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令和3年度第3回滋賀県総合教育会議の開催結果

開催日時

令和3年12月3日(金曜日)午前10時から午前12時まで

開催場所

県庁北新館5階5-B会議室

出席者

  • 知事 三日月 大造
  • 副知事 中條 絵里
  • 教育長 福永 忠克
  • 委員 土井 真一
  • 委員 岡崎 正彦
  • 委員 窪田 知子
  • 委員 野村 早苗
  • 県立大津商業高等学校 校長 小島 秀樹
  • 県立大津商業高等学校 教諭 松木 洋之
  • 県立草津養護学校 教諭 大塚 紳史
  • 甲賀市立水口小学校 教諭 小林 高章

議題

・ICTを活用した教育の推進について

会議録

(福永教育長)

本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

定刻となりましたので、ただいまから令和3年度第3回滋賀県総合教育会議を開会いたします。

本日は、ICTを活用した教育の推進を議題として、意見交換をお願いいたします。

また、本日の出席者につきましては、お手元の出席者名簿および配席図により、紹介に代えさせていただきます。

本日はゲストスピーカーといたしまして、甲賀市立水口小学校の小林先生、県立大津商業高校の小島校長先生と松木先生、県立草津養護学校の大塚先生にお越しいただいております。皆様どうぞよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましては、この会場とオンラインの併用で開催いたします。三日月知事と岡崎委員につきましては、オンラインでご出席いただいております。よろしくお願いいたします。

また、ウェブ会議システムを活用いたしまして、今回より、会場での傍聴のほか、オンラインでの視聴を並行しておりますので、ご承知おきいただきますようお願いします。オンラインを活用して開催しておりますので、発言に際しましては、マイクの御使用をお願いいたします。

会議に入ります前に少しご紹介をさせていただきます。皆様のお手元にコースターが置かれていると思いますが、このコースターは県立瀬田工業高校の化学工業科の生徒の皆さんが環境学習の一環として再生プラスチックから作成したものでございます。

瀬田工業高校の生徒たちが民間企業や大学の皆さんと連携し、またSDGsの観点も踏まえて、環境について学び取り組んできたものでございます。

総合教育会議におきましては、今後も折に触れて生徒の皆さんの取組をご紹介して参りたいと思いますので、よろしくお願いします。

それでは、開会にあたりまして知事からご挨拶をお願いいたします。

 

(三日月知事)

皆さんおはようございます。今日は12月3日となり、今年も押し迫って参りましたけれども、それぞれお忙しい中でお時間をいただき、総合教育会議に御出席いただきまして、ありがとうございます。

常日頃、滋賀県の教育行政に様々な形でお関わりいただいていること、御指導いただいていることに感謝申し上げたいと思います。

また、現場で御奮闘いただき、今日は様々な御報告や問題提起をいただく先生方、本当にありがとうございます。教育委員会で頑張っていただいている職員の皆さん、お疲れ様でございます。

だんだんこの総合教育会議のやり方もより良くなっていきますね。取組に感謝申し上げたいと思います。

さて、朝から山梨で地震、また紀伊水道で地震など、少し国土が、地球が揺れているのかもしれません。

おかげさまでコロナは落ち着いております。滋賀県も昨日まで12日連続で新規陽性者ゼロということなのですが、今日は何人かいらっしゃるという御報告もすでにいただいております。オミクロン株、新たな変異株も出てきていますので、次の波への対策も、より知恵のある対策ができるように、皆さんと一緒に努めて参りたいと思います。

コロナが落ち着いたと思ったら琵琶湖の水位が下がってきまして、今朝でマイナス64センチです。少し回復していますが、御覧いただければわかるとおり、少し琵琶湖が小さくなっているのを感じていただけると思います。琵琶湖の水位が下がりますと、今ちょうどアユ漁が一昨日から始まったのですが、えりの修復ができないそうですね。船の位置が下がって、えりの杭が高いところにあると、えりの操作がしづらくなったり、船着場が船よりも高くなって台が必要になったりと、いろんな影響が出ているようでございます。

一方で、坂本城の石垣が出てきたといった副産物もあるようでございますが、この琵琶湖は、地球環境を映し出す窓であり、私たちの暮らしを照らしてくれる鏡でもありますので、この異変から感じることを大事にしていきたいと思います。

少し前置きが長くなりましたが、国ではこども庁の議論が始まっています。本当の意味で子どものためになる組織の設立を強く望みますし、先般も野田大臣と意見交換し、要望させていただいたのですが、この機に、子どもに関わる予算や制度をしっかりと充実することを求めております。

いずれにしても、子どもの学びや育ちを社会の真ん中に据えようという、この方向性自体は大いに共感いたしますし、後押しをしていきたいと思っております。

また、昨日は滋賀県の子どもたちの学びの選択肢を増やすという意味で、高専設置につきまして、滋賀県で本格的に検討していることを改めて議会で表明し、県立で設置することについて表明させていただきました。来年の夏頃までには、どこに設置するのかということについても決めていきたい、明らかにしていきたいと考えております。

ぜひ滋賀県の教育をしっかりと底上げするような形につなげていきたいし、高校についても魅力づくりということで、新たな検討会議を立ち上げて議論していただいておりますので、そういったものとも相乗効果を発揮できるようにしていきたいと思っております。

子どものスポーツ、子どもの運動という観点では、大津商業高校のアーチェリー部に大変優秀な成績を収めていただいて、また中学生にもアーチェリーの楽しさを教える取組をしていただいていることを大変うれしく思っています。先般、大橋悠依さん、木村敬一さん、

宇田秀生さんと意見交換したときに、大橋さんは中高の学校でのクラブ活動が非常に自分にとって大きなウエイトを占めていたというお話をしておられました。先生との出会い、友達との競い合い、そういったものが自分を高めてくれたと言ってくれていまして、やはり学校教育におけるこうした活動が、トップアスリートだけではなく、多くの方の人生にとって重要な場面になっているのだと実感させていただきました。

また、特別支援教育の面では、昨日も議会で取り上げていただいたのですが、副次的な学籍制度を滋賀県で平成28年度から研究して参りまして、来年度以降どうするのか、今、御検討いただいているところでございます。障害のある子どもも、ない子どもも、それぞれの地域で自分らしく学べる環境を、皆さんと一緒に作っていきたいと考えております。これにつきましては、私も当時の特別支援教育を担当する方々と議論に議論を重ねまして、すぐにできなくても、みんなでそれを目指して頑張っていこうと言い合いながら、子どもにとってどのような学びが一番ふさわしいのか追求する議論をしたことを思い出しております。ぜひ皆さんとこういう点でも、さらに取組を積み重ねていきたいと思います。

また、学校図書館につきましては、それぞれ担当の先生方、司書の先生方に充実のために頑張っていただいていますが、さらに充実することによって、子どもの学びの質を上げていきたいと考えております。

今日のテーマであるICT化、デジタル化、GIGAスクール構想。これにつきましては、コロナ禍で御苦労いただいた分、進められる分野だと思っておりますし、この機会に個別の学びの最適化、個々の学びの最適化を、皆さんと追求していきたいと思っております。同時に、こうして離れていても瞬時に世界ともつながる対話型の学びの質を深めていきたいと考えているところでございます。

あちこちに話題が飛んで恐縮ですが、事ほどさように、教育委員会、教育行政を取り巻く課題や可能性はたくさんあります。

皆さんと力を合わせて、課題は克服し、可能性は伸ばしていけるように、頑張って参りたいと思いますので、よろしく御指導賜りますようお願い申し上げて、私の挨拶といたします。

 

(福永教育長)

知事ありがとうございました。それでは早速ですが、議事に入らせていただきます。

本日のテーマはICTを活用した教育の推進でございます。進行でございますが、初めに教育委員会事務局から学校教育の情報化に関する現状について説明を行い、続いてゲストスピーカーの皆様から学校現場の取組状況について御発表いただきます。

その後、ICTの活用による本県教育の目指す姿、また、これからの取組の方向性について、皆様と意見交換を行いたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

それではまず事務局からの説明をお願いいたします。

 

(幼小中教育課長)

学校教育の情報化に関する現状について、市町立の小中学校、県立の高等学校、県立の特別支援学校の順に、簡単ではございますが御説明させていただきます。

2ページを御覧ください。まず市町立小・中学校におきましては、今般のGIGAスクール構想によりまして、小中学生にコンピューター端末が配布されました。

本年度、各学校の先生方のご努力もありまして、授業等で様々な活用が進められているところでございます。

現在使用されているOSごとの学校数および児童生徒数につきましては、左上の表にありますように、小中学校ともiPadOSが最も多い状況でございますが、中学校におきましてはWindowsも多く使用されているというような状況でございます。

