滋賀県における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応ハンドブック 〜障害のある人により良い応対をするために〜 目 次   1.障害者差別解消法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1      2.障害のある人への応対の基本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2   3.障害への理解   (1)視覚障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3   (2)聴覚・言語障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3   (3)肢体不自由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5   (4)内部障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6   (5)知的障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7   (6)発達障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8   (7)精神障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8   (8)高次脳機能障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10   (9)難病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10   資料    障害のある人への配慮のチェックリスト・・・・・・・・・・・・・・・・12 p1 1.障害者差別解消法について (1)障害者差別解消法の趣旨  障害のある人が日常生活や社会生活で受けるさまざまな制限は、心身の機能の障害だけが原因ではなく、障害のある人が利用しにくい施設や制度、障害のある人の存在を意識していない慣習、文化など、障害のある人を暮らしにくく、生きにくくしている社会の壁(社会的障壁)によって生じるものです。  このため、障害者差別解消法では、行政機関や事業者による障害を理由とした「不当な差別的取扱い」を禁止し、負担になり過ぎない範囲で「合理的配慮」を提供することを定め、すべての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。 (2)不当な差別的取扱いと合理的配慮 〔不当な差別的取扱い〕  障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害のない人に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害のある人の権利利益を侵害することをいいます。  この法律では、行政機関や事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。  また、正当な理由があると判断した場合は、その理由を説明し、理解を得るよう努めることが大切です。 〔合理的配慮〕  障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うことをいいます。  この法律では、行政機関や事業者に対して、障害のある人から社会的障壁を取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたとき、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者については対応に努めること)を求めています。  また、重すぎる負担があるときには、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話し合い、理解を得るよう努めることが大切です。   役所(国の行政機関・地方公共団体等) 不当な差別的取扱いしてはいけない 合理的配慮しなければならない 会社・お店など(民間事業者) 不当な差別的取扱いしてはいけない 合理的配慮するように努力 p2 2.障害のある人への応対の基本 (1)コミュニケーションを大切にします ・コミュニケーションが難しいと思われる場合でも、敬遠したり分かったふりをせず、「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」相手の意思を確認し、信頼感の持てる対応を心がけます。 ・相手の困っていることを丁寧に聞き、誠実に対応します。 (2)相手の「人格」を尊重し、相手の立場に立って応対します  ・笑顔で応対します。  ・相手の立場に立って「明るく」「ていねいに」分かりやすい応対を心がけます。  ・介助の人や手話通訳の人等ではなく、障害のある人本人に直接応対するようにします。 ・何らかの配慮が必要と思う場合でも、思い込みや押し付けではなく、本人が必要と考えていることを確認します。 (3)障害の有無や種類に関わらず、困っている人には進んで声をかけます ・窓口を訪れる人の障害の有無や種類は明確でないため、常に来訪者の中に障害のある人も含まれていることを念頭に置いて、困っていそうな状況が見受けられたら、速やかに適切な対応をするようにします。  ・障害の種類や内容を問うのではなく、「どのようなお手伝いが必要か」を本人にたずねます。 (4)柔軟な応対を心がけます  ・相手の話を良く聞き、訪問目的を的確に把握し、「たらい回し」にしないようにします。  ・応対方法がよく分からないときには、一人で抱えず周囲に協力を求めます。   (5)不快になる言葉は使いません  ・差別的な言葉はもとより、不快に感じられる言葉や子ども扱いした言葉は使いません。   (6)プライバシーには立ち入りません  ・障害の原因や内容等について、必要がない事柄については聞いたりしません。  ・仕事上知り得た個人の情報については、守秘義務を守ります。 p3 3. 障害への理解 (1)視覚障害  ・視覚障害のある人の中には、全く見えない人と見えにくい人がいます。 ・見えにくい人の中には、細部がよく分からない、光がまぶしい、暗いところで見えにくい、見える範囲が狭い(視野の一部が欠けたり、望遠鏡でのぞいているような見え方)などの人がいます。 【主な特徴】  ○ 一人で移動することが困難です。   慣れていない場所では、一人で移動することは困難です。  ○ 音声を中心に情報を得ています。   目から情報が得にくいため、音声や手で触ることなどにより情報を入手しています。  ○ 文字の読み書きが困難です。   文書を読むことや書類に文字を記入することが難しい人が多くいます。 【コミュニケーションの留意点】  ■ こちらから声をかけます ・周りの状況が分からないため、相手から声をかけられなければ、会話を始めることができないことがあります。  ・まず、「○○課の○○です」と名乗ってから会話を始めます。  ■ 指示語は使いません  ・「こちら」、「あちら」、「これ」、「それ」などの指示語では、「どこか」、「何か」が分かりません。  ・場所は、「30 センチ右」、「2歩前」など、物は「○○の申請書」など具体的に説明します。  ・場合によっては、相手の了解を得た上で、手を添え、物に触れてもらい、説明します。  ■ 移動の際には誘導(付添い)を行います  ・白杖を持っていたり、盲導犬をつれている方でも援助の必要なことが多いです。  ・まず、どのような援助が必要か確認してください。  ・誘導するときは、肘につかまってもらい、誘導する人は、相手の歩行速度に合わせて、半歩程度横前を歩くというのが基本です。  ・周囲の状況を伝えるときは、「右に曲がります」「上りの階段です」などと、具体的に伝えてください。 (2)聴覚・言語障害  ・聴覚障害のある人の中には、全く聞こえない人と聞こえにくい人がいます。  ・さらに、言語障害を伴う人とほとんど伴わない人がいます。  ・言語障害のある人は、その原因によって、聴覚障害を伴う場合があります。 【主な特徴】  ○ 外見から分かりにくい。  外見からは聞こえないことが分かりにくいため、挨拶したのに返事がないなど誤解されることが p4 あります。  ○ 視覚を中心に情報を得ています。   音や声による情報が得にくく、文字や図などの視覚により情報を入手しています。  ○ 声に出して話せても聞こえているとは限りません。  聴覚障害のある人の中には、声に出して話せる人もいますが、相手の話は聞こえていない場合があります。  ○ 補聴器をつけても会話が通じるとは限りません。  補聴器をつけている人もいますが、補聴器で音を大きくしても、明瞭に聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報で内容を補っている人も多くいます。 【コミュニケーションの留意点】  ■ コミュニケーションの方法を確認します ・聴覚障害のある人との会話には、手話、指文字、筆談、口話(こうわ)、読話(どくわ)などの方法があります。 ・人により、コミュニケーション方法は異なるので、どのような方法が良いか、本人の意向を確認します。  ■ 聞き取りにくい場合は確認します  ・言語障害のある人への対応は、言葉の一つ一つを聞き分けることが必要です。 ・聞き取れないときは、分かったふりをせず、聞き返したり、紙などに書いてもらい、内容を確認します。 (聴覚障害のある人との会話について)  1. 手話  言葉を音声ではなく、手や指、体などの動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語であり、手話を使う聾(ろう)者にとって聞こえる人たちの音声言語と同様に、必要な情報獲得とコミュニケーションの手段として大切に守られてきました。  聴覚障害のある人たちの間で自然に生まれ、国による標準手話の確定などを通じて発展してきましたが、地方によって表現の仕方が異なるものがあります。  2.その他のコミュニケーション方法  ◆ 指文字  指の形で「あいうえお〜」を一文字ずつ表すものです。