文字サイズ

近江の山の神行事

  • 名称 近江の山の神行事
  • 所在地 県内一円
  • 内容

近江は、山の神の宝庫とされるほど濃密に行事が伝承されている地域である。山の神行事は大別して2種あり、農民が年頭に稲作など作物の豊作を祈願するものと、薪炭・採石・猟師などを生業とする山の民が祭る山の神行事とがある。
豊作祈願の山の神祭りでは、行事を行うのが個家、講、組、カイト、ムラ(大字)などを単位とし、ムラ神主や当番が主になって準備する。一般に山の神は女性とされるが、雄松雌松の股木で男女の神体を作り、左縄で太い注連縄を編み、藁つと、竹を編んだ膳を作り、種々の神饌を調える。神饌は、餅・シトギ・飯・甘酒・干柿・栗・榧の実・山芋・野老(ところ)・みかん・大豆・大根・鰯などである。行事は未明に始まり、夜明け頃に終了する。大火を焚き、注連縄を張り渡して鉤と呼ぶ木の枝を参加者がてんでに掛け「早稲もよかれ中手もよかれ」などの唱え言を唱和し豊作を引き寄せる。そのあと餅や鰯を焼いて食べる。
これに対し、山の民の行事は、生業としての山仕事が衰退していることから行事も簡略化される傾向にある。ヤマコ、山の口講などと呼ばれるように、春は山の入り口へ行って柴を1束して戻り、翌日から山に入ることができる日で、秋はその日以後山に入らない。講組織などをとり、当番の家で掛け軸を掛けて祭りしたあと直会の会食が主となり、その際に山仕事の賃金などの相談もする。

  • 時期と場所

行事の時期は、農民が豊作を祈る山の神祭りでは、正月または2月の上旬(3日、5日、6日、7日、9日)の夜明け前、山仕事をする人が祭る山の神は、雪が融けて山に入る前の2月または3月、降雪で山に入れなくなる前の11月または12月(いずれも9日が多い)に各1回催す。
場所については、豊作祈願の山の神祭りは、地域の水田を潤す小川の源流近くで、大木や岩石の前の広場を祭場とする。山仕事をする人は、山の神の入り口へ参り、当屋で掛け軸を掛けて山の神祭りと直会をする。
山の神行事は、組やカイトという小規模の単位で伝承されており、農村部の高齢化の進行や離農、林業の衰退などの影響を受け、行事は簡略化や衰退の傾向が急速に高まっているが、素朴な自然神信仰に基づく県民の信仰生活を伝える貴重な無形の民俗文化財である。行事が伝承されている間に記録を作成して保存をはかる必要がある。

山の神湖南市
山の神(湖南市)
山の神甲賀市
山の神(甲賀市)
山の神東近江市
山の神(東近江市)