また、端末の利活用の状況につきましては、現在進行中でございますが、12の市町が全ての学校の全ての学年で活用されている状況で、他の市町につきましても活用はどんどん多くなってきている状況でございます。

今後はより効果的な活用を図りまして、読み解く力の育成や主体的、対話的で深い学びを進める、一層の学習活動の充実を図ることが必要と考えております。

また、学校外での活用の状況につきましては、児童生徒が端末を持ち帰り家庭学習に活用し、あるいは臨時休業時等の場合の学びの保障として、オンライン授業で活用する市町も徐々に増えてきている状況でございます。

県教育委員会としましては、市町立での取組における課題や、あわせて好事例についても情報を共有し、全ての市町の利活用が一層進むように、継続的に支援していきたいと考えているところでございます。以上でございます。

 

(高校教育課長)

続きまして、高等学校の現状について説明させていただきます。

高等学校につきましては、令和4年度、来年度から1人1台端末が整備され、本格的にICT機器を使った授業が展開されることになります。

その前年ということで、今、準備が進められているところでございます。

本日の報告といたしましては、主に学校の視点で資料をまとめさせていただきました。

資料左上のICTの活用状況におきまして、平成31年度が56.8%、令和2年度68.8%という数字がございますが、これは文部科学省の調査で、教員が授業にICTを活用して指導する能力の割合を示したものでございます。

これは県立高等学校のデータでございますが、令和2年度の段階で約7割の先生方がICT機器を使って授業が展開できるとお答えになっております。

この平成31年度から令和2年度まで約12ポイント上がっていますが、その背景として、資料の右側に記載しておりますが、本県で平成30年度から3年間の実践として、高大接続ICT活用研究実践の事業をスタートさせております。

当初より高島高校、安曇川高校、長浜北高校、河瀬高校、水口東高校の5校を実践校として指定いたしまして、早くからICT機器を使った授業展開をしているところでございます。

特にICT機器を使った実践ができるように教室を整備したり、他府県への先進校視察を行ったり、さらには総合教育センターでのICTに関する研究と連携するなどして、実践研究をいち早く進めてきたところでございます。

高島高校の例を挙げますと、特に授業形態として、教員の板書の時間や生徒がノートに書き写す時間が大きく減り、演習や協働的な学習に時間を多くかけられるようになったと報告を受けております。

今後はこういった研究実践校での実践例をどんどん広めていきながら、いよいよ来年から始まります1人1台端末によるICT活用が、より効果的に行われるように準備を進めていきたいと思っております。

 

(特別支援教育課長)

続きまして4ページ目の特別支援学校の活用状況について報告させていただきます。

特別支援学校の場合、児童生徒が聾、盲、病弱、知的障害、肢体不自由という障害の状況も様々でありますことから、四つの観点に分けて報告させていただきます。

資料左上のオンライン会議システム等を用いた学校間交流につきまして、特別支援学校は16校ありますが、高等養護学校4校はもともと高等学校に併設されており、日頃から儀式や行事等を一緒にしておりますので、学校間交流の総数から除いております。

他の特別支援学校におきましても、コロナ禍で地域との直接的な交流が難しくなっている中でもオンライン会議システムを用いて、継続的に交流に取り組めている学校もあります。また、県外の学校との交流例として、近畿地区の盲学校生徒会の状況について記載しております。

次に、左下の遠隔教育についてですが、しがしごと検定における事前のスキルアップ授業でオンライン会議システムを用いて、高等養護や各学校の高等部に対して講義や実技に取り組んでおりますし、小児保健医療センターに入院している小中学生を対象にしている守山養護学校におきましては、入院前に通学していた原籍校と守山養護学校の教室や入院中の病室等を接続して、学習の発表などに取り組んでおります。他にも訪問教育でありますとか、出席停止の生徒に対する学習提供にも活用させていただいております。

続いて、右上の入出力支援装置や実物投影機等の活用についてです。入出力装置としては他にも、音声文字変換システムや視線入力装置、ブレススイッチ、点字ディスプレイ等がありますが、資料ではタブレットやタッチペンを活用し、個別最適にカスタマイズして学習している生徒の写真を挙げております。他にも実物投影機ということで、教師の手元にある教材や教師が操作しているキーボード等をスクリーンに大きく映し出して、児童生徒に細かい操作状況が見えやすいように活用しております。

最後に、右下の特別支援教育のICT活用プロジェクト研修でございます。これは総合教育センターと一緒に、令和2年度から令和4年度の3年間に、県立特別支援学校16校が各年度に5、6校参加し、特別支援学校における効果的なICTの活用について、生徒の思いや願いを叶え、児童生徒が主体性を発揮できるよう、実践研究に取り組んできております。

研究成果として資料に挙げておりますが、児童生徒が自分でノートやテキストにフリック入力で文字を入力し、自立的な学習が可能になったケースや、肢体不自由の重度重複障害の生徒のケースでは、スマートウォッチにより前夜の睡眠データを把握し、iPhoneを使った記録によって体調の好・不調を把握し、それを日々の学習活動の設定に生かして、生徒の活動意欲を喚起できたということを聞いております。

ICT機器の児童生徒の活用については、学習のツールとしての活用だけではなく、児童生徒の将来の生活を豊かにするための支援ツールとして、その意義を押さえながら、一人ひとりに効果的に活用できるような実践を今後も進めて参りたいと考えております。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

それではここからはゲストスピーカーの皆さんから御発表いただきたいと思います。

まず水口小学校の小林先生よろしくお願いいたします。


 

(水口小学校小林教諭)

甲賀市立水口小学校の小林です。これより水口小学校のICT活用の現状と課題を御説明いたします。どうぞよろしくお願いいたします。発表の流れは、ICT活用の現状、機器導入から現在までのプロセス、今後の課題となります。

まず、ICT活用の現状について御説明いたします。本校では、ICTを活用する上で大切にしていることがあります。1点目は、教科のねらいに迫るICT活用、2点目は、情報活用能力を育むためのICT活用、3点目は、家庭でICTを有効活用することです。

それでは、本校における授業でのICT活用の現状をお伝えします。

こちらの資料(P.4)は1年の生活科、国語科での活用状況です。生活科において校内で見つけたものをタブレット端末で撮影し、国語科の学習で紹介し合いました。子どもたちは撮影した写真から伝えたいものを選び、クラスのみんなに紹介することができました。

こちらの資料(P.5)は2年算数科での活用です。おはじきを使って掛け算の式を考え、それをタブレット端末で撮影し、どのように式を考えたのか、図や式で表しました。最後に表したことをペアで伝え合いましたが、画像に考えをまとめていることで、話し手は説明しやすく、聞き手は考えを理解しやすいと感じていました。

次の資料(P.6)は3年理科での活用です。クラスみんなの実験結果を教員から子どもたちに送り、わかったことを書き込みました。子どもたちはゴムが伸びるほど実験用の車が遠くまで進むことを上手にまとめることができました。伝え合う際には画面を見せながらわかりやすく説明することができました。

次の資料(P.7)は4年社会科での活用です。学校にある災害の際に役立つものをタブレット端末で撮影し、わかったことを写真に書き込みました。それらを交流することで、災害の際に、学校が重要な役割を果たすことができるということを実感できました。

次の資料(P.8)は5年理科での活用です。観察してわかったことに加えて、流れる雲の様子の動画を一緒にまとめています。観察の様子をリアルタイムで見ているかのようにまとめることができています。

次の資料(P.9)も5年生の取組で、総合的な学習の時間での活用です。フローティングスクールで学んだことを数枚のスライドにまとめて伝えました。子どもたちはいわゆるプレゼンテーションを行いましたが、タブレット端末を使ってまとめたり、伝えたりすることが楽しい、分かりやすいと感じていました。

次の資料(P.11)はわかぎ学級の自立活動・生活単元での活用です。自分のことを紹介するために、写真スライドを3つ用意し3ヒントクイズを作りました。どの子もタブレット端末にまとめられたものに興味津々で、とても楽しみながら意欲的に伝え合うことができました。

次に、家庭でのICT活用について御説明します。本校ではタブレット端末を月2回、家庭に持ち帰っています。教員から課題を出すこともありますが、基本的には子どもたちが自ら学習したいと思った学年、教科、単元を選んで意欲的に学習に取り組むことができています。