未だ手話になっていない、新しい単語や固有名詞などを表すのに使います。通常は、手話と組み合わせて使用します。  ◆ 筆談  メモ用紙や簡易筆談器などに、文字を書いて伝える方法です。パソコンや携帯電話の画面上で言葉をやりとりする方法もあります。  ◆ 口話・読話  相手の口の動きを読み取る方法です。口の動きが分かるよう正面からはっきりゆっくり話すことが必要です。口の形が似ている言葉は区別がつかないので、言葉を言い換えたり、文字で書くなどして補います。 p5 <盲ろう重複の障害のある人とのコミュニケーション方法について> ・障害になった経緯や程度により、個別性が高く、コミュニケーション方法が多様であることが特徴です。  ・急かさず、ゆっくりと相手のペースに合わせてコミュニケーションを行います。  @ 最初に、相手の手の甲、あるいは腕に軽く触れて、担当職員がそばにいることを伝えます。   触れることが盲ろう重複の障害のある人に安心感を与えます。 A 全く見えないが少しは聴こえる、全く聴こえないが少しは見える、全く見えない、聴こえないの状況を確認します(盲ろう者通訳・介助員が同行していれば、盲ろう者通訳・介助員から   情報を得ます。)。 B 全く見えないが少しは聴こえる(聴こえが残っている)人には、聞こえる耳の傍ではっきりと話します(声の大きさはその人に合わせます。)。全く聴こえないが少しは見える(視力が残っている)人には、鉛筆やボールペンは、薄くて見えにくく、読むことができないので、中字、あるいは太字のマーカーを使って、少し大きめに楷書体で書きます。全く見えない、聴こえない人には、本人の手のひらに一文字ずつ平仮名、あるいはカタカナで書く(手書き文字という)とコミュニケーションをとることができます。 (3)肢体不自由 ・ 肢体不自由のある人の中には、上肢や下肢に機能障害のある人、座ったり立ったりする姿勢保持が困難な人、脳性マヒの人などがいます。 ・これらの人の中には、書類の記入などの細かい作業が困難な人、身体にマヒのある人、自分の意思と関係なく身体が動く不随意運動を伴う人などがいます。 ・移動については、杖や松葉杖を使用する人、義手・義足を使用する人、自力走行や電動の車いすを使用する人などがいます。 ・病気や事故で脳が損傷を受けた人の中には、身体のマヒや機能障害に加えて、言葉の不自由さや記憶力の低下、感情の不安定さなどを伴う人もいます。 【主な特徴】  ○ 移動に制約のある人もいます。  下肢に障害のある人の中には、段差や階段、手動ドアなどがあると、一人では進めない人や歩行が不安定で転倒しやすい人もいます。車いすを使用している人は、高い所には手が届きにくく、床にあるものは拾いにくいです。  ○ 文字の記入が困難な人もいます。  手にマヒのある人や不随意運動を伴う人などは、文字を記入できなかったり、狭いスペースに記入することが困難です。  ○ 体温調節が困難な人もいます。  脊髄を損傷した人は、手足が動かないだけでなく、感覚もなくなり、周囲の温度に応じた体温調節が困難です。  ○ 話すことが困難な人もいます。  脳性マヒの人の中には、発語の障害に加え、顔や手足などが自分の思いとは関係なく動いてしまうため、自分の意思を伝えにくい人もいます。 p6 【コミュニケーションの留意点】  ■車いすを使用している人の視線に合わせます ・車いすを使用している場合、立った姿勢で話されると上から見下ろされる感じがして、身体的・心理的に負担になるので、かがんで同じ目線で話すようにします。  ■聞き取りにくい場合は確認します  ・聞き取りにくいときは、分かったふりをせず、一語一語確認するようにします。  ■負担をかけない対応を心がけます。  ・手に障害のある方には、本人の求めに応じて、書類などの代筆を行います。  ・足に障害のある方には、椅子等の配慮を行います。 (4)内部障害 ・内部障害とは、内臓機能の障害であり、身体障害者福祉法では心臓機能、じん臓機能、呼吸器機能、ぼうこう又は直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能、肝臓機能の7種類の機能障害と定められています。  ◆ 心臓機能障害  不整脈、狭心症、心筋症などのために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカーなどを使用している人もいます。    ◆ じん臓機能障害   じん機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している人もいます。    ◆ 呼吸器機能障害  呼吸器系の病気により呼吸器機能が低下した障害で、酸素ボンベを携帯したり、人工呼吸器(ベンチレーター)を使用している人もいます。  ◆ ぼうこう・直腸機能障害   ぼうこう疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストマ)を造設している人もいます。  ◆ 小腸機能障害   小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人もいます。  ◆ ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害   HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウイルス剤を服薬している人です。  ◆ 肝臓機能障害   ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などにより、肝臓機能が低下した障害で、肝臓移植を受け、抗免疫療法を実施している人もいます。 【主な特徴】  ○ 外見から分かりにくい。   p7 外見から分からないため、電車やバスの優先席に座っても、周囲の理解が得られないなど、心理的ストレスを受けやすい状況にあります。  ○ 疲れやすい。   障害のある臓器だけではなく、全身の状態が低下しているため、体力がなく、疲れやすい状況にあり、重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動が制限されます。  ○ 携帯電話の影響が懸念される人もいます。   心臓機能障害で心臓ぺースメーカーを埋め込んでいる人は、携帯電話から発せられる電磁波などの影響を受けると誤作動する恐れがあるので、配慮が必要です。  ○ タバコの煙が苦しい人もいます。   呼吸器機能障害のある人の中には、タバコの煙が苦しい人もいます。  ○トイレに不自由されている人もいます。   ぼうこう・直腸機能障害で人工肛門や人工ぼうこうを使用されている人(オストメイト)は、排せつ物を処理できるオストメイト用のトイレが必要です。 【コミュニケーションの留意点】  ■ 負担をかけない対応を心がけます ・内部障害のある人は、疲労感がたまり、集中力や根気が続きにくいなど、外見からは分かりにくい不便さを抱えていることを理解し、できるだけ負担をかけない対応を心がけます。 (5)知的障害 ・先天的又は発達期において脳に何らかの障害が生じたため、知的な遅れと社会生活への適応のしにくさがあります。 ・障害の状態によっては、常に同伴者と行動される方もいますが、会社で働いている人も大勢います。 【主な特徴】  ○ 慣れていることやパターンが決まっていることは見通しがつくので、問題なく行動できます。  ○ 初めてのことでも、やり方が分かると、丁寧に行うことができます。 ○ 未経験なことや慣れない場所、初めて会う人とのやりとりでは大きな不安を感じてうまく行動できないことがあります。  ○ 一度に多くのことを伝えられると混乱する場合があります。  ○ 「何に困っていて、どうしたいのか」を上手く伝えられない場合があります。 【コミュニケーションの留意点】  ■ 具体的に分かりやすく伝えます ・案内板や説明資料には、漢字にふりがなを振るとともに、抽象的な言葉は避け、短い文章で、絵や図を使って、視覚的に分かりやすくします。 ・例えば、「向こうの窓口」ではなく、「2番窓口」、「少し待ってください」ではなく、時計を指差して「10分待ってください」、「長い針がここにくるまで待ってください」など、具体的に伝えます。  ■ ゆっくり、やさしい言葉で、優しく丁寧に伝えます ・一度にたくさん言われたり、強い口調で話しかけられると、どうして良いか分からなくなりま p8 す。  ・一度にたくさん言わずにゆっくりと、小さく区切って、丁寧に説明します。 ・混乱している人や上手く言葉を発することができない人には、ゆっくり考えて良いことを伝えます。 ・困っている人を見かけたら、「どうしましたか?」、「何かお手伝いしましょうか?」と優しく話しかけます。 (6)発達障害 ・発達障害とは、広汎性発達障害(自閉症など)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、脳機能の発達に関係する障害です。 ・他人との関係づくりやコミュニケーションなどが苦手ですが、優れた能力が発揮されている場合もあり、個人差が大きいことが特徴と言える障害です。 【主な特徴】 ○ 周囲の状況を読み取ったり、人の表情から気持ちを読み取ったりすることが苦手な人が多く  います。  ○ 他人との関係づくりやコミュニケーションなどが苦手な人も多くいます。  ○ 遠回しな言い方や曖昧な表現は理解しにくい人もいます。  ○ 順序立てて、論理的に話すことが苦手な人もいます。 ○ 興味のあることはとても詳しく知っており、記憶力もありますが、興味のないことには理解を示さない人も多くいます。  ○ 礼儀正しく丁寧な表現をする人もいます。  ○ 読むことや書くこと、計算することなどのうち、いずれかだけが難しいという人もいます。  ○ そわそわと落ち着かない様子の人もいます。 【コミュニケーションの留意点】  ■ 笑顔で対応します  ・不安の強い人や、感覚が過敏な人もいますので、適度な声の大きさで、笑顔で対応します。  ■ 具体的に分かりやすく伝えます  ・抽象的な表現や否定的な表現は苦手です。  ・具体的に「どうしたら良いか」を伝えます。  ・紙に図や文字を書いて、視覚的に説明すると、一層分かりやすくなります。  ■ クールダウンの時間をとります ・発達障害のある人の中には、たくさんの人がいる場所や狭い空間などで相談や打合せなどを行っている際に、パニック症状を起こす人もいます。 ・この場合、別の場所に移動させ、落ち着くまでクールダウンの時間をとり、落ち着いた後に、再開するか、日を改めるかなどについて、本人の意向を確認し、対応します。 (7)精神障害 ・精神障害のある人は、統合失調症、双極性障害、うつ病、てんかん、アルコール依存症などの様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えています。 p9 ・適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば、症状をコントロールできるため、大半の人は地域で安定した生活を送っています。  ◆ 統合失調症  幻覚や妄想、思考障害により、現実を認識する能力が妨げられてしまう病気です。正しい判断ができにくく、対人関係が難しくなるなど、様々な生活障害を引き起こしますが、薬による治療のほか、生活のしづらさに焦点を当てた社会生活技術の練習や作業療法に参加することで安定した日常生活を送ることができます。  ◆ うつ病  気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなってしまう状態が続く病気です。不眠や疲労感など身体にも不調が生じるなど、日常生活にも支障が現れます。  ◆ てんかん  通常は規則正しいリズムで活動している大脳の神経細胞(ニューロン)の活動が突然崩れて、激しい電気的な乱れが生じることによって発作が現れる病気です。薬によって、大部分の人は発作を止められるようになっています。  ◆ アルコール依存症  大量のお酒を長期にわたって飲み続けることで、お酒の飲み方を自分の意思でコントロールできなくなる病気です。その影響が、精神面にも身体面にも現れ、仕事や家庭などに問題を引き起こすなど、日常生活にも支障が出てきます。 【主な特徴】  ○ ストレスに弱い人、疲れやすい人、対人関係やコミュニケーションが苦手な人が多くいます。  ○ 外見からは分かりにくく、障害について理解されず孤立している人もいます。 ○ 精神障害に対する社会の無理解から、病気のことを他人に知られたくないと思っている人も多くいます。  ○ 周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感を持ってしまう人もいます。  ○ 学生時代の発病や長期入院のために、社会生活に慣れていない人もいます。  ○ 気が動転して声の大きさの調整が適切にできない場合もあります。 ○ 認知面の障害のために、何度も同じ質問を繰り返したり、つじつまの合わないことを一時的に話す人もいます。 【コミュニケーションの留意点】  ■ 笑顔で対応します  ・不安の強い人や、感覚が過敏な人もいますので、適度な声の大きさで、笑顔で対応します。  ■ 不安を感じさせないような穏やかな対応を心がけます  ・いきなり強い口調で話しかけたりせず、穏やかな口調で応対します。  ・相手に考えてもらう余裕や安心感を与える応対を心がけます。 p10 (8)高次脳機能障害  ・交通事故による脳外傷や脳出血などにより、脳が損傷を受けることで生じる身体面・認知面・メンタル面の様々な障害のことをいいます。  ・記憶力の低下、注意力の低下、遂行機能の低下、および社会的行動障害があります。  ・目で見て記憶する人と耳で聞いて記憶する人がいます。 【主な特徴】 ○ 外見からわかりにくい。 ・症状は周りから気付きにくく、本人も気がついていないことがあります。 ○誤解されることが多い。 ・拘りが強く、特にルールや約束事を途中で変更されると混乱するといった子供のような症状が現れる人がいます。 ・本人自身も、自分の性格なのか、症状によるものなのかの判断・区別がつけにくいため、自分自身をコントロールできないことにイライラする人がいます。 ・「〜かもしれない」、「どちらでも良い」などの会話は記憶に残らないことが多く、また興味のあることへの記憶は優れています。 【コミュニケーションの留意点】  ■ 具体的に分かりやすく伝えます ・情報伝達は、メモを書いて渡す、メモを書いてもらう、話し言葉を工夫する(ゆっくり、はっきり等)、確認を丁寧に行うなどの工夫を対象者に合わせた形で行います。 ・本人に対して、声を出して読み上げてもらうのが効果的です。 ・声をかけてもらうことで自分の存在を感じ、本人のステップアップに繋がることがあります。  ■ クールダウンの時間をとります  ・疲労やイライラする様子が見られたら、一休みして気分転換を促します。  ・深呼吸をして冷水を飲むように促すと、脳に酸素が行きわたり、落ち着かれます。 (9)難病 ・難病とは、原因不明で、治療が極めて困難で、希少であり、後遺症を残す恐れが少なくないことや、経過も慢性にわたり、生活面に長期に支障をきたす疾病です。 ・難病には、症状の変化が毎日ある、日によって変化が大きい、症状が見えにくいなどの特徴に加え、進行性の症状を有する、大きな周期で良くなったり悪化したりするという難病特有の症状が見られます。 ・ストレスや疲労により症状が悪化しやすい、定期的な通院が必要であるといった疾患管理上の条件などから、様々な生活のしづらさを抱えています。 