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セタシジミ(資源評価の部屋)

これまでの取り組み

 セタシジミは琵琶湖固有種であり、主な生息場所は琵琶湖沿岸の底質が砂礫から砂泥にかけての水深10m以浅のところです。産卵は主に5月から8月頃にかけて行われます。

 汽水域に生息するヤマトシジミとは異なり、ふ化した幼生は、浮遊期間をもたず、すぐに着底して仔貝となり、3年から4年にかけて漁獲サイズの殻長1mmに達します。かつては、瀬田川につながる南湖の漁場を中心に5000トンから6000トンの漁獲がありましたが、湖中砂利採取や外来性の水草の異常繁茂などにより南湖の広大な漁場が喪失するなどして、現在では50トン前後の漁獲量となっています。(図1)。

図1
図1 滋賀県におけるセタシジミの漁獲量の変動

本県のセタシジミ漁業は、近江大橋以北の主に琵琶湖北湖において漁船からマンガンと呼ばれる貝桁網を投げ入れ、湖底を曳き回して漁獲する手繰第3種漁業(貝曳き網漁業)と主に近江大橋以南において7,8m程度の柄の長い貝掻き網(ジョレン)で漁獲する大きく2つの漁法があります(図2)。

 このうち手繰第3種漁業は、操業区域が近江大橋以北の琵琶湖に制限されています。

図2
図2 セタシジミの漁具(左・中央:貝桁網(マンガン)、右:貝掻き網(ジョレン))

 手繰第3種漁業(貝曳き網漁業)の操業期間は、産卵保護のため漁業許可の制限措置により5月1日から7月31日を除く期間(8月1日から翌年4月30日まで)とされています。また、小型の個体の保護のため滋賀県漁業調整規則によって殻長制限(15mm以下の採捕禁止)と貝桁網の網目制限(28mm以上)が定められています。生息密度が大きく低下した2006年には琵琶湖海区漁業調整委員会の指示によって殻長18mm以下が採捕禁止とされ、規則に上乗せした制限が課されています。

 また、近年は毎年、天然親貝を採捕し、内湖で肥育させたうえで採卵し、0.3mmまで育てた稚貝を北湖と南湖にそれぞれ1200万個体放流しています。

資源状況(生息状況)等

 セタシジミの資源管理においては、近江大橋以北と近江大橋以南では漁獲方法が異なるとともに、シジミの生息密度や漁場の環境が大きく異なることから両区域を分割して取り組んでいくこととしています。

セタシジミ(近江大橋以北)

 水産試験場では、毎年5月から6月に北湖の主要7漁場において試験操業を行い、その生息密度(殻長14mm以上)の変動を調査しています。

 その結果、近年の生息密度は1.0個/m2を下回る厳しい状況が続いており、直近の2024年は0.7個/m2となっています。

 このような状況の中、当面は、近年では比較的順調な漁獲があった2010年~2012年の資源レベルである主要漁場の平均生息密度2.0/m2が資源管理目標として設定されました(3)。また2024年度からは、これら資源管理目標を達成するための漁業者の自主的な管理措置として、81~15日までの期間の採捕自粛および沖島南の漁場の一部区域での採捕自粛(保護区域の設定)に新たに取り組まれています。

図3
図3 主要漁場におけるセタシジミ親貝の生息密度
セタシジミ(近江大橋以南)

 漁業者の協力のもと毎年4月から12月にかけて月1回の頻度で貝掻き網を用いた生息状況調査を行い、その年の漁況との比較を行っています。その結果、漁獲サイズ(殻長18mm以上)の生息密度が30個/m2を上回ると漁獲は好調に推移していることが明らかになりました。そこで資源管理目標として殻長18mm以上のシジミの生息密度30個/m2が設定されました(図4)。しかし、直近4カ年はこの密度を下回っている状況が続いています。そこで2024年度からは資源管理目標を達成するための漁業者の自主的な管理措置として、新たに瀬田川共同橋からJR琵琶湖線鉄橋の間の区域が採捕自粛区域(保護区)とされました。

図4
図4 近江大橋以南における殻長18mm以上のセタシジミ生息密度の変動

課題と今後の進め方

セタシジミ(近江大橋以北)

 図5の青枠で示したように、近年、産卵期を迎えた親貝の肥満度が相対的に低い年(201220172019)があり、この事象が生じた年には、産卵量が減少することがわかっており、資源回復の妨げとなっています。また、セタシジミの幼生はその生態として浮遊期を持たないことから、漁場ごとにその状況に応じた資源管理が必要と考えられます。

図5
図5 彦根沖におけるセタシジミ肥満度の変動
セタシジミ(近江大橋以南)

 調査の結果、河川流量の変動が生息環境や餌料プランクトンの組成を変化させ、親貝の栄養状態に影響を与えて翌年のシジミ稚貝の発生量を変化させることが明らかになりました。今後は、河川流量など物理環境についても注視していく必要があります。

図6
図6 瀬田川洗堰の放流量と出現したプランクトン組成の関係

関連情報

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