこのところを多面的機能という言葉を使いつつ、広く負担をするという論理が議論できるんではないかということです。
もう1つ申し上げますと、滋賀県の山は全部そういう形で整備するというふうには考えておりません。当然ながら意欲的な林家の方が従来どおりの林業生産をやっておられて大丈夫だと思っております。それはそれでそういう形でやっていただき、同時に、ほとんど手を離されて荒れ放題になっているところについては、今のような手法を導入しながら新しい機能を発揮する山として整備をしていく。
その部分については一定の状況把握をしながら、その部分に見合う費用をどう確保していくのかと、そんなふうにご議論いただけるといいなと思っています。
(委員)大変よくわかりましたが、今のようなことは、マップのような格好ではっきりあるものなんですか。
この辺が今おっしゃったような状態でとか、それ以外の広大なエリアは従来どおりでとか、一種の森林管理方式を類型化して地域的に当てはめるということが本当は必要で、それが必要額の根拠づけになる。というのは、最初から新たな財源のための費用負担だと明確にうたっておられる。それはどういう必要性かということを明確に言って初めて財源調達だということにならないと、必要性のところが、こういう資料じゃ全然わからないわけです。恐らく金額としても推計はされておられるのだろうと思うのですが、それが森林像と結びついた形で提示されないといけないのではないか。
もう1つ申し上げると、林業の方はますますしんどくなるんじゃないかと思うので、一時的にこれによって何かをしてもまた状態は悪くなる。つまり、財政的なことでいくと最初の想定よりもっと必要額が増えてくるのではやっぱりまずいと思うのです。
持続可能な森林、あるいは森林経営のあり方、管理のあり方、こういうものが明示されて初めて必要額というものがあって、そうするとわかってくると思うので、それが明示されることは大変大事なことじゃないか。
(事務局)滋賀県の山の全体がどうなっているのかということの把握は十分できていないわけで、国もしていない状況です。どこの山が、どういうふうな整備水準になっているかというようなマップは残念ながら持っていません。そこまでの調査データというのは残念ながらありません。
ただ、滋賀県全体の山に、どこにどういう林が生えているかというところまではわかっています。どういう林分があって、例えばそこはスギが何年生で、ヒノキが何年生かというのはわかっていますが、その施業履歴までは森林組合が持っているところもありますし、ないところもあります。ただ、全体的に県が、ここの林は間伐を3回されて非常に健全な林ですよと、あるいは一遍もされていませんから、土砂の流亡があって、いつ災害が起こるかわかりませんよと、そういうのがあれば非常にわかりやすくてベストだと思うのですけども、残念ながらそのデータは持ち合わせていません。
整備70%の水準につきましても、ローカルのロケーションをきっちり把握してやっているというデータではありません。その辺が非常にもどかしいと言いますか難しい。
それで、施業履歴につきましては、かなり頻繁に調査をしないと、その山はいつに間伐されたかという積み重ねが要りますので、一遍やったらいいというものじゃないというところが非常に難しい部分があります。県がつかもうと思えば莫大な費用がかかるという部分がありますので、そういうデータがありませんというのが現状です。
(委員)これまで造林公社でやっておられたことの政策の転換といいますか、あるいは追加ということになるわけでしょう。となりますと、これまでの2つの造林公社の役割とか機能の見直しが必要なのかどうなのか。あるいは、これまでの事業の総括みたいなことをやっぱりお聞かせ願わないと、県民の方に新たな負担を求めるというようなことはなかなか踏み出せないですね。
今まではその2つの造林公社でずっとやってこられたのですから、そこのところをやっぱりお示しいただいた方がいいかなという気がしているのです。
(事務局)公社の問題につきましては、基本的には材の生産を目的にして運営してきたものですから、それは基本的にその精神で今後も運営していくことになると思います。
それと、全体としてどれだけ整備していない山があるのかということの量的な把握ができていないという意味では、実はお金の積算上、総額が出しにくいという点はあるのです。と同時に、その議論とは違う議論の仕方として、より多面的機能を発揮できるような森林整備というのは、どういう森林整備をしたらいいのか。そういう森林整備をするときに、どういうお金が要るのか。
それは逆の言い方をすると、木材生産の林業とはどれだけ施業の差が出てきて、所有者にどういう負担をかけることになるのかと、そういうふうな議論を別途森林審議会の中でご議論いただきながら、滋賀県の山全体を見たときに、どの辺までそういう整備をしていったらいいのかみたいなところから広げていただくという議論もあると思っています。
(会長)いろんな議論があると思います。ただ、時間の関係もありますので、今日はいろんな観点からご指摘をいただいたということで、整理をさせていただきます。
1つは環境と森林という−−この森林についての答申は多面的機能というのがキーワードになっているわけですが、ここで議論の軸になっているのは、いわゆる狭い意味の林業経営というよりは、むしろ環境の中で森林のあり方がどうなっているのか。今の滋賀県における森林のあり方と環境というのが、どういうふうなつながりがあって、それがどういうふうに暮らしと結びついているのかをできるだけ具体的に現状認識ができれば、恐らく議論がより進みやすいだろうということ。
もう1つは、森林の今の状況をこういうふうに変える必要があるというときの必要な施策をできるだけ具体的にお示しいただいて、今までの県の施策、あるいはそれに要した財源では賄い切れない。
つまり、こういう新しい施策はそれなりに必要であって、かつ県民の暮らしとどういうふうに結びついているのか、必要性ですとか、場合によっては緊急性ですとか、そういうものを少しお示しいただけるのであれば、なお議論はしやすいだろうと。そういう点で、新しい施策をとるということに関して、できるだけ具体的な、あるいはより説得的な材料があればいいなという思いがしています。
3つ目は、新たな施策、新たな事業をするときに、どういう費用負担をするのかということで、結局、全体が負担するという形になっているわけですが、その結論に至るまでのプロセス、つまり、なぜ全体が負担しないといけないのか、そのプロセスをもう少し丁寧に導くような資料なり議論ができればと思います。
そういう意味で、例えば新たな負担の使途等について、この次に議論が予定されていますが、基本的な現状認識をもう少し固めつつ議論をするし、必要な資料等をご準備いただければと思います。
この次も少し議論をして、仮にそれなりの負担の正当性と必要性があるのであれば、その使い道はどうするのかといった議論にまで進めればと考えています。