【主な特徴】  ○ 外見から分かりにくい。  外見からは分からないため、電車やバスの優先席に座っても、周囲の理解が得られないなど、心理的なストレスを受けやすい状況にあります。また、トイレの回数が多くなる人もいます。  ○ 体調の変動が激しい。  午前中は体調が悪くても、夕方になると良くなるなど、一日の中での体調の変動があることが p11 あります。特に、ストレスや疲労により、症状が悪化することがあるため、約束が難しいことがあります。  ※詳しくは「難病情報センター」のホームページを参照(URL:http://www.nanbyou.or.jp/) 【コミュニケーションの留意点】  ■ 負担をかけない応対を心がけます ・症状や体調に応じて、対応してほしい内容を本人に確認しながら、できるだけ負担をかけない応対を心がけます。 合理的配慮等具体例データ集「合理的配慮サーチ」のほか、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律や内閣府が定める基本方針等については、内閣府のホームページを参照 URL:http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html p12 《障害のある人への配慮のチェックリスト》 1 案内(入口・受付)・誘導 障害区分 配慮の例 共通  配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡していますか。  パンフレット等の位置を分かりやすく伝えていますか。  目的の場所までの案内の際に、障害のある人の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害のある人の希望を聞いたりしていますか。  庁舎の入口や駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡していますか。 視覚障害  誘導が必要か確認していますか。 2 相談・説明・窓口対応 障害区分 配慮の例 共通  障害の特性に応じて、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対していますか。  書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達していますか。  ドアの開閉が困難な方に開閉を手伝っていますか。  窓口には、常に筆談のできるようメモ用紙等を備えていますか。  声かけは、介助の方でなく直接本人にしていますか。  障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にしていますか。  不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害のある人に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供していますか。  意思疎通が不得意な障害のある人に対し、絵カード等を活用して意思を確認していますか。  本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行っていますか。  比喩表現等が苦手な障害のある人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明していますか。  疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があり、別室の確保が困難である場合、障害のある人に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設けていますか。  他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、障害のある人に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備していますか。  立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、この障害のある人の順番が来るまで別室や席を用意していますか。  順番を待つことが苦手な障害のある人に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替えていますか。  手話のほか、筆談、読み上げ、拡大文字などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をする等の意思疎通に配慮していますか。 聴覚障害  手話通訳、要約筆記、触手話等が実施できない場合に、筆談や身振りでの応対、図や表示物を使用しての説明等の代替措置が可能か検討していますか。 肢体不自由  車いすを使用する人には、かがんで目線が合う高さで話していますか。 