こちらの資料(P.13)は、運動会の練習に動画を使った取組です。事前に撮影した練習動画を1人ずつに配信しました。子どもたちは家庭でも動画を見ながらダンスを踊ることができ、例年よりも早く動きを覚えることができました。

こちらの資料(P.14)は学校と家庭をオンラインで結ぶ取組です。Teamsを使って放課後の指定した時間に家庭にいる子どもたちとやりとりをしました。この取組は学校で一度練習したこともあって、比較的スムーズに学校と家庭をつなぐことができました。

それでは次に、機器の導入から現在までのプロセスを御説明いたします。昨年度から現在までの取組は御覧の資料(P.15)のようになっています。では、それぞれについて詳しくお伝えします。

1学期の取組についてです。まずは教員の不安を軽減することが必要と考えて研修を実施しました。そのため、まずは全職員にタブレット端末の使い方を説明しました。また、子どもたちがタブレットを使う際の約束を全校で統一したり、ICT活用についての研修を行ったりしました。このように子どもたちが授業でタブレット端末を活用するための土台づくりを行いました。

次に夏季休業中の取組です。2学期以降のICT活用をよりよいものにするために研修を実施しました。本校の職員が様々な事例を知りたいと考えていましたので、1学期に行った授業についての交流を行いました。また、2学期に向けて授業づくりを行ったり、Teamsの体験を行ったりしました。どの教員も大変熱心に取り組む様子が見られました。

ここで本校において、1人1台端末を有効活用するためのPDCAサイクルをご紹介します。このスライド(P.18)にありますように、P:授業の計画をする、D:授業を行う、C:授業を振り返る、A:成果と課題、改善点の共有、このサイクルを学校全体や学年部等で繰り返し、1人1台端末を有効活用することを目指しています。

次に2学期の取組です。2学期はICTを活用した授業に加え、Teamsを活用して、学校と家庭をつないだり、研修を行ったりしました。研修では夏季休業中と同様に、行った授業の交流や、今後に行う授業の内容を考えたりしました。

ここまでが機器導入から現在までのプロセスです。現在、子どもたちは授業でタブレット端末を使用することが当たり前になりつつあります。さらなる活用のために3学期も授業づくりや研修を行う予定となっています。

最後に、今後の課題です。

1点目は教科等で身につける資質・能力とともに情報活用能力も育むことができるICTを活用した授業づくりです。

2点目は、情報活用能力の系統的・教科横断的な育成を行うためのカリキュラム・マネジメントです。

3点目は発達段階に合わせた情報モラル教育の系統的なカリキュラムの作成です。

これで水口小学校のICT活用についての説明を終わります。ありがとうございました。

 

(福永教育長)

小林先生ありがとうございました。

それでは続きまして、大津商業高校の小島校長先生と松木先生から発表いただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

(大津商業高校小島校長)

滋賀県立大津商業高等学校の小島でございます。本校のBYOD導入による授業改善について、小島と松木から御説明させていただきます。

まず導入の経緯について御説明をいたします。今年の2月に県教育委員会と京都大学、株式会社内田洋行の間で、「『説明できる』AI実証研究」の連携協定が締結されました。

本校がその実証研究校となったことから、BYOD導入による研究を進めたということでございます。

まず校内にICT教育準備委員会を設置いたしまして、ビジョンの策定、端末の選定、入札業者の選定等を行うことといたしました。

3月には入学許可および予定者のオリエンテーションの中で、保護者に対して導入についての説明をいたしました。それから入札業者を決定するためにプレゼンテーションを行いまして、入札業者を決定し、今映っておりますのが本年度導入をした機器でございます。

新年度になりまして、4月に新たに校内組織の中でビジネス教育推進部という組織を立ち上げまして、こちらと新たにICT教育推進委員会というものを組織いたしまして、この2つの組織で本校のICT教育を推進することといたしました。

それから入学式におきましては、再度保護者の方に購入についての説明、今後のスケジュールについての説明等をいたしまして、教員ガイダンスを実施しております。

そして5月にもう一度教員ガイダンスの実施と、中間考査を終えて5月の下旬ですけれども、生徒へタブレットを渡して、本校はBYODによる導入でございますので、毎日持ち帰ること、それから毎日家で充電をすること、それから使用に関するルール等の説明をいたしまして、6月から本格的に活用したということでございます。

 

(大津商業高校松木教諭)

ここからは本校の活用実践報告といたしまして、松木が報告をいたします。よろしくお願いいたします。

まず6月からホームルーム活動、授業において本格的にタブレット端末を活用いたしました。

端末の活用に慣れるようにするために、Formsという機能を使いまして、朝の健康観察を行いました。

登校時にタブレット端末を起動し入力させるため、回収率も上がり、さらにペーパーレスにも繋がりました。

また、ICT教育の導入として連絡事項の確認や朝学習などで毎日活用するよう心がけましたので、1学期末には全校生徒を対象とした授業アンケートをFormsで行うなど、授業以外での活用機会を増やして参りました。

夏休みにはTeamsという機能を活用してクラスチームを作り、課題の配布、提出を行いました。締め切りを細かく設定することで、生徒は計画的に課題に取り組むことができました。また、生徒の学習状況や提出状況を把握することができたため、課題の確認や2学期からの授業準備にも大変役立ちました。

次に授業での活用方法について御説明いたします。これまでの授業では資料等を黒板にプロジェクターで投影しておりましたけれども、細かいグラフや表などが理解しにくいという課題がありました。そこで、生徒の端末に教員の作成した資料を画面共有することで、このようなグラフも鮮明になり、生徒の理解も深まっています。

次に各教科・科目における取組を御説明いたします。商業科目「情報処理」では、授業だけではなく、自宅においても文書作成の練習ができるため、この9月に行われました、全国商業高等学校協会主催情報処理検定では9割の生徒が合格することができました。

次に、「コミュニケーション英語I」では、予習や質問をFormsという機能で収集し、誤答の傾向等を分析して授業を行うなど、指導の効率化に繋がっております。また、生徒の発表を録画・録音できるため、振り返り学習にも活用しております。

1人1台の端末の利点としましては、生徒一人ひとりに英作文の入力をさせ、収集後全体へ共有することができるため、全ての生徒に発表の機会を与えることができるようになりました。

このような入力フォーム(P.14)に、単元で学習した英語や表現を使ったオリジナルの文章を入力していきます。そして入力された英文を即座にスクリーンで共有することができ、上手な例文を取り上げてクラス全体に紹介しています。

効果としましては、全ての生徒が1人1台端末で授業に参加できるため、生徒の作品を即座に共有したり、フィードバックしたりできることです。

生徒は自分の作品が取り上げてもらえるので、回を追うごとにオリジナリティのある実用的な作文にチャレンジする生徒が増えて、授業にも主体的に取り組むことができるようになってきました。さらに、キーボード入力でスペルチェックが入るので、スペルミスへの意識が増し、効率よく学習することができております。

次に「科学と人間生活」においては、こちら(P.17)のとおり1人1台端末の利点を活かしまして、生徒がそれぞれ自分の町のハザードマップを調べて、地域の危険度や避難場所等を調査してレポートを作成しました。

その他にも、体育では競技動作を互いに撮影しながら、その場で確認して競技力を向上させる、そしてやる気を引き出すといったことや、数学・簿記におきましては、京都大学、内田洋行との連携事業でもありますBookRollというシステムを活用して授業を進めております。

各教科の科目・単元ごとに、Formsという機能を活用して小テストを行いながら、振り返り学習をしております。こちらに関しても、質問に対する回答を即座に画面に共有することができるので、他の生徒がどのように回答したのか、すぐ確認することができております。

進路学習におきましても、生徒の理解度に応じて、学習動画の視聴等、生徒1人の進路に合わせてタブレット端末を活用しております。

その他にも3年生の課題研究の授業で、バーチャルツアーや大津市議会とのオンラインミーティング、さらには部活動におけるオンラインミーティングなど、様々な教育活動でタブレット端末を活用したICT教育を進めております。

また学校業務処理での活用におきましては、職員のオンライン会議、ペーパーレス会議など、校務における効率化を図るとともに、教員のスキル向上のための研修会も行っております。

最後になりますが、今後の課題としまして、タブレット端末を個別最適化された学びや創造性を育む、学びに寄与する活用方法を見出していく必要があると考えております。

2つ目に読み解く力、書く力の学習バランスを考えたICT教育を今後どのように進めていくか、3つ目にICT教育の推進リーダーが学校の各分掌、学年の推進担当者と協力して教員全体のICT活用能力を担う仕組みを作りながら、生徒一人ひとりに寄り添うICT教育を実践していかなければならないと考えております。

