里内文庫は現在の栗東市手原に設立された私立図書館で、明治43年(1910)から昭和21年(1956)にかけて公共図書館として活動した。明治末期から大正期にかけて、本館での図書公開はもとより巡回文庫や各種展覧会、講演会、講習会などの社会教育活動に力を注ぎ、「地方改良運動」の模範とされた県下有数の私立図書館である。
所蔵資料も多岐にわたり、古文書・古典籍・絵図・浮世絵版画・碑文拓本・新聞原紙・ポスターなど近江の地方史資料が豊富なことが最大の特徴であった。図書館としての廃館前後に一般書籍の多くは売却されたが、地方史資料の大半は保存され、設立者・里内勝治郎の死後遺族らによって栗東市に寄贈されている。
栗東を中心とする豊富な近江南部地域の近世史料、及びあらゆる分野と地域にわたる滋賀県の近代史資料は他に存在しない貴重なものばかりである。一収集家のコレクションとして散逸少なく良くまとまっており、地方歴史資料の宝庫として、また明治期の図書館史資料として全国的にも希有な存在であり、学術的価値が高い。