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最新の文献から【総説】

R-24-4-1 アレルギー疾患や喘息に特化した遠隔医療(telemedicine)2022年の状況:EAACIポジションペーパー⇒遠隔医療の可能性と限界Smolinska S et al. Telemedicine with special focus on allergic diseases and asthma – Status 2022: An EAACI position paper. Allergy 2024; 79: 777-792.

遠隔医療とは医師と患者が距離を隔てたところでインターネットなどの情報通信技術を用いて診療を行う行為であり、COVID-19パンデミックの際に急速に広まった。患者、医療者双方にとってコストや時間の削減につながるが、完全に対面での診療に置き換わるものではない。秘匿性や情報の安全性を確立することも課題である。本総説ではアレルギー疾患や喘息の治療における遠隔医療適用の可能性と限界について考察している。

 

R-24-4-2 腸内細菌が免疫系や欧米に多い疾患に与える影響の機序としての門脈血中高濃度代謝産物の可能性⇒免疫細胞は門脈で教育される?Wang Q et al. High metabolite concentrations in portal venous blood as a possible mechanism for microbiota effects on the immune system and Western diseases. J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 980-982. ★★★

腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は体循環の中で特に門脈血中において高濃度となる。そのため、免疫細胞は門脈を流れる時に最も短鎖脂肪酸の影響を受けて、G蛋白共役型受容体を介するシグナルやヒストン脱アセチル化などを通じて免疫機能が調整される、との仮説。門脈系こそが短鎖脂肪酸の効果発現に重要であるとの発想は興味深い。

R-24-3-9 食物アレルギーにおける健康格差を考える⇒誰一人取り残さない食物アレルギー治療をDehbozorgi S et al. Addressing health equity in food allergy. J Allergy Clin Immunol Pract 2024; 12: 570-7.

緊急時の対応、発症予防、食料供給不安など、食物アレルギー患者を取り巻く健康格差の問題を考察。

 

R-24-3-10 アナフィラキシーに対する吸入アドレナリン見直す時期?⇒アドレナリン吸入療法を再考するShaker MS et al. Inhaled epinephrine for anaphylaxis. Time for another look? Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 267-9.

アナフィラキシーの特効薬であるアドレナリンは筋注投与が基本だが、近年経鼻、舌下など注射以外の投与法が検討されている。一方で吸入による投与法は過去に検討されたが現在ではあまり用いられていない。本総説では、吸入によるアドレナリン投与のエビデンスを再検討し、アナフィラキシー早期に重症化予防で使用する可能性について再検討する価値があるかもしれないと述べている。

 

R-24-3-11 食物アレルギーにおける共有意思決定(SDM)わくわくする時代を道案内⇒必要な3つのステップAnagnostou A et al. Shared decision-making in food allergy. Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 313-320. ★★

食物アレルギーの予防、診断、治療には多くの選択肢があり、患者、医師双方にとってSDMのプロセスが重要な意味を持つ。本総説では、食物アレルギーのSDMについて検討した論文をもとにこの問題を考察。特に、医師‐患者間の2方向性の会話(ステップ1)、患者にとってのオプションについての話し合い(ステップ2)、どのオプションを選択するかの話し合い(ステップ3)、について紹介。

 

R-24-3-12 牛乳及び鶏卵加工食品を再考する⇒“梯子”を登る感覚でUpton JEM et al. Baked milk and egg diets revisited. Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 328-336. ★★★

牛乳または鶏卵アレルギーであっても加工品であれば摂取可能なことが多く、安全摂取量を経口負荷試験で確認後に自宅摂取を開始する、またはごく少量から自宅で漸増する“梯子”法などが実践されている。加工品に耐性のない段階で“梯子”法を適用するのは、いわゆる経口免疫療法と同義となる。これらの試みが、最終的な耐性獲得を促進することが報告されており、さらに早期から摂取を開始することで発症予防に有効であることが指摘されるようになった。

 

R-24-3-13 食物アレルギー閾値の有用性⇒個々の患者のリスク評価に有用Li JC et al. Utility of food allergy thresholds. Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 321-327.