以上で大津商業高校の報告を終わります。ありがとうございました。

(福永教育長)

大津商業高校の小島先生、松木先生ありがとうございました。

では続きまして、草津養護学校の大塚先生から御発表いただきたいと思いますよろしくお願いいたします。

 

(草津養護学校大塚教諭)

草津養護学校の大塚紳史と申します。よろしくお願いいたします。

主題を「ICTの活用について」、副題を「ICTで繋がる教育・広がる世界」としています。

まず本校について簡単に御説明いたします。草津養護学校はびわこ学園部、小学部、中学部、高等部の4つの部に分かれています。小学1年生から高校3年生までの全校生徒369名が在籍しており、滋賀県内で2番目に児童生徒数の多い養護学校となっております。私が所属しているのがびわこ学園部です。

びわこ学園部について御紹介します。本校舎に隣接する、びわこ学園医療福祉センター草津の施設内に教室が併設されております。びわこ学園医療福祉センター草津は重度・重複障害のある方々の福祉施設でありながら、病院としての機能を併せ持った施設になっております。びわこ学園部の子どもたちはここに入所して生活されており、そこから毎日教室に登校して学習に取り組んでおります。

びわこ学園部の在籍児童生徒数は現在3名です。ただし、小学校2年生の児童につきましては、担任が病棟に出向いてベッドのそばで学習を行う、ベッドサイド学習を基本としており、月に1回教室に登校して、3名がそろって学習に取り組んでおります。

3名とも医療的なケアを必要としており、気管切開をしていることでたんの吸引が必要であるほか、経口での食事が難しいため、経鼻経管栄養注入といったケアが必要です。

医療的ケアによる体調や健康状態の安定が最優先になりますので、学習の時間、場所、環境等の設定に難しさがあります。

続いて、児童生徒の実態についてお話させていただきます。びわこ学園部の児童生徒は肢体不自由を主たる障害とする重度・重複障害のある子どもたちです。そして3名ともが人工呼吸器による呼吸管理等の医療的ケアが必要な子どもたちです。

主な診断名としましては低酸素脳症や、骨髄異形成症などです。そしててんかん発作や熱性けいれんといった、突発的な健康状態悪化の頻度や可能性がとても高い子どもたちです。

子どもたちのコミュニケーションについては、目を開けたり、視線を動かしたり、微笑むように表情を動かしたり、舌を動かしたり、声を出したりといった形で自分の思いを表現することができます。資料(P.4)右下の写真にありますように、ストレッチャータイプの車椅子に体を横にした状態で、学習に取り組んでいます。

それではここから、ICTの活用について概要を説明させていただきます。

今年度は滋賀県立総合教育センターとの共同研究により、ICTの活用について研鑽を深めて参りました。

まず1点目ですが、ICTを活用した遠隔授業の取組です。遠隔会議システムであるZoomやTeams等のアプリケーションを活用して、他学級との合同学習や、保護者の授業参観を行いました。

2つ目は、ICT機器を活用した教科学習です。デジタル絵本や、効果音・アニメーションが有効とされるアプリケーション、ポイントタッチスイッチなどの入出力支援機器を使った補助具等の活用、そしてビデオ記録による活動の振り返りになります。

それぞれについて詳しく御説明いたします。ICTを活用した遠隔授業についてです。先ほども申し上げましたが、クラスのうち小学2年生の子どもは月1回のみ教室に登校するため、残りの2名の子どもたちと直接会う機会も月1回しかございませんので、小学2年生の子どもと残り2名の子どもたちをつなぐツールとしてTeamsを活用したり、校舎が離れている他クラスの友達と一緒に朝の会をしたり、合同学習に取り組むためにTeamsのアプリケーションを活用しました。

昨年度に引き続き、感染症の影響で屋外での活動に制限があったり、校舎に在籍している小学部から高等部までの児童生徒と直接顔を合わせて学習を行うことが難しい面がありましたので、こうした合同学習の中で友達に名前を呼んでもらったり、雑談のようなお話をしたり、一緒に歌を歌ったりといった活動を行う中で、クラスの子どもたちもその雰囲気を感じ取って、目を大きく開けたり、声を出したり、いつもと違う表情をしながらとても楽しんでいる様子が見られました。ICTを活用した遠隔授業は、いろいろな人と繋がる機会として、とても有効であったと感じています。

また、びわこ学園部の児童生徒は、普段病棟で過ごされており、感染症の影響でご家族の方と直接会ってお話をする機会もなかなかありませんでしたが、ICTを活用したことで、授業参観でお話をしたり、日頃の学習の様子等を見ていただいたりする機会として、とても有効であったと感じています。

続いて2点目は、ICT機器を活用した教科学習についてです。デジタル絵本やアプリケーションを活用することで、普段の生活ではなかなか聞くことができない音を聞いたり、風景を見たりして、いつもと違う雰囲気や情景を感じることができる点でとても有効であったと感じています。

また、姿勢や体の動きに制限がありますので、自分の体を動かして何か発信することが難しいのですが、ポイントタッチスイッチ等の入出力支援機器を活用することで、道具に直接自分で働きかけたり、また相手に思いを伝えるコミュニケーションの手助けになっていたりします。具体的には、紙すきの取組の際に、ポイントタッチスイッチで、指や舌でスイッチを押して、ミキサーを自分で動かして、紙すきの原料となる素材を自分で作る体験ができ、ICT機器の助けで子どもたちの活動の可能性が広がったと感じています。

最後に、今後の取組についてですが、びわこ学園部の児童生徒にとってICT機器の活用は有効であると私も感じております。

身体面における活動の制限があったり、生活面においては気軽に屋外に出ることができない状況もございますが、ICT機器を活用することで、人との繋がりを感じることができたり、また間接的な体験や疑似的な体験を取り入れることができます。先ほども申し上げたような、自分の力でスイッチを動かすといった経験ができる点で、ICT機器の可能性を感じております。

ICT機器は1つのツールであり、児童生徒の実態に合わせて有効活用するためにも、使用方法や、授業の展開の中での活用については、今後まだまだ改善が必要であると感じています。児童生徒が学ぶ立場から何を求めているのかを考えて、ICT機器を活用していくことが大切であると感じています。

以上で発表を終えさせていただきます。

 

(福永教育長)

大塚先生ありがとうございました。

それではただ今事務局、そして水口小学校、大津商業高校、草津養護学校からの発表を受けて御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。

(岡崎委員)

御説明ありがとうございました。

いろいろな学校の子どもたちの活用状況がよく分かりました。水口小学校の御説明の中で、先生方も積極的にステップアップして取り組んでいけるよう、カリキュラムを組んで、勉強会や、PDCAサイクルによってスキルを上げていく取組をされていると思います。

私たちがふれあい教育対談で各学校等を訪問させていただくなかで、先生方から御意見として伺ったのですが、新任の若い先生方は、高校や大学からそういった機器を活用しておられるので、非常に身に付けやすく、教える側からすると手間がかからないと思うのですが、逆にそういった機器の活用をされてこなかった世代の、ベテランの先生方との差が生まれているのではないかと思います。この差をどのような形で近づけておられるのか、または差があるなりに得意な先生で対応されているのか、どのようなやり方をされているのか、教えていただきたいと思います。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

学校内でも当然様々な年齢の先生がおられますので、水口小学校の実態や取り組まれている工夫等はありますでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

 本校では情報主任がおり、その教員が担当となって、ヘルプデスクではありませんが、何かあった時にはすぐに相談できる体制をとっています。苦手や、経験がないような場合には相談をして、操作方法等について説明を受けられるようにしています。

 その他にも私が教務でおりますので、授業等に一緒に入って、子どもたちがどのように操作しているか見て、困っているところを手助けするなど、一緒に授業を作っていくということをしております。

そうすることで、先生方は安心して、次に取り組みたいことや、困っていることを相談してくださり、それに対応することによって、どの先生方もタブレット端末を使って授業しようと頑張ってくださっています。

この他にも、月2回ほどICT支援員の方に来ていただいていますので、校内では対応が難しい場合には、支援員の方にもアドバイスを求めて支援していただいております。それにより先生方は熱心にICT機器を使ってくださっていますし、子どもたちも非常に意欲的に学習に取り組めています。

さらに言いますと、教員ができない、難しいと思っていることも、子どもたちは簡単に乗り越えたりしますので、そういった点で、先生方もICT機器を使った方が良いと感じており、積極的に活用している状況です。

 

(岡崎委員)

