○滋賀県手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通等の促進に関する条例

令和5年12月28日

滋賀県条例第44号

滋賀県手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通等の促進に関する条例をここに公布する。

滋賀県手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通等の促進に関する条例

私たちは、平成31年に滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例を制定し、障害を理由とする差別を解消することを誓い、県民の共感と連帯、そして協働による共生社会を実現することを決意した。

他者への共感や様々な人々との連帯および協働は、障害の有無にかかわらず、自分の考えや意見を伝え合い、そして相互に信頼を深め、感情を理解していく中で、生み出されてくるものである。

その意味において、障害者自らが、情報を十分に取得し、取得した情報をもとに意思の決定や意見の表明を行うこと、また、他者との意思疎通を不便なく図ることができる環境を整えることは、障害者が社会の一員として、あらゆる分野の活動に参加することを促すだけでなく、私たち県民が目指す共生社会をより豊かなものにしていくためにも必要不可欠である。

我が国では、教育の場において読唇と発声を用いた口話法による教育を進めた際に、ろう者の言語である手話の使用が制約されたという過去があり、また、今日においても、障害者の特性に応じた言語その他の手段が数多く存在するにもかかわらず、社会における理解や配慮の不十分さのために、情報の取得や利用、意思疎通の場面で、障害者が困難を感じることが依然としてある。

私たちは、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、能動的に参画できる共生社会の実現に向け、障害者がこれまでに経験し、また今日においても相対する意思疎通等における困難を認識するとともに、手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通等を促進することを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例(平成31年滋賀県条例第8号)第24条の規定の趣旨にのっとり、手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通ならびに情報の取得および利用(以下「障害の特性に応じた意思疎通等」という。)の促進について基本理念を定め、県の責務等を明らかにするとともに、障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、障害の特性に応じた意思疎通等を促進し、もって全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 障害の特性に応じた言語その他の手段 手話、筆談、点字、拡大文字、手書き文字(手のひらに指先等で文字を書き伝える方法をいう。)、触手話、指点字、平易な言葉、実物または絵図の提示または手渡し、身振り、手話通訳、要約筆記、点訳、音訳、代読、代筆、盲ろう者向け通訳、字幕、代用音声(咽頭摘出により失われた発声機能に代えて器具等により音声を発する方法をいう。)、文字盤、重度障害者用意思伝達装置(指先、眼球等の動きで機器を操作することにより文字または音声で意思を伝達する装置をいう。)その他の意思疎通ならびに情報の取得および利用のための手段をいう。

(2) 障害者 滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例第2条第1号に規定する障害者をいう。

(基本理念)

第3条 障害の特性に応じた意思疎通等の促進は、障害者が自らの意思によって行う障害の特性に応じた言語その他の手段による意思の表示が重要であるとの認識の下に、行われなければならない。

2 障害の特性に応じた意思疎通等の促進は、手話は独自の体系を有する言語であって、ろう者が心豊かな日常生活および社会生活を営むために大切に受け継いできた文化的所産であることについての理解が深まるよう、行われなければならない。

3 障害の特性に応じた意思疎通等の促進は、障害者でない者による円滑な意思疎通ならびに情報の十分な取得および利用にも資するものであるとの認識の下に、行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策を総合的に策定し、および実施するものとする。

2 県は、障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策の策定および実施に当たっては、国、市町および県民等(県民、障害者関係団体その他の関係者および事業者をいう。以下同じ。)と連携し、および協力するものとする。

(県民等の責務)

第5条 県民等は、基本理念にのっとり、障害の特性に応じた意思疎通等に関する理解を深めるとともに、県が実施する障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策に協力しなければならない。

(啓発および学ぶ機会の確保)

第6条 県は、県民等が障害の特性に応じた意思疎通等に関する理解を深めることができるよう、障害の特性に応じた言語その他の手段に関する啓発およびこれらを学ぶ機会の確保を行うものとする。

(環境の整備)

