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銅水瓶

銅水瓶
  • 名称:銅水瓶【どうすいびょう】(寛正六年の刻銘がある)
  • 員数:1口
  • 所有者:己爾乃神社
  • 所有者の所在地:守山市洲本町2322
  • 所在地:県立琵琶湖文化館
  • 法量:総高25.0センチメートル、胴部径14.1センチメートル
  • 品質形状:銅製鋳造
  • 時代:室町時代(寛正6年=1465)
  • 説明

水瓶は古来から僧侶必須の持物とされ、当初は飲料水や手洗水の容器であったものが、後に仏前に浄水を供えるための仏具としても用いられるようになる。本品は本体部に別製の注口、鈕付き蓋、把手を取り付ける。本体は台脚とともに一鋳製とし、底部には別製の円形銅板を嵌める。胴部に記された刻銘により、寛正6年(1465)に、己爾乃御前社の神宮寺であった玉林寺(現在は廃絶)に施入されたことが判明し、来歴が明らかな基準作として貴重である。
下膨れの胴部と大きく開いた朝顔形の口に代表される形態は、本品の特徴で、このような形式の器は、中国の元・明代に製作された青白磁や色絵磁器にしばしば見られ、本品もこれら渡来磁器の影響を受けて製作されたことが指摘されている。とりわけ、景徳鎮窯を中心に産出され、わが国にも少なからず舶載された仙盞瓶と呼ばれる形式の水注と類似している。なお、これと同形の瓶は、禅宗寺院で催される古式の喫茶儀礼において、茶礼道具の一つである浄瓶として現在も使用されている。本品成立の契機として、中国より喫茶の風習がもたらされたことも一つの要因として考えられる。
装飾を一切抑え、水瓶としての実用性に徹した分、簡素で力強い造形を示しており、この形式の水瓶では特に作域が秀でている。また、同形式の水瓶のなかでも最古の紀年銘を有する点、評価できる。