ありがとうございました。

先生方が子どもたちから刺激を受けていることには驚きました。良いことだと思います。

事務局の方に確認したいのですが、今の水口小学校の説明にあった情報主任がいる体制は、各校で構築されているのでしょうか。それとも水口小学校独自の取組でしょうか。

 

(幼小中教育課長)

今回のGIGAスクール端末を導入する以前から、電子黒板や、簡単なものではプロジェクター等の様々な情報端末が学校には入っております。得意な先生に担当していただいていると思いますが、情報教育担当が必ず学校におりますので、担当の先生に全体を見ていただきながら研修等を進めていただいていると考えております。

 

(岡崎委員)

情報教育担当の先生は、クラスをお持ちにはなられずに、専任として自由に時間を使えるようになっているのでしょうか。

 

(幼小中教育課長)

その点は学校によって様々であると思います。大きな学校ですと情報教育担当のみであったり、教務と兼ねていただいたりする方もおられますが、小さな学校ではどうしても、クラス担任を兼ねていただくことになります。水口小学校では2人体制で上手に回しておられるので、そういった形も広めていきたいと思いますが、小さな学校では放課後に相談するような状況であると思っております。

 

 

(岡崎委員)

もう一度水口小学校の小林先生に伺いたいのですが、現状、ICT活用についてアドバイスができる方は足りている状況でしょうか。

御説明いただいたように、子どもたちが刺激を受けている様子を受けて、今後さらに活用していきたいという意味では、近い将来もう1人、もう0.5人手伝って欲しいと感じておられるでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

1人でも多くの方に居ていただきたいと思います。本校ではクラスの担任が情報主任を務めておりますので、全てに対応するということが難しい状況です。先生方の要望にいつでも答えられる先生が、1人、0.5人でもおられれば、大きな力になるのではないかと思います。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。その点については今後改善の余地があると考えております。

その他何か質問や、もし質問等がないようでしたら、皆さんから今までの発表を聞いて、今後の取組等について御意見がございましたら自由に御発言いただいて、滋賀がICT教育の先進県となるようなアイデアを出していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

(土井委員)

それぞれの先生方にお伺いいたします。

まず水口小学校の小林先生に伺いたいのですが、小学校1年生から6年生まで発達段階が大きく違うと思います。その中でICT機器を使う場合に、どのあたりの年齢から自由に使いこなすようになるか、伺いたいと思います。

次に大津商業高校に教えていただきたいのが、1人1台端末を導入したうえで、授業ではずっと生徒の皆さんに自由に使用させておられるのか、それとも先生が指示をされた場合に限って使用させておられるのか、という点です。

最後に草津養護学校の大塚先生に伺いたいのが、肢体不自由や病弱の方に対してICT機器を使うというのは、通常の使い方とは大きく違うところがあって、個別にいろいろな対応をしていく必要があると思います。通常の学校で、端末を配ればある程度のことができるのとは違うと思いますので、さらに支援が欲しいと考えておられる点があれば、お伺いしたいと思います。

 

(水口小学校小林教諭)

どの段階から上手に使えるようになるかということですが、正直なところ、今は端末が導入されて、みんなが同じスタートラインで使っている状況で、なかなか見えづらいのですが、子どもたちの様子を見ていると、5、6年生、高学年になってくると、ワードやパワーポイントを使うことができてきます。

学校によってはもっと下の学年から使っていることがあるかもしれません。

(大津商業高校小島校長)

本校では授業のための教材であると位置付けていますので、学校では教員の指示のもとで使っております。昼休み等の時間にはロッカーに入れて管理をしている状況です。

 

(草津養護学校大塚教諭)

資料にもありました通り、昨年度から特別支援教育のICT活用プロジェクト研究に取り組んでおりまして、私も今年度この研修に参加いたしました。

その研修の中で、例えば視線入力装置や、口にマウスピースのように咥えて、歯を動かすことでクリックをするといった、様々なより良い装置を紹介していただきました。そういった機器はとても高額なので、難しい面もあるかもしれませんが、子どもたちにとっては必要なものであると思います。実際に使ってみないとわからないのですが、各校にそういった機器が導入されることで可能性は広がっていくと思います。今はようやくタブレット、iPadが整備された現状ですので、これからどんどんと様々な機器が入ってくると思うのですが、そういった点についても、県の方と協力して進めていきたいと思います。

 

(福永教育長)

今はあくまで研究事業として、提供していただいた様々な機器を使って、どういった機器が有効であるか検討を行っているものです。その中で有効な機器が分かれば、それを導入していくことになると思います。

 

(岡崎委員)

大塚先生にお伺いしたいのですが、先ほどの発表の中で、子どもたちの活動の可能性、期待が大きくなっているというお話がありましたが、今までの授業と違ってタブレットを使うことで、具体的に子どもたちにどのような変化があるのか、事例があれば御紹介をお願いします。

 

(草津養護学校大塚教諭)

今年度からiPadや入出力装置を学習の中で取り入れております。クラスの子どもたちについて、例えば視覚の情報の処理が難しく、光覚であれば視覚的な情報を得られる子どもがいるのですが、比較的赤色はとらえやすいと医師から診断されていることから、実際の絵本を提示するよりも、子どもにとってとらえやすいのではないかと考え、iPadで撮影したものを子どもに見やすい形で提示しております。子どもの反応から実際に見やすかったかどうかを評価するのは非常に難しいですが、そういったところで有効活用できていると感じます。

視力のある子どもであれば、これまで絵本の大きさに限界があったところ、iPadによってより子どもに提示しやすい方法をとることで、子どもも目をぐっと大きく開けて画面に集中している様子が見られています。また、普段ベッドサイドで学習している2年生の子どもは、感染症の影響で家族の方に直接会えず、週に1回リモートによる面会をされていた経験からiPad自体に親しみを持っていたようで、「iPadって僕にとっては、好きなもの、好きなツールだな」と感じ取ったのか、学習の中でiPadを見せると、「何かいいものが来た」という表情を見ることができております。こういったところで今年度1年間取り組んだ変化を感じております。

 

(野村委員)

発表ありがとうございました。

先日から、ふれあい教育対談で朽木東小学校や皇子山中学校に訪問させていただく中で、ICTを活用した授業をいろいろと拝見させていただきました。その中で子どもさんたちは目をキラキラさせながら、機器を使いこなしておられてすごいなと感じたのですが、今は2、3歳の子どもたちも親御さんの携帯で遊ぶ姿を見かけますので、本当に幼い頃から機械に触れているのだなと感じております。

機器を整備する一方で、機器を使用する際にしてもよいこと、してはいけないことのルールの部分を、小学校の間にしっかりと身に付けたうえで、教育につながっていくといいなと感じております。

このように使おう、使わないでおこうといったルールの部分を、どのように子どもたちに伝えておられるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

 

(水口小学校小林教諭)

先ほどの発表で、「機器導入から現在までのプロセス」の1学期に実施した内容としてお伝えした部分なのですが、基本的なルールとしてiPadを使う時の約束を、全校に、子どもはもちろんですが、保護者の方にも配布しております。

その中で、例えば自分以外のIDやパスワードは使いません、友達や先生の話を聞くときはタブレット端末を触りません、授業中に使わないときはiPadを閉じておきます、といったことが決められています。また家に持ち帰っての使用もありますが、家では家の人の許しをもらってから使います、といったことを子どもたちに伝えていますし、これが良いかどうかわかりませんが、本校では夜の8時以降は学校から持ち帰ったタブレットは使いません、という約束をしています。

また子どもたちはSNSやメールを使ったり、YouTubeを見たりと、いろいろな使い方をしますが、これに関しては、友達の悪口や人の気持ちを傷つけることは人権侵害に当たること、そういったことはしないことを子どもたちに伝えていますし、保護者の方にもお伝えしています。

ただ、1年生から6年生までの発達段階に合わせてカリキュラムを組むといった、細かなところまでは十分到達できておらず、その点については先ほど課題でもお伝えしたところですが、1年生から6年生までの系統性を持って、どのように情報モラル教育をしていくのか、学校として検討していく必要があると考えております。

 

(野村委員)

そういったルールがすごく大切だと感じています。そういった教育は学校の中だけではなく、例えば外部の人権擁護委員の方も一緒になって取り組んでいただいているのでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

全ての学年ではありませんが、人権擁護委員の方にも力添えいただいて、4年生で携帯電話、スマートフォンの使い方の教室を開催しています。5、6年生では遅いだろうということで、4年生から学校と人権擁護委員が一緒になって、親子を対象として、親子スマホ教室を開催しております。今年度も1月に実施する予定となっています。

 

(野村委員)