p13 3 文書等の作成・送付  〈必要な配慮を提供するまでの一般的な流れ〉  @障害のある人を対象として文書等を作成・送付する場合、相手方の障害特性を確認  A必要な配慮の内容の確認と配慮の方法の検討(代替措置を含む)  B配慮の提供   配慮を提供できない場合は、理由を障害のある人に丁寧に説明する。 障害区分 配慮の例 聴覚障害  問合せできるよう、電話番号に加えてファックス番号やEメールアドレスを記載していますか。 視覚障害  広く県民に広報する資料のうち、視覚障害のある人に送付するものについては、音声データの提供、音声コードの印刷又は点字化する等の配慮をしていますか。  視覚障害のある人に文書を送付する場合、封筒に所属名等を音声コードで印刷したシールや点字化したシールを貼付する等の配慮をしていますか。  拡大文字で文書を作成する場合は、22ポイント程度としていますか。  印刷物に複数の色を使う場合は、色を見分けやすいよう配慮していますか。  見分けやすい配色:紺と黄、白と緑など  見分けにくい配色:赤と緑、白と黄など 知的障害  知的障害のある人に文書を送付する場合、分かりやすいように漢字にふりがなをふるとともに、抽象的な言葉は避け、絵や図を使って具体的に分かりやすく工夫していますか。 4 会議  〈必要な配慮を提供するまでの一般的な流れ〉  @配慮の必要な出席者の有無の確認(出席者報告受付時など、できるだけ事前に確認する。)  A必要な配慮の内容の確認と配慮の方法の検討(代替措置を含む)  B配慮の提供   配慮を提供できない場合は、理由を障害のある人に丁寧に説明する。 障害区分 配慮の例 共通  出席者報告を受ける様式に「障害のある方で、一定の配慮が必要な場合には、その旨を担当まで御連絡ください。」などの記載がありますか。  会議の進行に当たり、職員等が障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行っていますか。  非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認めていますか。  庁舎の駐車場等において、障がいのある人の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更していますか。 聴覚障害  スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保していますか。 視覚障害  スクリーン、板書等がよく見えるように、弱視の人に対し、スクリーン等に近い席を確保していますか。  会議資料等を事前送付する際は、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供していますか。 p14 5 講演会等のイベント開催  〈必要な配慮を提供するまでの一般的な流れ〉   @スロープや障害者用トイレ等、バリアフリーに配慮した会場の選定   A配慮の必要な参加者の確認(参加申込書等により、できるだけ事前に確認する。)   B必要な配慮の内容の確認と配慮の方法の検討(代替措置を含む)   C配慮の提供    配慮を提供できない場合は、理由を障害のある人に丁寧に説明する。 障害区分 配慮の例 共通  参加申込書には、障害者用駐車区画の確保や手話通訳等の必要な配慮を申し出てもらう記載欄を設けていますか。 肢体不自由  開催会場には、スロープ、エレベーターや障害者用トイレがありますか。  開催会場には、障害者用の駐車区画が入口近くにありますか。 聴覚障害  手話通訳者及び要約筆記者の配置を求められた場合、可能な限り配置していますか。 視覚障害  資料を配る場合は、要望に応じてテキストデータを送ったり、点字の資料を用意したりしていますか。  会場内で誘導が必要か確認していますか。 6 庁舎管理 障害区分 配慮の例 共通  施設整備に係る合理的配慮について、即時の対応が困難な場合は、今後の改修工事の際に考慮するなど検討していますか。 肢体不自由  歩行が困難な人のための幅広(幅員3.5m以上)の駐車区画を、建物の出入口やスロープからできるだけ近い場所に用意していますか。  歩行が困難な人の移動の妨げとなるような物を通路においていませんか。  車いすを使用する人の通行に支障のないスペースを確保していますか。  (望ましい幅は80p以上、出入口は90p以上)  受付カウンター等に車いすが入るスペースを確保していますか。(望ましい高さは70〜75p)  建物に入るに当たり、車いすを使用する人や杖を付いている人から配慮を求められた場合、スロープの設置場所等まで案内したり、移動を支援したりしていますか。  建物入口の段差を解消する携帯スロープを設置していますか。  携帯スロープを用意できない場合、人力で持ち上げる等の代替措置が可能か検討していますか。 7 緊急時の対応 障害区分 配慮の例 共通  災害や事故が発生した際、一人で行動することが難しい視覚障害の人や車いすの人等に対し、職員がサポートを行う等、誘導していますか。 聴覚障害  災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害のある人に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導していますか。