食物アレルギーの治療管理において、誘発閾値を確認することの有用性について論じている。

 

R-24-3-14 食物アレルギー経口免疫療法に伴うトランスクリプトーム変化⇒転写レベルで経口免疫療法のメカニズムを解析するAshley SE et al. Transcriptomic changes associated with oral immunotherapy for food allergy. Pediatr Allergy Immunol 2024; 35: e14106. ★★★

食物アレルギーの経口免疫療法に伴う免疫細胞の変化を、トランスクリプトーム解析を通じて解明する試みについて、最近の進歩を紹介。

 

R-24-3-15 栄養素:T細胞免疫における4番目のシグナル⇒栄養素と免疫の深いつながりRaynor JL et al. Nutrients: Signal 4 in T cell immunity. J Exp Med 2024; 221: e20221839. ★★★

T細胞は獲得免疫の要であるが、その調節には抗原刺激(1番目のシグナル)、共刺激(2番目)、サイトカイン(3番目)という3つのシグナルが関わっている。本総説では、それらに加えて糖、アミノ酸、脂質などの栄養素が4番目のシグナルとして働いていることを解説。疾患管理において、栄養素がT細胞の調節を介していかなる役割を果たしているかについて説明している。

R-24-3-1 食物アレルギーにナノ粒子治療学を構築する⇒新たな治療戦略の開発へRad LM et al. Engineering nanoparticle therapeutics for food allergy. J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 549-59. ★★

食物アレルギーに対する現行の免疫療法は、副反応や脱感作状態が安定しないこと、などの問題点が指摘されている。ナノ粒子を用いることでそれらの課題を解決できる可能性がある。ナノ粒子は抗原を多量体にしたり脂質に包んだり、エマルジョンにしたり、などの工夫で免疫系にステルスのように密かに侵入し、症状を引き起こすことなく免疫系を修飾することが期待される。また投与法の工夫も重要である。本総説ではナノ粒子のデザインや有効性のメカニズム、将来の治療標的などにつき解説。

 

R-24-3-2 人工知能は経口食物負荷試験に代わるものとなり得るか?⇒AIが開く食物アレルギー診断の未来Tang SKY et al. Can artificial intelligence (AI) replace oral food challenge? J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 666-8. ★★★

現行の食物アレルギー診断は、不正確であったり、安全とは言えなかったり、実用的でなかったり、などの問題がある。人口知能(AI)はこれら多くの不十分な情報を統合して各個人に合わせた適切な診断へと導く手段になるかもしれない。さらに、より簡便で正確な診断方法が開発されることで、より一層診断の質が上がることが期待される。

 

R-24-3-3 食物アレルギー免疫療法への新たなアプローチ⇒よりグレードアップした免疫療法へDantzer JA et al. New approaches to food allergy immunotherapy. J Allergy Clin Immunol Pract 2024; 12: 546-52. ★★

食物アレルギーの治療として試みられているアレルゲン免疫療法についての新しい試みとして、投与ルートの変更、バイオ製剤などの付加治療、抗原の修飾、より低年齢からの開始、など様々な工夫について解説。

 

R-24-3-4 食物アレルギー治療におけるバイオ製剤の役割⇒食物アレルギーもバイオの時代へSindher SB et al. The role of biologics in the treatment of food allergy. J Allergy Clin Immunol Pract 2024; 12: 562-8. ★★

食物アレルギーの新しい治療法として注目されるバイオ製剤(オマリズマブ、デュピルマブ、抗アラーミンなど)につき解説。今後は、患者選択基準、個別のバイオマーカー、最適な介入のタイミング、治療期間、などを検討していく必要がある。

 

R-24-3-5 フレックスIT! 研究や臨床における食物アレルギー免疫療法に対する“プラットフォームトライアル”という方法論の導入⇒免疫療法をしなやかMack DP et al. Flex-IT! Applying “platform trials” methodology to immunotherapy for food allergy in research and clinical practice. J Allergy Clin Immunol Pract 2024; 12: 554-61. ★★

食物アレルギーに対する免疫療法は有効であるが、特に経口免疫療法では副反応が生じるリスクが高く、臨床場面では投与量の変更、投与間隔の変更、増量のペース、または中断、など様々な決断を強いられる。このような柔軟さの求められる免疫療法を“弾力的免疫療法(flexible immunotherapy)”と呼ぶが、具体的にどのような変更をすることがもっとも効果的なのかについてのエビデンスは乏しい。本総説では、そのような柔軟性のあるアプローチに対するエビデンスを作るための具体的アプローチであるプラットフォームトライアルを紹介。

 

R-24-3-6 食物アレルギー管理を改善する:喘息をコントロールして食物アレルギーのリスクを下げる⇒喘息合併食物アレルギーのリスクにエビデンスをAnagnostou A et al. Improving food allergy management: Control asthma and decrease food allergy risk. Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 265-66.