第7条 県は、県民等が障害の特性に応じた意思疎通等を円滑に行うことができるよう、障害の特性に応じた意思疎通等を支援する者を派遣する体制の整備、障害の特性に応じた意思疎通等に関する相談に応ずる拠点の設置その他の必要な環境の整備を行うものとする。

(人材の確保等)

第8条 県は、障害の特性に応じた意思疎通等を支援する者の確保、養成および資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。

(情報の発信等)

第9条 県は、障害者が円滑に県政に関する情報を取得することができるよう、障害の特性に応じた言語その他の手段を利用して情報を発信するよう努めるものとする。

2 県は、障害者が災害その他非常の事態において、障害の特性に応じた言語その他の手段を利用して必要な情報を取得することができるよう、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(情報通信機器等の利用方法の習得に係る取組)

第10条 県は、障害者および障害者関係団体その他の関係者が障害の特性に応じた意思疎通等を円滑に行うことに資する情報通信機器その他の機器および情報通信技術を活用した役務の利用方法を習得することができるよう、講習会の実施、相談への対応その他の必要な取組を行うとともに、これらの取組を行う県以外の者に対して機器の貸出、講師の派遣その他の必要な支援を行うものとする。

(県民等の取組に対する支援)

第11条 県は、県民等が行う障害の特性に応じた言語その他の手段に関する啓発、これらを学ぶ機会の確保その他の障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する取組に対して、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(調査研究の推進等)

第12条 県は、障害の特性に応じた意思疎通等の促進のために必要な調査および研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

(実施状況の報告等)

第13条 知事は、障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、毎年度、当該施策の実施状況を滋賀県障害者施策推進協議会に報告し、その意見を聴くものとする。

(障害者等による啓発等)

第14条 障害者および障害者関係団体その他の関係者は、県民等が障害の特性に応じた意思疎通等に関する理解を深めることができるよう、それぞれの立場において、障害の特性に応じた言語その他の手段に関する啓発に努めなければならない。

2 障害者関係団体その他の関係者は、それぞれの立場において、県民等が障害の特性に応じた言語その他の手段を利用することができるよう障害の特性に応じた言語その他の手段を学ぶ機会の確保に努めるとともに、県民等が障害の特性に応じた意思疎通等を円滑に行うことができるよう環境の整備に努めなければならない。

(事業者による環境の整備)

第15条 事業者は、次に掲げる場合において、県民等が障害の特性に応じた意思疎通等を円滑に行うことができるための合理的配慮(滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例第2条第4号に規定する合理的配慮をいう。)を的確に行うため、従業員に対する研修の実施その他の環境の整備に努めなければならない。

(1) 障害者に対し商品を販売するとき。

(2) 障害者に対し医療、保健、福祉、文化芸術活動、スポーツ等に係るサービスを提供するとき。

(3) 障害者を雇用するとき。

(学校等の設置者による啓発等)

第16条 学校等(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校、同法第134条第1項に規定する各種学校、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園および児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所をいう。以下同じ。)の設置者は、当該学校等の学生、生徒、児童および乳幼児(以下この条において「学生等」という。)に対し、当該学校等の学生等が障害の特性に応じた意思疎通等に関する理解を深めることができるよう、障害の特性に応じた言語その他の手段に関する啓発およびこれらを学ぶ機会の確保に努めなければならない。

2 学校等の設置者は、当該学校等の学生等およびその保護者からの当該学校等における障害の特性に応じた言語その他の手段の利用に関する相談に応ずることができるよう、必要な相談体制の整備に努めなければならない。

3 学校等の設置者は、当該学校等の職員の障害の特性に応じた言語その他の手段に関する知識および技能の向上のため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(財政上の措置)

第17条 県は、障害の特性に応じた意思疎通等の促進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(検討)

2 知事は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行状況および手話に関する法制の整備の動向等を勘案し、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

3 前項の検討に当たっては、滋賀県障害者施策推進協議会の意見を聴くものとする。

(滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例の一部改正)

4 滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

滋賀県手話をはじめとする障害の特性に応じた言語その他の手段による意思疎通等の促進に関する…

令和5年12月28日 条例第44号

(令和5年12月28日施行)