草津養護学校の発表を聞かせていただいて、障害のある子どもたちが学習する機会が少なくなっている中で、外の世界に触れることができる非常に良い機会だと感じました。これからもよろしくお願いいたします。

 

(福永教育長)

先ほど水口小学校のiPadを使う時の約束を見させていただきましたが、これは学校の中で相談して決められたのでしょうか。具体的な内容等、どのように作られたのでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

まず情報主任と私で相談をしまして、それから各学年、全職員見ていただいて、追加・修正が必要な内容について皆さんの意見を集めて、最終的に作成したものです。初めには無かった文言が入っていたり、表現が変わったりしています。1年生から6年生まで配布するものですので、それにできるだけ対応した形にするため、みんなで作りました。

(福永教育長)

もう1点、甲賀市の小中学校は、市が機器を購入して貸し出す形になっていますが、実際に持って帰る場合等に、壊れるといったトラブルが、水口小学校では今までにありましたでしょうか。落として壊れたとか、濡れて使いづらくなったといったことはあるでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

家庭に持ち帰って壊した、濡らしてしまったということは今のところ聞いていませんけれども、授業中にうっかり手をついて、画面が割れてしまうことが、1件ありました。

 

(土井委員)

先ほどと関連する質問なのですが、先ほど大津商業高校では授業で先生の指示に従って使わせていると伺ったのですが、授業時間中に自由に使えるように生徒の皆さんに任せるとしたら、高校生であればどのような問題が生じると考えておられるでしょうか。

 

(大津商業高校松木教諭)

本校ではタブレット型のパソコンを使っているので、教師側からは生徒が何を見ているか把握できない場面が多いのですが、教師が指示した画面ではない画面を見ている生徒も実際にいましたので、そこは課題として考えております。生徒も最初は楽しくて、触ってしまうのですが、現状を見ていますと、今どのように使わなければいけないか、だんだんと分かってきてくれていますので、その辺りは大きな問題になっておりません。最初は多くの先生がそういった心配をしていたのですが、今は教師の指示にしたがって操作をしてくれている状況です。

 

(土井委員)

ありがとうございます。今のお話も踏まえての意見です。ICTを教育で活用する場合、ICTを利用すること自体が目的ではなく、基本的には教育を目的として使うことが原則であると思います。

その際に重要なのは、特に障害のある児童生徒の皆さんを指導されている養護学校の場合によく現れているのですが、基本的にはこれまでできなかったことができるようになる、これまで不便だったことが便利になることが根本だと思います。

先生方あるいは児童生徒の皆さんが今までできなかったことが、ICT機器を使ってできるようになる、あるいはすごく不便だったことが便利になる、ということを見つけて使っていただくことが一番重要だと思います。使うことでかえって不便になっていては意味がないので、それをどのように見つけていくかが重要だと思います。

その際の視点としては、先生の側の視点と児童生徒の皆さんの側の視点があると思います。先ほど発達段階について申し上げましたが、小学校1、2年生の皆さんに自分で判断することは難しいと思いますが、5、6年生ぐらいから主体的に活用できるようになって、おそらく高校生になればそうなると思います。

そのルール作りについては、特に小中学校くらいまでは大事であると思うのですが、大学になるとほとんど好きにさせています。授業中に指示されて使うのではなく、ノートパソコンを持ち込んで、ノートを取るのもほとんどみんなワードを使っていますし、例えば辞書が必要な場合には、紙媒体でなくて勝手にネットで調べている状況です。

子どもの方も、主体的にやるほうが早い部分は、先生に指示されるよりも、自分でやっていくと思います。そのような方法で、例えばノートを取る、あるいは資料を見るようにしていると、今度は学生の方から先生に注文が来ます。資料提供はこちらの方法が楽だとか、こちらの方法が便利だという注文が来ると思いますので、それを組み合わせていくのが、一番良い活用の仕方だと思います。

なぜそのようなことを言うかというと、教育のために使うことも重要な目的ですので、効果的に使う必要があると思いますが、大人になったらこのツールを自分で使う必要がありますので、先生に指示されたとおりに使うというものではなくなっていくと思うのです。そういった使い方が発達段階に合わせて出てくると思います。

たしかに松木先生がおっしゃったように、関係のない画面を見ているという問題はないわけではありませんが、それは僕らの時代でも、授業中に漫画を読んでいたり、寝ていたりしたことと変わらないと思います。そのやり方が変わってきているだけで、逆に活用する学生はどんどん活用していきますし、グループで議論させていても、勝手にパソコンを使いながらいろいろなものを調べて、意見交換しながらやっています。それで最後に報告させると、しっかりしたものを作っていたりするので、信頼関係も必要だとは思いますが、そのように主体的にやらせる環境を作っていった方がいいし、特に県立高校でBYODにするのであれば、せっかく買ったのに先生が指示したときしか使わないのでは、BYODにする趣旨に関わってくると思うので、どのように使わせるかということが重要だと思います。

特にできること、できないことという意味では、大きく3点あると考えていて、1つは教室の中にいる人だけが相手ではない、空間的制約がなくなることです。次に、先生が1回しゃべったことを、その時に聞かないといけないのではなくて、動画を提供すれば繰り返し聞けて、聞きたい時に聞けるという、時間的制約が取り外せることです。それから情報処理が自動化できるので、先生が手作業でやっていたことが一挙に早くなる。このあたりが大きなことで、こういった特性を生かしながら、先生と児童生徒がいろいろと組み合わせていけるようにしたほうがいいし、それを可能にするためには、基本的なルールづくりや環境の整備が必要だと思っています。私からの意見です。

 

(三日月知事)

今の土井委員の御指摘、御意見については、私もその通りだと思います。

先ほど、高校では1人1台端末になっているけれども、自由に使えるのですかという御質問があって、先生が指示したときに使っています、というところから、後段の御意見については、それで良いのだろうかという趣旨のお話であったと思うのですが、県立高校のBYODの方針で、自由に使ってはいけないことになっているのですか。別に先生が国語を教えていても、自分は数学を勉強していいのでしょう。それがICTではないのですか。

 

(福永教育長)

高校の先生に、数学の授業のときに、英語をやっていていいよ、とは言いにくいと思います。ただ、何かを調べたいと自分が思ったときに、先生の指示がなくても自由に調べたりできるとか、その辺りのルールはこれから作っていかなければならないと思っています。

 

(三日月知事)

当然ルールは必要だと思うのですが、そのルールが昭和のルールと言いますか、ICTを生かせないルールにならないようにしないといけないと思いましたね。基本的に授業も全部録音、録画していいことになっているのですよね。録音、録画してはいけないことになっているのですか。

 

(大津商業高校小島校長)

通常の授業を録音、録画することはあまり想定しておりません。しても良い、してはいけないということも言ってはいないのですが、必要に応じて、例えば登校したくてもできない生徒のために録画をして、あとで提供するというようなことはやっています。

 

(土井委員)

授業のやり方によると思います。先生がしっかりしたノートを作って、指導しているような授業は基本的に配信可能なのですが、子どもが自由に発言している授業が録画されて、外部に流れると大きな問題になりかねません。簡単な知識を与えるために、先生が事前に動画を撮ったものを流すのは、繰り返しやってもおそらく問題ないのですが。使い方によると思います。

(三日月知事)

なるほど。ありがとうございます。

視点を変えてお聞きするのですが、いずれの学校の先生方の取組も、このICT機器の活用が可能性を広げるのだな、学びを深めるのだなということがわかりました。

先生方の働き方改革という面ではどのように貢献しているのでしょうか。いちいち丸つけをしなくても、全部自動的に採点されて随分楽になりましたということなのか、別途紙に写さないといけないから、余計に大変になっているのか。

そのあたりはまだ過渡期の部分もあるとは思うのですが、実感としてどうですか。

小学校、高校、特別支援学校の現場では、どのような状況になっていますか。

 

(福永教育長)

現場で実際に1人1人の端末から得たデータを、先生方がどのように利活用されているのか、あるいは成績処理までリンクしていて、校務支援等で活用できるようになっているのか、そのようなお話だと思いますが、いかがでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

楽になった点では、先ほどの発表でもありましたが、子どもたちや保護者のアンケートをiPadや、保護者の携帯電話等で行っていただいています。それが一気にデータとして集まってきますので、かなり楽になっていると実感しています。

授業については、資料を印刷しなくても、デジタル教科書等を大画面に映せば、子どもたちがそれを見ることができますので、そういった作業の時間はかなり削減できていると思います。