喘息合併の食物アレルギー患者では誘発症状が重症化しやすいことが、過去の観察的研究の結果から指摘されている。今後は、より質の高い前方視的研究が必要であり、さらに食物アレルギー児における喘息管理の重要性についても認識すべきである。

 

R-24-3-7 食物アレルギーの梯子:いつ使うのか?⇒梯子を登って食物アレルギーを克服Meyer R et al. Food allergy ladders: When to use them? Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 132: 263-4. ★★

食物アレルギーの“梯子”とは、充分加熱したアレルゲン食品の摂取を少量から開始して、段階的に低加熱食品の十分量摂取へと進んで解除を目指すアプローチである。もともとは、IgE非依存性アレルギーに試みられ、その後牛乳や鶏卵のFPIES、さらにはIgE依存性食物アレルギーにも応用されている。しかしながら、まだ確立したプロトコールはなく、その有用性、安全性に関する充分なエビデンスはない。本総説ではこのアプローチを紹介するとともにその課題についても解説。

 

R-24-3-8 食物アレルギー外来で成長や栄養の障害リスクのある子どもを同定する⇒管理栄養士の出番ですVenter C et al. Identifying children at risk of growth and nutrient deficiencies in the food allergy clinic. J Allergy Clin Immunol Pract 2024; 12: 579-89. ★★★

様々なガイドライン、後方視的研究、集団調査、総説、症例報告などの情報をまとめて、栄養リスクのある食物アレルギー患者の同定、栄養介入の効果、などについて検討。食物アレルギー児は栄養不良や成長障害のリスクが高く、栄養評価や介入によりその改善が期待できる。そのためには、受診毎の成長評価が重要である。また、経験豊富は管理栄養士への紹介が推奨される。

R-24-2-1 IgE依存性食物アレルギーの診断的検査の正確性に関する体系的レビューとメタ分析⇒EAACIの見解Riggioni C et al. Systematic review and meta-analyses on the accuracy of diagnostic tests for IgE-mediated food allergy. Allergy 2024; 79: 324-352.

欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)によるIgE依存性食物アレルギー診断的検査の正確性に関するメタ分析。149文献24489症例が分析対象となり、皮膚プリックテストと祖抗原特異IgEが感度に、コンポーネント特異的IgEBAT検査が特異度において、優れていた。

 

R-24-2-2 慢性炎症状態における栄養:微量栄養素の粘膜ブロックを迂回する⇒炎症時の栄養管理をどうするか?Roth-Walter F et al. Nutrition in chronic inflammatory conditions: Bypassing the mucosal block for micronutrients. Allergy 2024; 79: 353-383.

栄養免疫とは最も古い免疫機構であり、生体は粘膜からの栄養素吸収をブロックして病原体への栄養供給を制限する。これは感染時には有効なメカニズムであるが、非感染性疾患のリスクを増大させる。一方でリンパ系を介した栄養素吸収機構は保たれている。このリンパ系を活用した栄養補給が炎症時の栄養素不足解消の一助となる。本総説では、そのような視点に立ち、リンパ系を活用した栄養補給による炎症性疾患の改善戦略について述べている。

 

R-24-2-3 コクランコーナー:乳児に対して湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入⇒効果については否定的Burman A et al. Cochrane corner: Skin care interventions in infants for preventing eczema and food allergy. Clin Exp Allergy 2024; 54: 7-10. ★★★

2021年までに発表された文献をもとに検討した結果、乳児への柔軟剤(エモリエント)使用は湿疹リスクには影響しない一方で、軽微な局所的皮膚感染症のリスクを高める可能性があること、湿疹予防のための乳児期の他の介入方法についての試みは行なわれていないこと、などを示した。

 

R-24-1-1 喘息と肥満を持つ小児患者の管理⇒まとめて面倒見る必要ありAverill SH et al. Management of the pediatric patient with asthma and obesity. Ann Allergy Asthma Immunol 2024; 133: 30-39. ★★

成人同様小児期の喘息にも肥満が合併することが知られているが、その実態は明らかではない。本総説では、肥満を伴う喘息児にとってライフスタイルの見直し、肥満共存症の管理、栄養学的補助、などが喘息治療にとっても重要であること、さらに成人の知見をもとに肥満や糖尿病管理が喘息にとっても有用であることなどを述べている。今後の研究の方向性についても提言している。

 

R-24-1-2 食事と免疫応答:いかにして今日の一皿が明日の健康につながるか⇒栄養指導も個別化の時代へSiracusa F et al. Diet and immune response: how today’s plate shapes tomorrow’s health. Trend Immunol 2024; 45: 4-10. ★★

毎日の栄養が免疫機能の調整を介して健康や病気の経過に影響を与えていることが明らかになってきた。本総説では、早期からの栄養介入が免疫機能を改善させ、短期間でがん治療に効果的であることを紹介。そのためには栄養介入もタイミングが重要とのこと。いずれは栄養指導も個別化の時代を迎えるかもしれない。

 

R-24-1-3 食物アレルギーのエピゲノミック、およびエピジェネティックな研究⇒遺伝子から食物アレルギーに迫るChun Y et al. Epigenomic and epigenetic investigations of food allergy. Pediatr Allergy Immunol 2024; 34: e14065.

DNAメチル化やマイクロRNAの解析、候補遺伝子の解析など、遺伝子から食物アレルギーの機序に迫る研究を紹介。

 

R-24-1-4 IgE依存性食物アレルギー診断に関するヨーロッパアレルギー臨床免疫学会(EAACI)ガイドライン⇒食物アレルギーガイドラインの欧州版Santos AF et al. EAACI guidelines on the diagnosis of IgE-mediated food allergy. Allergy 2023; 78: 3057-76.

EAACIによるIgE依存性食物アレルギー診断ガイドラインを紹介。

R-23-12-1 常在菌との協力:食物アレルギーと細菌叢⇒細菌を味方につけるArditi Z et al. Commensal collaborations: Food, allergy and the microbiome. J Allergy Clin Immunol 2023; 152; 1417-9. ★★★

臨床研究やマウス実験を通じて、食物アレルギーと腸内細菌叢との関係に注目が集まっているが、細菌叢を操作して食物アレルギーを予防しようという試みは未だに成功していない。今後はさらに観察コホート研究を進めて介入の至適タイミング、最適な菌の組み合わせ、有効な食物アレルギーエンドタイプの同定、などが必要である。さらに皮膚、気道など腸管以外の部位の細菌叢との関連にも注目すべきである。食物アレルギー発症には多くの遺伝的、環境的要因がある中で、細菌叢がどのような役割を果たしているのか、より広い視点で見極めるべきである。

R-23-11-1 就学前の食物アレルギー児に対する治せる治療としての経口免疫療法:現状のエビデンスと考えられる機序⇒OITも早期からBarten LJC et al. Oral immunotherapy as a curative treatment for food-allergic preschool children: Current evidence and potential underlying mechanisms. Pediatr Allergy Immunol 2023; 34: e14043. ★★★

経口免疫療法(OIT)は食物アレルギーに対する治療選択肢として盛んに研究されている。多くの症例では脱感作までは行くが、持続的無反応まで行く症例は少ない。また4歳になるまでの早期OITのほうが持続的無反応に到達しやすいとの報告も見られ、出生後早期のベストのタイミング(early-life window of opportunity)が考えられる。早期OITが有効な理由は不明であるが、免疫的可塑性があるものと思われる。今後の研究の進展が期待される。

 

R-23-11-2 栄養のトレンドと食物アレルギーがぶつかり合うとき⇒新たな食物アレルゲンに注意Groetch M et al. When nutrition trends and food allergies collide. Ann Allergy Asthma Immunol 2023; 131: 542-3.

我々の食生活がより国際的になり、新しい健康志向が生まれ、生産者が持続可能な食物蛋白への需要の高まりに答えようとするに伴い、消費者は新たな食物アレルゲンに向き合うことになる。新たな食品や含有物が新たな食物アレルギーのリスクと成り得ることに対して医療スタッフの注意が必要である。

 

R-23-11-3 消化管における神経免疫反応を通じて食物アレルギーを理解する⇒これからの注目分野Burns GL et al. Understanding food allergy through neuroimmune interactions in the gastrointestinal tract. Ann Allergy Asthma Immunol 2023; 131: 576-84, ★★

食物アレルギーの領域で注目が集まっている消化管の神経細胞と免疫細胞とのクロストークについて解説。

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