成績についてですが、ペーパーテストの結果を校務支援システムに反映させるところまでは行けてないのですが、先ほども御紹介したとおり、理科や総合のまとめを子どもたちが自分のフォルダに保存したり、提出箱に送ったりすると、随時担任の方から見られますので、例えば印刷したものを見て評価するのではなく、教師用の端末に入ってきたものを順番に見ていけば評価ができるので、そのあたりでも楽になっていると思います。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

高校の先生方の働き方や普段の活動について、進んできている点は、ありますでしょうか。

 

(大津商業高校小島校長)

本校に限ったことかもしれませんが、まだ今年スタートして1年目ということで、教員側の対応が難しいのは正直なところです。若い先生を中心に、推進リーダーが少しずつ広めながら、財産を作って、貯めてくれているような状態なので、しばらくはそういったデータやサンプルの収集をしていますが、それが波に乗ってくれば、それを共有できると思っているので、もうしばらくみんなで頑張ろうというところです。

成績処理等がペーパーレスになってきているのは事実で、印刷量は減っております。今後は中間考査や期末考査でもペーパーレスで実施できるような方法を、教科で試してもらっています。我々の負担が減らなければ意味がないと思っておりますので、どのように活用するか、試行しながら取組を進めていきたいと思っております。

 

 

(福永教育長)

大塚先生に特別支援学校について発表いただいた中で、授業参観や保護者等との連絡が今まで頻繁にできなかったものが、ICTを活用してできるようになったというお話がありましたが、先生方が感じておられる思いは何かあるでしょうか。

保護者に常に見てもらえるという時間的なものもあるかもしれませんし、保護者と学校が繋がっている感覚が従来よりも高まってきていると感じるのですが、いかがでしょうか。

 

(草津養護学校大塚教諭)

保護者の方に言葉で伝える場合、感じ方の違いや誤解があったりするのですが、言葉で伝えるよりも、タブレットで子どもの写真や授業の様子を撮影した動画を見せることで、共通理解の助けになっていると感じています。

先ほど水口小学校や大津商業高校のお話にもありましたが、子どもたちの様子を、写真を印刷して提示するよりも、iPad等のICT機器を活用した方が早いですし、教師間の教材の共有もICT機器を使うことで早くなっています。一昔前はビデオカメラで撮った授業の様子を、テレビを出して教師間で見るために、準備に時間がかかっていたものが、iPad等を活用することで素早く共有できており、時間的な制約は減っていると思います。

 

(窪田委員)

今日は貴重な報告ありがとうございました。

それぞれの生活年齢や発達段階、特別な教育的ニーズに即して利活用していただいて、それぞれの学校で誠意ある取組をしていただいていると思いながら聞かせていただきました。

一つ教えてください。この1年使ってこられて、これまで伺った内容で、教員間のリテラシーや使いこなせる力の差があって、そこは研修を丁寧にしているけれども、やはり人が足りない、時間も足りないといった点が難しいという話があったと思います。

それ以外のところで、例えば子どもの個々の能力差、小さい時から使い慣れている子どもと、そうでない子どもとの差や、家庭環境の差、あるいは高校の発表資料のスライドにあったように、机にノートを出して、パソコンも置いて、落としてしまうのではないかと思うくらい机上が狭いことなど、率直に難しいと感じておられることを聞かせていただけますか。

 

(福永教育長)

それぞれの学校で今まで実際にやってみて、子どもたちや環境について、課題として感じておられることはあるでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

一番困ることは、機器に不具合が起こることです。昨日と同じように使っているのに、なぜか今日は使えないということがあります。

例えば、教師用の端末からデータを送信することがあるのですが、全く同じ作業をしていて、インターネットにもつながっているのに、なぜか授業のときにデータの送信がうまくいかず、授業が止まって困ることがありました。

他のクラスでも起こっているようですが、別の日にはうまくいくこともあるので、何が原因か私達には分からずに困ってしまうことがあります。

 

(大津商業高校小島校長)

今御指摘いただきましたが、机の大きさは問題になっていまして、マウスを落として壊してしまうことはよくあります。端末を不安定な置き方をする生徒もいるので、机間巡視の際にも気を使います。ただ、机を大きくすると、今度は教室の容量の問題として、40人入らなくなってしまいます。

まだ教科書がデジタル化されていませんので、今後パソコンの中に教科書とノートが一体化されて、デジタルペンでノート代わりに書き込めるようになれば、本当のICT化という形になるのかもしれないですが、今は何とか壊さないよう、みんなで注意を呼びかけているところです。

 

(草津養護学校大塚教諭)

地域の学校でももちろんそうだと思いますが。特別支援学校でも教室だけでの学習ではなく、音楽であれば音楽室、体育であれば体育館で学習します。他のクラスとの合同学習の形態の授業も多いのですが、場所が変わると機器のインターネット接続がうまくいかないことがあり、提示しようと思っていたものが止まってしまうといった課題は多いです。

ただ、今年度、大型提示装置が各教室に整備されました。これまではテレビを運んで機器をつなぐ準備が非常に大変だったのですが、どの教室でも資料を提示することができる環境になり、教師にとっても、子どもにとっても学習のしやすい環境になりつつあると感じています。

 

(中條副知事)

今日はどうもありがとうございました。大変参考になりました。

土井先生がおっしゃっておられましたけれども、特に草津養護学校の児童生徒がそうだと思うのですが、機器を活用することで、できなかったことができるようになる。また事務局の説明にもありましたが、自分で文字を入力できなかった子どもが、入力できるようになるといった、様々な可能性があると感じました。

障害のある方だけではなくて、外国にルーツがある子どもたちもいると思いますし、またそういった子どもたちに限らず、ソフトやアプリを使うことによって、これまでできなかったことができるようになって、可能性が広がっていくと感じました。

もし事例があれば教えていただきたいのですが、例えば水口小学校では家庭に月2回持ち帰って、自分で学習したいことを選んで学んでいると伺いましたが、子どもたちがどのようなものを選んでいるか、また自分で選んで学習したデータを蓄積して、それを授業に活用することはされているのでしょうか。大津商業高校では京都大学や内田洋行との連携事業で、習熟度や演習問題への活用をされていて、生徒の理解度が増していると伺いましたが、そういったデータの蓄積や活用の取組があれば、教えていただきたいと思います。

(水口小学校小林教諭)

まず子どもたちがどのように活用しているかということについて、私は3年生の理科の授業に入っているのですが、3年生であれば3年生の内容を学習しているのかというと、算数が苦手、国語が苦手という場合に、1年生、2年生の内容から学習している子どもたちがいます。高学年でも同じ状況です。5年生であっても、4年生の内容を勉強している様子が見られます。

自分の学年の学習をする子どももいますし、それぞれが興味を持った内容を学習しています。復習が必要だと思えば気軽にできて、間違えても問題ありませんし、正しい答えをすぐに教えてもらえるので、一生懸命取り組めて、大変効果があると思っています。

データの蓄積についてですが、学習をした記録が全て残ります。良い成績を取ると宝石のようなものがもらえて、自分の頑張りが数値化されて、視覚的に分かるようになっています。子どもたちにとってもそれが励みになっていて、中には「宝石を何個集めた」と言ってくれる子どももいます。土日に端末を持ち帰った際にも、宝石をたくさん集めたという自分たちの頑張りを振り返ることができるようになっています。

次に、蓄積したデータを授業に活用することについては、データを授業に直接活用することは、今はなかなか難しいのですが、端末を使って教員から課題を出すことができて、それができているかどうか、一目でチェックできます。宿題を出した週明けの月曜日、火曜日には先生方が確認して、復習できているかどうかのチェックをすることができています。

 

(大津商業高校松木教諭)

京都大学と内田洋行との連携の中に「BookRoll」というものがあるのですが、そのソフトフェアを使って、生徒が学習した問題を自分で分析することができます。教員も生徒が学習したデータを分析ツールによって把握できて、それがエクセルのデータとして残ります。

どれだけ学習したか、どの部分が分からなかったかが、視覚的にわかりますので、週末に課題等を取り組んだあとに教員がそれを確認して、次の授業の準備をしたり、新しい課題を出したりしています。このあたりはまだ試行的な部分で、取り組んでいる生徒は全員ではないのですが、取り組んでくれている生徒は、しっかりと成績が上がっていると聞いています。

 

 

(窪田委員)

それぞれの学校での実践をお伺いして、ICTはやはり教具として、安心して誰もが学習に参加できるためのツールでもあるし、特に読み書きに障害のある子どもにとっては、鉛筆とノートの代わりになる教具の側面があると感じました。

例えば滋賀大学附属特別支援学校の小学部では、朝はなかなか気持ちやモチベーションが持てずに、大きな声を上げる子どもが同じクラスにいると、朝の会にも参加できなくなってしまう子どもがいますが、学校に登校して、朝の会は別の部屋から遠隔で参加することで、徐々に気持ちが落ち着いて、教室に戻れるといったことがあります。

そういった教具としての側面と、確かな学力とか豊かな発達、あるいは主体的対話的で深い学びに迫っていくための教材としての側面があると思いました。ただ調べるための道具ではなく、思考をしっかり深めていくために、それぞれの発達段階や生活年齢に合わせた使い分けができるよう、これから蓄積できればと思いますし、子ども一人ひとりが、自分に合った使い方を選んで、主体的に使っていけることが大事だと思いました。直接手触りがある紙と鉛筆で学ぶ方が良い子どももいるでしょうし、明るさや音があるという点で、端末の方がそこに気持ちを向けることができる子どももいると思います。いろいろな使い方を提供しながら、子どもが将来にわたって活躍できるような学び方ができればと思います。

最後に、障害のある子どもたちにとって、障害があって難しいこと、例えば手で入力ができるといった、障害のない子どもたちが当たり前に享受できていることを、最低限保障することが必要だと思います。これは入力できるためのツールであったり、障害があって施設に入っているから、コロナ禍では人と会えないという場合に、タブレット越しに好きな人に会えることであったりすると思いますが、私達が当たり前にできることを保障していくことは、行政の責任として合理的配慮の観点からも、しっかり整えていきたいと思いました。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

先ほどのお話にありました、水口小学校の「ジャストスマイルドリル」ですが、資料には3年のものが載っていますが、3年生の子どもが4年生のものを見ることができるのですか。あるいは2年生の部分を復習したいと思ったときにも、できるようになっているのでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

どの学年でも見ることができます。進んでいる子どもは、既にやっているかもしれません。

 

(福永教育長)

なるほど。それで、小学校3年生であっても英語が選択できるのですね。

 

(水口小学校小林教諭)

外国語は音声が出ますので、子どもたちが特に気に入っていて、どんどん使いたいと言います。音が被らないようにイヤホンを貸し出して、大変意欲的に取り組んでいます。

 

(福永教育長)

先ほどあったように、それぞれ個によって差があるなかで、個に応じた学びがこういったものを使うことで、うまくできるということがあると思います。また自分のものを録画、録音して残しておくことは非常に良いと思います。例えば体育でも映像で見ることで、自分の上達がよく分かるのではないかと思います。先ほど土井委員がおっしゃったように、時間的な制約がなくなるとかいう部分もあると思いますし、遠隔授業によって空間的な制約がなくなるということもあると思います。

それでは時間が少なくなって参りましたので、私の方から、今日いただいた御意見や、今後検討していかなくてはならない点について、まとめさせていただきます。

一つは、先生方に苦労しながら取り組んでいただいておりますので、分からないとき、困ったときに先生が相談できる、人的な支援を意識していく必要があると思います。外部の人材による支援、学校内での支援も含めて、検討していく必要があると思いました。

次に、小学校1年生から高校3年生まで、それぞれの段階に応じた使い方について、工夫を積み重ねていかなければいけないと思います。その際に、ICTによって時間的、空間的な様々な制約が少なくなる特性を、いかにうまく生かして、一人ひとりの個に応じた学びを提供するか、例えばドリルといったものは有償であると思いますので、金銭的な負担も含めて考えていかなければならないと思っています。

また、発達段階が上がっていけばもっと自由に使える部分があっても良いのではないか、という御意見を知事からいただきましたが、例えば自由に使っていい時間を30分設けて、自分で何をするか考えるということもできると思います。その他、校務や資料の印刷、配布といった業務についても、機器を使って工夫できる部分があるのではないかと思っています。

気になった点として、小林先生におっしゃっていただきましたが、不具合が生じた場合の対応についても検討する必要があると思います。不具合があった場合に、45分の授業の中で急に切り替えることは難しいと思いますので、その辺は課題として考えていきたいと思います。

高校ではBYODの方式としますので、保護者の皆さんの負担、そして子どもたちの思いに応えられるICTの活用をもっと考えていかなければならないと思っています。

それでは最後に皆さんから御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

(岡崎委員)

先般、ふれあい教育対談で学校を訪問した際に、先生方には教室にしか端末がない、子どもたちに教えるために、試行錯誤する端末がないと伺いました。

職員室にはパソコンがあるのですが、子どもたちと同じタブレットを先生方が持てずに苦労されている学校がありましたので、そういった部分の充実は必要だと思いました。

また先ほどの発表の中でもありましたが、持ち出しができずに教室でしか使えないとか、体育館で使いたいときは体育館の端末しか使えない学校もありましたが、昔、鉛筆がロケット鉛筆、シャープペンに変わったときのように、子どもたちが好奇心を示すものはどんどん自由に使える環境が大事であると感じました。

あとは先生方の時間が節約できるようにサポートする体制を構築していただきたいことと、先生方には資料を作る際に、凝り過ぎないよう意識していただきたいと思います。

(福永教育長)

ありがとうございました。

水口小学校では先生用の端末はあるのでしょうか。

 

(水口小学校小林教諭)

授業する教員には全て配布されております。

 

(福永教育長)

それは授業のないときに職員室でも使えるのですか。

 

(水口小学校小林教諭)

職員室でも使えますし、教室に持っていっても使えます。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

そういった部分でまだまだできていないところは進めていく必要があると思います。

 

(土井委員)

先ほど申し上げたように、できなかったことができるようになる、あるいは不便だったことが便利になることは大事なのですが、ICTを活用することで余裕が出てきた際には、ICTではできないことをするように移行することが大事だと思います。

個々に合わせた習熟度別学習等は基本的にICTを活用する方向であると思います。最初に導入する際は大変ですが、ICTは情報が蓄積されていくので、繰り返し使うことができるようになって、省力化できると思います。

空間的、時間的制約を超えるものはICTを活用することになりますが、一つの場所に30人、40人の子どもと先生がいる環境でなければできないことに集中していただくことが重要で、そこまで進めることが、目的を実現できている状況であると思います。

時間がかかると思いますが、その方向で現場で頑張っていただきたいと思います。

 

(福永教育長)

では最後に知事から一言いただけますでしょうか。

 

(三日月知事)

その前にせっかく来ていただいたので、大津商業高校の先生、水口小学校の先生、草津養護学校の先生から、これだけは聞いてほしいということはありますか。これだけはやってほしい、これだけはやらないでほしいということがあれば、お願いします。

 

(水口小学校小林教諭)

先ほどもお伝えしたのですが、ICTを活用するためには、やはり人が必要です。先生方が思ったことを形にするためには時間がかかりますので、そこに人をつけていただけると、現場としては大変ありがたいと思います。

 

(大津商業高校小島校長)

全く同じことになりますが、校内で担当者が非常に苦労してくれているので、そういう人の負担を減らすための支援を、重点的にしていただきたいと思います。支援員の方にも来ていただいていますが、月1回、2回という形では、担当者の負担が大きくなっている状況です。

それから学校用の機器について、本校では後援会や学校で、生徒用と同じものを準備していただいているのですが、今後どんどん機器も新しく、良い物になっていきますので、それを随時学校で準備すると、結局保護者の負担になってしまいます。

今後BYODはスマホやタブレットでもよいのか、またセキュリティの部分で、課題はたくさんあると思うのですが、そのあたりを現場の話を聞いていただきながら進めていただいて、担当者の負担を何とかみんなで分担していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

(草津養護学校大塚教諭)

私も両校の先生方と同じなのですが、やはり専門的な知識を持っている人材がまだまだ不足している状況です。本校には200人弱の教職員がいる中で、情報担当5名がいろいろな先生方の疑問や相談に対応しています。支援員の方も来てくださっていますが、人的な面で御協力をいただけたらと思っております。

 

 

(三日月知事)

お聞きした以上は、その思いに答えていきたいと思います。特に基盤の整備ですね。通信環境、そして、機器・機材、特に人が足りないというお話があったので、そのあたりは教育委員会としっかり議論して、どういう人をどういう形で配置していくのがいいか、よく考えたいと思います。

また同時に、試行錯誤の域をまだ抜けないところもあるのですが、やりながらルール、リテラシー、モラルを高めていく、そういう取組もさらに充実させていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

今日は本当に有意義な議論をすることができました。感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

それでは時間も参りましたので、以上で第3回の滋賀県総合教育会議を閉会いたします。皆様、長時間にわたりありがとうございました。

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